謎の巨獣(1)
「グギャアァァ!」
カグヤの振るった刀がグズリーの首から上を斬り飛ばし、グズリーの一頭が断末魔をあげて倒れる。
俺は突撃してくるグズリーに足払いをして威力を抑えた『閃光』で頭を消し飛ばす。
グズリーは悲鳴をあげることすら赦されずに絶命する。
そして最後の一頭が『閃光』で吹き飛ばされると同時に身体が焼けるように熱くなる感覚(どうやって温度を感じているのか一切不明だ)が俺を襲い、収まった時に俺の頭にステータスが表示される。
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種族 スケルトンソルジャー
・スケルトンが武器を持った姿。スケルトンよりも骨が強固でアンデット種の中ではポピュラーな種族である。
名前 シンゲツ
レベル 1
ATK 435 → 488(+53)
DEF 440 → 500(+60)
INT 433 → 473(+40)
RES 430 → 468(+38)
SPD 435 → 480(+45)
魔属性魔法『硬化』を会得
・使用中DEFが75%上昇。但し使用中は他の行動ができない。
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……ふむ。DEFが良く成長した上にDEFを上昇させる『硬化』を会得できたのは良いな。
身体の見た目は全体的に大きな変化はないが、俺自身から見れば僅かに骨が太くなっていて、感覚的にも強固になっている感じがする。
ちなみに俺が普通に喋れたり出来るのは俺が元人間で転生者であるからだと予想する。
転生者であるが故に骨だけの状態でも人間だった頃の感覚がそのまま残っていたりする。
そんな感じに俺が考えていると辺りに猛烈な殺気が襲いかかった。それと同時に俺の頭の中に浮かび上がる一つの情報。
種族 グズリー・バーサーカー
レベル 42
そして殺気の根源が姿を現す。
それは体調六メートルに届くかという巨大なグズリー。
その身体は乾いた返り血で真っ黒に染まり、開いた口から涎がボタボタと滴り落ちる。
爛々と光る紅い瞳に理性は窺えず、ただ凶悪な殺気を放っている。
何よりもそいつが左腕に持つのは__
「……あれは、ハルバードか?」
そうカグヤが言う武器は確かにハルバードに似ている。
ハルバードとは簡単に言えば槍と斧が融合したような武器だ。
槍に斧の刃がついた武器を想像してもらえば良いだろう。それによってハルバードは通常の槍よりも攻撃力が高い。
だが、目の前のグズリー・バーサーカーが持つ武器は本当にハルバードなのだろうか?
二メートル程の長さで槍のような突刃がついている。しかし斧の刃に中る部分が普通とは違っていた。刀のような片刃の刃が三日月のような形でついていた。
あれはハルバードじゃなくまるで__
「……サイズだな」
そう、あいつが持つのはハルバードではなく恐らくサイズ。死神が使うような大鎌だ。
だが六メートル近くあるグズリー・バーサーカーが持つと二メートル程の長さのサイズは農業用の小鎌に見えてくる。
「……コ、コロ、ス……」
それはグズリー・バーサーカーが初めて発した唸り声以外の声。掠れた歪な声は正しく狂戦士だ。
「……コロス、コロス、コロス、コロス、コロス、コロス、コロス……スベテ、コ・ロ・ス!」
そんな言葉と共にサイズから黒い霧のようなものが流れ、漂い出す。
それを見たカグヤの表情が変化する。
「……あれは、呪いの武器だ」
「呪いの武器?」
「ああ。武器に悪霊や呪精霊などが取り憑いていて、装備した者の力を高める代償に精神を乗っ取ると言われている」
……なる程。つまりあいつは哀れな生贄ということか。
なんらかの事情で手にして精神を乗っ取られたということか。
「オオオォォォオォォオオォォォ!コ・ロ・ス!」
思考に耽っていた俺の意識はそんな奴の雄叫びで中断することを余儀なくされた。
振り落とされるサイズの一撃が地面を抉る。俺とカグヤはその一撃を避け、構える。
「……簡単にはいきそうにないな」
「……そうみたいだな」