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冗談依存症

 職場に、冗談ばかりをよく言う奴がいる。仕事は真面目に普通にこなすけど、皆が集まるような場面になると、必ずいつも冗談を言う訳だ。まぁ、ひょうきんものとか、そういうキャラクター。で、それなりに笑いを取っている。こいつの悪い所は、調子に乗り過ぎる点。皆が笑うと興奮して、更に笑いを取ろうとハッスルするって感じ。酷い時には、誰かから注意を受けたりして。

 もっとも笑いが取れないとその反対に、酷く落ち込み小さくなるのだけど。

 俺はこいつを冗談依存症だと思っている。一種の脳内分泌物質ジャンキー。もちろん、本当は病気でも何でもない。

 人間の脳は、他者の反応を見て、様々な物質を分泌する。その内の一つに、アドレナリンがある。このアドレナリンが分泌される状況は様々にある訳だが、自分の冗談で他人が笑うなんてシチュエーションもその一つ。もちろん、アドレナリンが分泌されれば、本人は気分が良くなる。この快感に味を占めたら、後は常に何か冗談を言う事を考え、それを実践する人間になるって訳。つまりは、ひょうきんものの出来上がり。もちろん、本人が自覚しているかどうかは分からないのだけど。

 だけど、ある日俺は知ったんだ。こいつがプライベートでは、ほとんど親しい友人がいないという事を。皆が呼ばれるような集まりには参加する。でも、二人とか三人とかで出かけるような遊びには付き合わない。いや、付き合わないというよりも、そういう個人的な付き合いがないんだ。それで、そもそも誘われない。

 そう思ってそいつを見てみると見方が変って来た。誰かと一緒にいる時は、いつも緊張をしているように思えた。そして、その緊張感に耐え切れなくなった感じで冗談を言う。

 もしかしたら、

 と、俺は思った。

 こいつは他人を恐れているのかもしれない。そして、その恐怖ゆえに、冗談を言って皆を笑わせて、他人の機嫌取りをする。笑わせれば相手は自分を傷つけないかもしれない。もちろん、そこには快感も含まれてあるだろう。だが、時々、自分が抑えられず暴走に近い感じで冗談を言ってしまうこいつの興奮の根にあるのは、あるいは“恐怖”なのかもしれない。

 冗談を言わなければ、他人は自分を傷つける。だから、必死に冗談を考える…

 その世界は、あるいは、他から見ているよりもよっぽど辛いのかもしれない。

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