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精霊とスケルトン

 悪魔モドキが灰になった後、俺は抱えていた精霊を地面に下ろした。

 精霊は数歩進んだ先にある灰の山をじっと見つめていたが、俺の方に向き直って薄い銀色の双眸で俺を見た。

 そして一言二言聞き慣れない言葉を呟くと、目の前の地面に魔法陣が現れてうっすらと白い光を放ちはじめた。


 「……これに乗れば戻れる」

 「そうか、んじゃ」

 「…………?」


 俺は精霊に右手を差し出す。

 精霊はその手を見て首を傾げる。どうやら俺の行動の意味が解らないらしい。


 「頼まれたって言ってるだろ?お前も来いよ」


 俺の言葉を最初は理解出来なかったようで疑問の視線を出していたが、理解したのか精霊は小さく首を縦ではなく横に振った。


 「……無理。私は行けない」

 「なんでだ?」

 「……私が、殺した、から」


 精霊は震えながらまるで懺悔するかのように小さな声を絞り出した。


 「……私があの時、狂気に呑まれなかったら、みんな殺さずにすんだ。私が父様を殺した。私に、ここを出る資格はない。だから__」

 「だから、どうした?」

 「……え?」


 俺は目の前で後悔の念で震えている精霊の頭をなでてやる。

 この精霊が受けた仕打ちは俺的に言えば『意識を残したまま身体を操られて大切な人を殺してしまい、闇の誘いに唆されて狂ってしまった』ようなものだ。自分で自分を否定する気持ちもあるだろう。

 だが俺はこの精霊の父親らしき人物に頼まれている。「救ってくれ」と。


 「だからここでずっと閉じこもっているのか?ずっと独りで生きていくのか?そんな寂しい生き方を、お前の父親は臨んでいたのか?」

 「……じゃあ、じゃあどうしたらいいの?父様がそんなことを臨んでいないのなんて解ってるわ。でも、父様の臨んだ私の生き方を送るには、私は道を踏み違え過ぎた。きっと父様は私のことを憎んで__」

 「『救ってくれ』」

 「……え?」


 再び精霊が疑問の声を上げた。


 「お前の父親らしき人物からここに来る前に言われた言葉だ。お前の父親は怨んでなんていない。狂気に走ったお前を死んで尚気にかけていたんだ」

 「……う、そ、嘘よ!私が父様を殺してしまったのに」

 「嘘じゃないさ。お前の父親の最後の言葉は『我が子よ、許してくれ』だっただろ?お前の父親はお前が罪の血で汚れることに悲しんだんだ。お前のことを思って死ぬその時まで、いや、死んでからもかな」

 「……父、様……」


 俺は精霊に向かって差し出した右手を少しだけさらに前に出した。


 「お前が罪に苦しむところなんかお前の父親は臨んでいない。お前が笑っていられることを臨んでいるんだと思う」

 「…………」

 「だから、お前もここから出るんだ。閉じこもって闇をずっと見ているよりも、外の光を見る方が良い。一歩でも良い。前に踏み出してみないか?」

 「……良いの、かなぁ?父様を殺した私が笑っても」


 精霊が力無く呟く。触れれば消えてしまいそうな程弱々しい声だ。

 そんな精霊に俺は笑いながら答える。


 「俺に難しいことは言えないが、良いと思うぞ」

 「……そっか……」


 そう言いながら精霊はゆっくりと俺の右手を握った。そして魔法陣の上に二人で乗る。

 魔法陣が起動して俺達の姿が一瞬で消えて元の場所に送還される。後には誰もいなくなった空間だけが残されていた。


 それからしばらく経って、何もない空間に一つの人魂が現れる。

 人魂はもう起動していない魔法陣をじっと見つめていたが、数回瞬くと溶けるように闇の中へと消えた。


 「……ありがとう」


 人魂が微かに洩らした言葉は、一体誰に向けられてかけた言葉なのかは誰にも解らない。

 言葉は小さく響いた後、闇の中に溶けて消えた。

 そして、闇しかなかった空間に光が差し始める。光に照らされた空間が意味することは、この空間の主である精霊が、狂気から振り払われたことを意味していた。


















ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 魔属性武器『黒鋼大鎌壱式』を入手。

 ATK+150、INT+100

 SPD400以上で装備可能。

・古の武器職人ダンテツ最後の作品。精霊の加護は抜けてしまっているがそれでも相当な高さの性能を誇る。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 そんなウィンドウが俺の頭に表示されて、俺は意識を取り戻した。

 俺の左手はしっかりと大鎌を握り、右手には大鎌よりもしっかりと精霊の右手を握っていた。

 精霊はまだ眠っていた。

 ……ん?待てよ。『精霊の加護は抜けてしまっている』って表示されなかったか?

 つまり、なんだ。俺はこの精霊を武器から引っこ抜いてしまったことになるのか?

 ふと後ろを振り返るとカグヤが走りながらこちらに向かっている途中だった。

 考えるのは、後回しで構わないか。今はこの状況をどう説明するのかを考えないといけないな。

 俺は脳をフル回転(クドいが感覚だけ)させながら言い訳を考えることにした。

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