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決戦(1)

 早速一年後です。キンクリです。

 あれから一年が経った。そう、一年が経ったのである。今日、魔王は全勢力を率いてここ、王都に攻め込んでくるのだ。

 それに対抗するために国は総出をあげて各国からSランク以上の冒険者を集めた。その光景は正に壮観と言える。しかしその殆ど__半数以上は魔界六将には適わないだろう。

 進化の限界に達した俺に修行の効果があるのかどうか解らなかったのだが一応の効果はあったようで強くなったと少しぐらいは感じた。

 カグヤとフィーはかなり強くなった。この一年、一見無茶とも言えるような修行を繰り返した結果だ。恐らくギルヴィア程度なら瞬殺だろう。

 俺はこの一年を振り返りながら一年前に魔王軍が来た方角をじっと見つめている。


 「……いよいよだな」

 「ああ」

 「……前のようには、いかない」

 「その通りだな」


 そして見張りの男が見張り台から大声を上げる。


 「来たぞ!魔王軍だぁぁ!」


 そして手に手に武器を持って構える冒険者達。俺は大鎌、カグヤは刀、フィーは魔法使いだから無刀だが構える。

 ついでに作戦をとる。


 「んじゃ、どう戦う?」

 「決まっている」

 「寄寓だな。俺も決まっていたりする。フィーはどうする?」

 「……当然」

 「「「正面突破」」」


 俺たち三人は端から見れば怪しさ全開の空気でそんな作戦会議を終了する。事実周りの何人かは引いていた。


 「そんじゃまっ、行こうとしますかねぇ!」

 「一年前のリベンジといかせてもらおう!」

 「……『炎嵐(フレイムストーム)』」


 うぉぉ……。フィーのやつ殺る気満々だ。敵と対面する前に魔法ぶち込みやがった。

 ……開戦の狼煙代わりだと思っておけば良いか。兎に角俺達がやることは一つ。全員ぶっ倒すことだけだしな!





























 一方の魔王軍は……。


 「のわーッ!?」

 「むぎゃーッ!!」

 「ぬぐわー!!」


 進行中にも関わらず撃ち込まれた『炎嵐(フレイムストーム)』に巻き込まれていた。


 「……人間どもが。不意打ちだと?ふざけやがって……!ぶっ殺してやらぁ!」


 そう叫びいち早く魔王軍の前線に駆けていったのは地将ヌルクス。ゴーレムキングだというのにその速さは空を飛ぶ魔物と何ら変わりのない速さだ。


 「あーらら。陛下~どうしますか?あのまま一人で突っ込んだら即返り討ちにあいますよ?」

 「関わるな。命令も聞けん奴などにかける情けはない」


 そんな魔王とカザキリの会話も余所にヌルクスは三人の冒険者を発見すると怒りに身を任せてその剛腕を鉄槌のように振り下ろした。

 振り下ろした腕は地面を大きく振動させ、巨大なクレーターを作成する。

 しかしその腕に潰されたはずの哀れな犠牲者は影も形も見当たらない。


 「……な、何ィ!?」

 「先ずは一人か。『一閃』」

 「……『風剣(エアロブレイド)』」


 刀の刃と風の刃がヌルクスの両腕を紙のように斬り飛ばす。そして、残った冒険者が大鎌を振り上げた。


 「……ゴーレムキングでこんなものか。『光斬ライトニングスラッシュ』」


 光輝く刃が一閃すると、ヌルクスの首は徐々にずれていき、首が大きな音を立てて転がった時には既にヌルクスの命は消え失せていた。



 「あ~あ。陛下、ヌルクスは話題のファウストとその仲間に殺られちゃいました」


 その光景を遠くから観察していたカザキリがそんな報告を魔王にする。


 「……炎将、水将、聖将三人掛かりで打ち倒せ」

 「「「御意」」」


 フェニックスの炎将フレニクス、キングセイレーンの水将アークレス、サンライズドラゴンの聖将ティヴァニルが一斉に飛び立つ。

 魔王はそれを冷たい目で見送っていた。


 「陛下は恐ろしいですね~。自分の幹部たる魔界六将を捨て駒扱いですか?」

 「捨て駒ではない。ある種の生贄だ。あの三人がやられれば次はお前だ」

 「恐い恐い。それではこっちも始めときますか」

 「待て!勝手な行動は__ッ!?」


 カザキリを止めようと振り向いた時には魔王の心臓には一本の剣__かつて自分が倒した勇者の剣が深々と突き刺さっていた。魔王は驚愕の目で剣を突き刺した存在__風将カザキリを見ていた。


 「……お……前……最初から……このつもりだったのか……!」

 「私はまだ死ぬわけにはいきませんからね。ここいらで陛下には御退場願いますよ。……ああ、安心してくれて結構ですよ。この戦いにはキチンと私が勝利しますからね♪」


 カザキリは喋りながら空いた片手で懐から一冊の本を取り出した。


 「『魂喰らいの魔導書』。私が求めていた本です。やっと見つけることができたんですよ?陛下にもこの喜びを分けてあげましょう。__『魂喰い(ソウルイート)』」


 カザキリが呪文を唱えると独りでに開かれた魔導書から黒い霧が発生し魔王を包み込んだ。そして、霧が魔導書に戻った時には包まれていた魔王の姿はどこにもいなかった。

 魔導書のページを数ページめくっていたカザキリは来訪者の気配を感じて横を向く。

 そこには三人の冒険者__シンゲツ、カグヤ、フィーが立っていた。三人とも服に若干の汚れがあるが目立った外傷はどこにもない。


 「……魔界六将も使えないわねぇ。大怪我一つ負わせれないなんてね。……まぁ良いわ。過程が困難だからこそ結果はより愉しくなるのだから。先ずはおめでとう。ここまで強くなっているのは予想外だったわよ?」

 「……そりゃどうも。で、お前は何を始めるつもりなんだ?」

 「決まっているじゃない。そもそも私が魔界六将になっていたのは全てこの為。聞きたいかしら?私の目的を」


 カザキリは黒い霧を周りの生物__敵味方関係無く無差別に放ちながら語る。


 「私はね、正義の味方になりたかったの。だからこの醜く歪んだこの世界を__生きとし死せる者総てが悪と言うべきこの世界を__他の誰でもない、この私の手で退治する。それが私の全てよ」

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