022 シドの怒り
短いクセにお待たせして申し訳ないです。
-アルドナーダ中央区 アルドナーダ高級ホテル30階 ロイヤルスウィート-
ウォンがザンジと取引、もとい虐殺を行っていた頃。
シド「くそっ!くそぉ!!」
ガッシャアアアン!!
シドは美しいガラスのテーブルを蹴り割った。
ガラスの破片がキラキラと舞い散り、豪華な絨毯の上に飛び散っていく。
ミリア「落ち着いて!落ち着いてシド!」
シド「五月蝿いっ!!」
シドは止めるミリアを払い倒す。
既にシドが暴れ始めて小一時間が過ぎている。能力者であるうえ、シドクラスの能力者が本気で暴れ始めたら小一時間で都市が一つなくなってしまう。そこまで理性が利かないシドではなかったが、その怒りは未だ収まらず、常人の暴れる範囲でモノに当り散らすことを続けていた。
シド「このオレが…仕事をミスって…このオレがっ!!」
ドン!と大理石の柱を叩く。
その顔は怒りと後悔の入り混じった表情を浮かべ、ギリギリと耐えるように歯を食いしばっていた。
ミリア「仕方なかったじゃない。あのまま二人の能力者を相手に闘っていたら時間が掛かりすぎて次の仕事に…」
シド「うるさいっ!!!」
ダン!と今度は壁を叩く。
シド「うるさい!うるさい!!うるさいっ!!!」
ダン!ダン!ダン!と立て続けに壁を叩き続ける。
ドォン!!
一際大きな音を立てて、壁を打ち抜く。
感情が高まりすぎたか、能力を使った一撃を放ったため、壁などはあっさりと打ち抜いてしまったのだ。しかし、多少の理性は残っていたことが仇になったか、抑えようとするチカラと発動しようとするチカラ、加えてシド自身の能力である『破壊の波動』が内部で暴発し、腕からは多少の血が噴出していた。
ミリア「あっ!?」
シドのその傷をみて、ミリアの表情が曇る。まるで自分が瀕死の重傷を負ったような悲痛な表情を浮かべているのである。現実、シドの怪我は大したことはない。彼にしてみればかすり傷にもならないような傷であり、出血量にしてみても軽く鼻血が出た程度のものである。気にすることでもなかった。だがミリアは違った。すぐにシドに駆け寄ると、拳や腕から出る血を止めるため、自らの能力である『治癒』を行使する。
能力の発動と同時に、瞬きする瞬間程度の時間でシドの傷は完全に塞がった。
シド「ミリア…何を勝手に行動してんだ!?」
シドはそんなミリアをギロリと睨む。
ミリア「だって…血が…」
悲しい、とても悲しい瞳がシドの目に映った。
ズキン!!
前と同じイタミが頭に走った。
シド「っっ!?…その目はヤメロ!!その目でオレを見るな!!」
シドはミリアを振り払うと近くのソファにドサッと座り込んだ。
ミリア「シド…」
心配そうに歩み寄るミリア。
シド「…一人にしろ…」
ミリア「で…」
シド「一人にしろ!!」
ミリアの言葉を遮り怒鳴るシド。
ミリアは一度何かを言おうと口を開きかけるが、キュッと一度下唇を噛むと部屋を出て行くのだった。
シド(殺してやる…次に会ったときは絶対に殺してやる!!)
シドは口惜しそうにただ正面の空間を睨むのだった。