《500文字小説》青いバラの条件
掲載日:2011/06/24
「何て言ったの?」
彼はソファの上で満面の笑みを浮かべた。
「エジプトに滞在する事にした。発掘の許可がおりたんだ。奇跡だよ」
「何言ってるの!来年には……って話は!?」
「覚えてるよ。君は、世紀の大発見をした考古学者の妻になるかも」
「バカ言わないで!真夏に雪が降るくらい不可能よ!」
子供っぽい人だとは思っていた。でも、ここまで見境ないとは思わなかった。その日は平行線の口ゲンカになって一日が終わった。
彼は暫く顔を見せなかったし、私も癪なので連絡しなかった。が、ある夜、彼はク-ラ-ボックスを持ってふらっと訪れた。
「真夏の雪は不可能って言ったよね?」
彼はボックスを開けた。思わず目を見張る。中にあったのは小さな雪だるま。
「穂高まで行ってきた。バスで標高2600mまで行けるんだよ。そこにはまだ雪が残っててさ」
私は呆れて言葉が出なかった。
「不可能には条件があるんだよ。それはね、諦めること」
「……」
「ブルーローズって英語で不可能って意味だろ?でも日本の企業が青いバラを作ったんだ。不可能は可能になるんだよ」
思わず吹き出してしまった。涙が出る程笑った後で、私は素直に言う事ができた。
「負けたわ……行ってらっしゃい」
暑いので、怪談話とは違う「涼」の話を書こうと思って書きました。




