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初めての対人戦

 新キャラ登場です。

 俺を見下ろしていたのは女性だった。

 恐らくは二十歳前後の年齢。腰まで届きそうな長い黒髪を後ろで縛ったポニーテールに、瞳の色は燃えるような赤。

 服装は……俺の世界で侍と呼ばれそうな格好だ。着ているのは紅白の一般的な巫女服だし、刀を帯刀している。

 しかし普通に綺麗な人だ。人通りの多いところを歩けば十人中八人は振り返りそうな凛々しい雰囲気と綺麗な顔立ちをしている。

 俺がそんなことを考えていると女性はさっきまで呆れていた表情を変えて引き締まった表情になり、俺を睨みつけてきた。


 「……貴様、魔物だな?」

 「むしろ喋る骨とか魔物以外でいるのかよ」

 「むっ」


 俺の返答に女性は一瞬だけ顔をしかめたが、直ぐにもとに戻って、刀の柄に手をかけた。

 抜刀しないってことは向こうの剣術は居合いか?


 「人間を襲いにでも来たのか?」

 「骨が普通に食事するとでも思ってんのかよ」

 「むむっ」


 喋りながらもお互いの距離は動かずどちらも何もしない。


 「なら最後に問おう。貴様は敵か?」

 「さあ?」

 「そうか。なら__」


 女性がそう言った直後、空気が一瞬だけ揺らいだ気がした。

 そして女性が刀を収めるチンという音が響いた時、俺の首が落ちた。


 「およ?」

 「__『一閃』」


 地面に落ちていく俺の頭の中でメッセージウィンドウのようなものが浮かんできた。


 種族 人間

 職業 侍、Dランク冒険者

 レベル 37


 どうやらそれなりに強いらしい。

 ならこっちも戦うとするか。

 俺はしゃがんで落ちた自分の首を拾って元にあった場所に戻した。

 それを見た女性は驚愕の表情になる。まぁ一種のホラーだしな。首なしで動いたら怖いわ。


 「馬鹿な!?首を斬っても動くだと!?」


 あっ、そっち?

 女性の驚きようから察するに普通は首を斬れば死ぬみたいだが、俺は元から死んでるから首斬っても死なない気がするんだが。

 それにしてもなかなかの腕前だ。首の骨と骨の間で綺麗に斬れてる。これなら直ぐにくっつきそうだ。良かった良かった。


 「……くそっ!ならば『二閃』!」


 再び空気が揺らぎ、刀を収める音が響く。

 今度は腰と右腕が斬られた。

 しかし今度も骨と骨の間を綺麗に斬ってる為上半身だけで動いて右腕をくっつけた後に下半身と合体して元通りだ。


 「……ッ!貴様ッ不死身か!?」


 いや元から死んでるけどね。


 「……お前さっきからなんで骨と骨の間ばっかり斬ってるんだよ?意味ねえぞ」

 「なんだと!私は馬鹿にするか、魔物め!」


 そう言いながら三度構えようとする。

 そろそろこっちから仕掛けるとするか。斜めとか縦に斬られたらくっつきそうにないからな。


 「……ここで一つアドバイスをくれてやる」

 「なんだと?」

 「敵と悠長に喋ってたら、隙だらけだぜ?」


 俺の一言に一瞬反応した隙を俺は逃さず地を蹴って背後へ移動する。骨しかないから滅茶苦茶に速い。


 「__なッ!?くっ、『一せ……ッ!?」

 「おお~。結構良い刀だな。手入れもキチンとされている」


 女性の腰に刀はなく、俺の手に刀はあった。

 背後に移動する時のすれ違ったあの一瞬に刀を奪っておいたのだ。

 彼女も冒険者である以上胴体視力も一般人の比ではないだろうが俺の速さはそれの上を軽くいくようだ。


 「私の刀返せ~!」


 女性が刀を取り戻さんと両手を伸ばしてくる。

 ここで余談だが俺の身体の身長は生前と同じ190センチ以上ある。目の前の女性は170センチ前半といったところだろう。

 つまり、彼女がどんなに腕を伸ばそうが同じように俺も腕を伸ばせば彼女の腕は刀に届かないというわけだ。


 「刀返せ!」


 ぴょんぴょん跳ねながら俺が掲げた刀を取り返そうとするが、そうはさせじと俺もタイミング良く跳ねるので一向に距離は変わらない。


 「体術ぐらい少しは身につけたらどうだ?これじゃあDランク冒険者の名が泣くぞ」

 「う、煩い!とっととそれを返せ!その刀は祖父の形見なんだ!」


 うおぅ……。

 形見か、道理で使い込まれているわけだ。ということはコイツの祖父は相当強かったんだな。


 まっ!先に斬ってきたのは向こうだから刀は返さんがな!


 「フハハハ……!どうしても刀を取り返したくば身長をもっと伸ばすんだな!それか力づくでこい」

 「ならば力づくで取り返してやる!」


 それから数時間。朝が明けるまでこのやりとりは続けられた。

 結局勝負は俺の体力勝ちに終わった。スケルトンだから肉体的な疲労なんて一切ないぜ!

 対する女性は荒く息をつきながらもその目には不屈の闘志が宿っていた。


 そろそろ俺の良心が痛み出したのでキチンと“話し”をして誤解を解いて刀は返しました。

 そんなわけで俺の初めての対人戦。あっさり白星となりました。

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