001 青年の死
リティール ロムディート区の南部に位置するエルティア。
そのエルティアの街の一角で一人の青年が本を読みながら歩いていた。
本の題名は「正義と悪」である。
青年「ふーっ。やっぱり難しいな、この手の本は。それにしても正義と悪か…」
彼の名は宮下博史。
今年で18歳を迎えた専門学生である。
ちなみにその学校とはCGデザイナーを養成する専門学校だ。
博史「さてと、家に帰らないとな」
彼は道をふらふらと散歩しながら本を読むのが趣味だった。
周囲からすれば危なっかしい上に迷惑ではあるのだが、徐々に回りがそれに慣れはじめていって、この周辺で博史の読書歩行は結構有名になっている。そのためか、本を読んでいる彼の進路を空けたりと色々気を使ってくれている。
本人はあまりそれを感じていない、というのはあまりよろしくない部類の認識力ではある。
博史「たまには違う道でも使うかな?」
ふと、いつも通らないルートを使って家に帰ろうと思い立った。
大体はお決まりのルートを通って、お決まりのルートで帰る。というのが常であったが、なんとなくこの日は目の前の薄暗い路地を通りたくなったのだ。
生まれてこの方、この路地だけは必要が無かったので通ったこともなかった、ということを今更ながらに思い出して苦笑した。
博史「まだこの辺で全く知らない道っていうのも面白そうだ」
まさかこの年齢になってもまだ探検心があることに驚きを隠せない。
博史「ちょっとワクワクだね」
思わず声に出して言ってしまった。
その道は暗く、何故かとても静かだったが嫌な感じはない。
そもそもこの辺りの治安はかなり良い方で、運が悪くてもカツアゲ程度だろう。通り魔のような最悪なケースはここ何十年も起こっていない。
そういった経緯もあって、博史は何事も恐れることなく気楽にその路地へと入っていく。
暫くまっすぐ進んでいくと、薄暗い路地の片隅で男が一人、壁を背に腕を組んで立っていた。
その格好は明らかに一般人とは異なり、背も高くスラっとした外見に装飾の激しいコートのようなものを着込み、銀髪で整った顔立ちはどこかの高級ホストの人間のように思わせる。
しかし博史はそれを特に気にせず、歩みを進めていった。
ところが。
?「宮下博史、だな?」
男はごく短く、小さく低い、でもハッキリとわかる声で一言、そういった。
はて?と訝しげに首を傾げた博史だったが、「ハイ」と簡単に答えた。
?「そうか」
男はそういうと黙り込んだ。
博史は何故、この男は自分の名前を知っているのか?と不思議に思ったが、暫く待っていても何の反応もなく、男の方も黙り込んだまま下を向いているので特に用はないのだろう、と思い、再び歩みを進めようとした。
その刹那、
博史「ぶぐるはぁぁっ!!」
何が起きたのか博史には理解出来なかった。
だが彼は理解する必要も判断する必要もなかった、いや、出来なかった。
その一瞬で、彼の瞳からは光が失われ、その命の鼓動は消え去っていたのだった。
?「他愛も無い。殺気も闘気も見抜けず、ただの一撃で死亡、とはな。ふん、所詮はスィールズ・ガーディアンなんてのはただの名前だけか? …いや、まだ目覚めていなかったのかこいつは。 まぁいい、任務は完了だ。」
男はそういうと、静かに歩き出した。
博史はその頃、既に物言わぬ魂の無い肉と化していたのだった。
いきなり主要キャラが死ぬ不具合。