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風将カザキリ

 なんとか説教を耐えきった俺はカグヤから「ギルドマスターが呼んでいたぞ」という言葉をついで感覚で話されたので、三人でギルドに向かうと直ぐにギルドマスターの居る部屋に通された。

 今、俺の目の前にはギルドマスターこと元・Sランク冒険者だと紹介した男__モレアスが椅子に厳かに座っている。

 モレアスを一言で説明するのならば『筋肉達磨』と言ったところか。190は越えているであろう長身を分厚い筋肉の鎧で固めたその姿は威圧感満載だ。


 「……今回の魔王軍の王都襲撃の件、感謝してもしたらないぐらいだ。このギルドを代表して礼を言う。ありがとう」


 そう言うとモレアスはゆっくりと俺に頭を下げた。


 「そんなお礼はいいからさ、それよりも教えてくれないか。俺が倒したあのドラゴンマスターは何だったんだ?」

 「魔界六将。聞いたことぐらいはあるだろう?」

 「いや全然」


 俺の返事にモレアスだけでなくカグヤやフィーまで体制を崩した。

 ……仕方ないじゃん。俺、一週間前に誕生したんだから。


 「……ま、まあ良い。魔界六将というのはだな「魔王自らが力を認めた魔王軍トップの実力を持つ六人の魔族のことよ」__!?」


 モレアスの台詞を遮って何もない空間に浮かび上がった魔法陣から現れたのは、翼を持った女性の魔物だった。

 モレアス、カグヤ、フィーの表情が驚愕の色に染まっている。目の前のコイツは一体誰だ?


 「……風将……カザキリ!?」

 「正解。魔界六将がひとり、風将カザキリ。あなたがギルヴィアを倒したファウストかしら?」


 風将カザキリが俺にそう訊ねてくる。コイツからは前回戦ったドラゴンマスターとは比べ物にならない密度の魔力が放出されている。だが他の三人が固まるなかで俺だけはそれに怖じ気づくことなく見据える。多分さっき進化したからだろうな。


 「……私の魔力を当てられても動じない。なかなか__いえ、かなり期待できそうね。で、ギルヴィアを倒したのはあなたで間違いないのかしら?」

 「……ギルヴィアとかいうのは王都に攻め込んできたドラゴンマスターのことか?それなら俺が殺った」

 「……嘘じゃ無さそうね。良いわ、我らが魔王陛下より言伝を預かってきたの」


 そう言うとカザキリは俺達を見回してから濃い柘榴色の石を取り出すと、突然石が発光し、そこから声が響いた。


 『王都の者共よ。我が魔王軍は今から一年後に全勢力を以て王都を再び攻撃する。与えられた一年を精々良いものにするが良い』


 それだけを発すると石は発光するのを止めて辺りには沈黙が訪れた。

 カザキリは沈黙した石を掴み、元の場所に締まった。


 「賢者の石かなんかか?」

 「似て非なる物質よ。というかまったく関係のない疑問ね」

 「失敗したら反省してやり直す。侵略の基本だろ?」

 「そんな余裕綽々な態度で良いのかしら?今ここで厄介になるであろうあなたを私が殺すことも有り得るのよ?」

 「嘘だな」


 カザキリの問いを俺は一刀両断する。カザキリの表情は喜の感情が深まっているように見える。


 「どうかしら。気が変わったりしてもおかしくはないわよ。なにせ私は風だからね?」

 「演技なのがバレバレだ。隠す気もないのに適当なことを言うな」

 「……ふふっ、バレちゃった。なーんてね。それじゃあ一年後にまた遭いましょう?邪将ギルヴィアを倒したファウストクン♪」


 そう言うとカザキリの足下に再び魔法陣が浮かび上がり、俺が動こうとした時には既にカザキリの影も形もなかった。


 「……大変なことになったな」


 モレアスが神妙な顔つきでそう漏らすと、カグヤとフィーも同じように溜息をついた。

 ……どうでも良いがあのドラゴンマスター、魔界六将の一人だったのか。でもカザキリの方が圧倒的に強いな。纏う雰囲気があいつとは段違いだった。


 「一年……か。どうするんだ?シンゲツ」

 「まぁ殺ったのは俺だから協力するぞ。お前等はどうするんだ?」

 「無論戦う」

 「……今度は、負けない」


 力強い言葉だ。

 一年。それだけあればこの身体にも慣れるだろうし、カグヤとフィーの修行にもなるな。

 ……あ、俺は既に進化の限界に達しているからこれ以上強くなれないんじゃ……。だ、大丈夫だよな!な!?



























 場所は変わって魔王城。

 薄暗く僅かな蝋燭の灯りを頼りに禁書庫を漁るひとつの人影があった。本の背表紙を見て数冊か中身を開いて確認しているが漏れる言葉は「……これも違う」だけである。

 やがて蝋燭が溶けきり、灯りが切れたことによって禁書庫を漆黒の闇が再び覆い尽くした。

 ……ここにはあの本はないのか……。

 影がそう思い落胆して禁書庫を出ようとしたが、ふと禁書庫の隅の方の本棚の一角がうっすらと淡い光を発しているのに気がついた。

 影は恐る恐る動いてその本を手に取った。罠が仕掛けられている様子はない。

 本を開き、中を閲覧する。そして影が喜びの声を上げる。


 「……やっと見つけた……!これだ、この本さえあれば……!」


 影が見つけたひとつの禁書。その本の題名は『The Grimoire of Souleater《魂喰らいの魔導書》』と記されていた__

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