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題名の無い本編  作者: 黒企画
序章
5/27

002 少女とオジサン

最初はスパンが短いものが多いです。

 リティール ロムディート区南西部 ラクーン。

 その大都市のハズレにその店はあった。

 バイクストア「デッドウルフ」。

 文字通り(?)バイクを販売することから修理までこなす。大して大きくもなく小さくも無く、特徴もない地味な店だ。その店の店長(といっても一人しかいないのだから当然だが)であるロディマス・コンボイは今日も店前でせっせとバイクをいじくっていた。


ロディ「う~む。少しスプリングが緩いな」


 ロディはスパナを拾い、グリグリとボルトを締める。


ロディ「ようし、完璧だぜ」


 ロディはニヤリと笑い、大してかいてもいない汗を拭う素振りをしてから店内へと入る。

 油まみれになった軍手を脱ぎ捨て、オンボロTVにスイッチを入れる。今時殆ど見かけない、というより存在自体が貴重なブラウン管TVの画面にニュース番組が映し出される。


 『と、いうことです』

 TVから流れるリポーターの声。ロディはその声を聞きながらコーヒーを沸かし始める。

 『次のニュースです。今日午後15時頃、リティール ロムディート地区南部で18歳の男性が何者かに殺害されるという事件がありました。亡くなったのは専門学校に通う宮下博史さんで警察は殺人事件と見て…』


ロディ「ロムディート区南部ぅ?かぁ~、全く物騒だなぁ、すぐそこじゃねぇか」


 ロディはそう言って。先程入れた生温いコーヒーをグイっと飲み干す。


?「物騒なのはアンタの顔じゃないの?オジサン」


 ロディの背後から聞きなれた女の、いやガキの声。


ロディ「なんでぇ、ユフィか」

ユフィ「なんでぇ、はないでしょ!なんでぇは!!」


 ムッとするユフィ。

 ユフィ・キサラギ。3年前にロディと知り合い、それ以来の付き合いである。

 ユフィはロディを<おもろいオッサン>として認識し、

 ロディはユフィを<ケツの青いガキ>として認識している。


ロディ「で、なんか用か?」

ユフィ「ハイ。コレ!」


 ユフィは何かが入った紙袋をロディに突き出す。


ロディ「あ?なんだコリャ?」

ユフィ「ロディがこの間、私に頼んだバイクの部品よ!買ってきてあげたんでしょ!」

ロディ「おお、そうかそうか、ガハハ!スマンスマン、忘れてた。」

ユフィ「まったく…このオッサンは…」


 ゲラゲラと大声で笑うロディに呆れるユフィ。

 だがこんなやり取りはいつものことであった。


ユフィ「もぉ…次は自分で行ってよね。バイク屋なんだから、部品くらい自分でなんとかしなさいよ!」


 そういって右手をズイっとロディに突き出す。


ロディ「あん?なんだよ?」


 ロディはとりあえずその手を握って握手する。


ユフィ「ちっがーう!!お金よ!部品代!私が立て替えてあげたんだから、ちゃんと返してよ」


 握手する手を振り払いながら起こるユフィ。


ロディ「おお!部品代か!ああそうか!ガハハハハハ…ハ……………ない」

ユフィ「・・・・ハァ~~~。ま、そうだろうと思ったけどね。」


 再び呆れるユフィ。


ロディ「…ところでよ、おめぇ」


 今更ながらにロディはユフィの服装がいつもと違うことに気が付く。

 いつものユフィはまるで少年のような格好をしているのだが、今日は女の子らしく、上から可愛らしいキャップ、クリーム色のセーター、少し短めのスカートにタイツ、そしてミドルカットのブーツ、背中には可愛らしいナップザックまで背負っている。


ロディ「そんなカッコしてドコ行くんだ?」

ユフィ「んふっ!よくぞ聞いてくれました!」


 ユフィはニコニコしながら、スカートのポケットから一枚の紙を取り出す。


ユフィ「ジャーン!」


 ロディに取り出した紙を見せ付けるユフィ。


ロディ「あん?なんだこりゃ?映画のチケットか?」


 サングラスをズラして紙に顔を寄せるロディ。


ユフィ「違うわよ、コンサートのチケットよ!」

ロディ「コンサート?」

ユフィ「そう!超々大物ピアニスト!ミルティア・オザクルーナのコンサートチケットよ~ん!」


 ユフィはそういってクルクルと踊りながらチケットにキスする。


ユフィ「このチケットを手に入れるのにどれだけ苦労をしたことか…。自由席なのに…全然とれなくて…ああ嬉しい!」


 スリスリとチケットに頬ずりをするユフィ。


ロディ「ミルティア・オザクルーナねぇ・・・・・・・・・・・・・・・知らん」


 ロディの発言にユフィの時が止まる。


ユフィ「・・・・・・・ハッ!?何!?今、知らんとかって」

ロディ「そんなん知らんわ」


 そういってタバコを取り出し火をつけるロディ。


ユフィ「信じらんない!今をときめく、あのミルティア・オザクルーナを知らないなんて!」

ロディ「悪かったな」

ユフィ「はぁ。こんなオジサンに自慢しに来た私がバカだったわ」

ロディ「自慢しにきたのか、本当は」


 付き合ってられん、とばかりに店内にあるバイクのエンジンを吹かし始めるロディ。


ユフィ「それじゃ、私コンサートに行くから。ロディはサブ・キタジマの歌でも聴いてれば?」


 ユフィはそういうとテクテクと店を出て行くのだった。


ロディ「・・・・・サブ・キタジマねぇ…。・・・・・・・小作が木を切る~~ってか?」


 それはイクゾー・ヨシだ。


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