表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最後に求めるスキルは”ログアウト”です  作者: 汎田有冴


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

7/10

7.たくさん見つけた!

 投げた戦斧を拾ってきたダイラーは駆け足で戻ってきて、そのままナナシ港の男が指した方へ走って行った。

 私も男にここにいるように言い、ダイラーの後を追う。近くまで来ると、ダイラーがちらりと振り向いた。

「なんだ。お前着替えたのか」

「相手は大勢の木人(きじん)だそうだ」

「なるほどな」

 〈木人(きじん)〉というのはファンタジー用語でいうところの〈エント〉だ。根っこを足にして歩き、枝で直接攻撃したり魔法を使ったりしてくる。それに加え、個体によってハチの巣や花をつけているのが厄介だ。巣のハチは木人を守る。花をつけた個体は花粉をばらまき、それを吸った生き物を操る。木人のそばには必ず受粉されて操られている〈屍人(しじん)〉となった兵士やハチがいるのだ。

 プレイヤーも免疫力が低いと自由を奪われ、誰かに攻撃されるまで木人と散歩する羽目になる。攻撃以外で退屈な散歩を終わらせるには強制ログアウト(アプリ強制終了、ゲーム機を投げる、電池・電源を抜くなど媒体と心の荒れ具合により方法は様々だ)しかない。私は魔法防御力と免疫力を上げるため、口や鼻を覆う〈アサシンマスク〉や〈黒蜘蛛のマント〉を装備し、その色に合わせて他の防具も変えていた。

「そっちの花粉対策はいいのかよ。お前みたいなのが操られたら面倒なんだけど」

「もともとリザードマン(この体)は免疫高めだ。早めに倒せば問題ない」

 潮の香りと共に足元から地響きが伝わってくるようになった。それがだんだん強くなってくると、私たちの顔も引き締まってきた。

 森を抜けた。すぐ前からキャメル色のだだっ広い砂浜が広がり、はるか先の地平線近くで白波が立っている。

 地響きのする方を向くと、花粉の煙をもうもうとさせながら木人の群れが動いていた。その規模は森が丸ごと移動していると言ってもいいくらいで、こんな大群は今までオルエンディ―ワールドを旅していて見たことがない。

 隣りのダイラーもウーンと唸っている。いつの間にか大きな翡翠の胸飾りをつけていた。免疫力を上げるアクセサリーだ。

 よくよく目を凝らすと、木人の群れの先を人が走っている。海に逃げようとしている人々を群れは追いかけているのだ。3人……いや、今1人転んで煙に飲まれてしまった。

 ダイラーが叫んだ。

「おおーい! そのまま海へ走れー! ウラァァーー!!」

 ダイラーのスキル〈雄たけび〉は音の弾となって群れに横っ腹にまっすぐ届き、木人の枝葉を乱した。

 群れの動きが鈍り、私たちに気づいたオオクマバチの編隊が──体が力士ほどもある恰幅のいいハチだ──群れの斥候としてこちらに近づいてきた。

 私は反射的に弓を構えた。ハチにはいつもそうしているからだ。ダイラーがフンと鼻をならした。

「お前はここで矢か魔法か撃ってていいんだぜ。木人どもは俺が切り倒してくるからよ」

「なんでだよ。これだけいれば的を取り合わなくてもいいだろうが」

 ああそうか──私はピンときてついニヤリとした。

「そうか。ダイラーは私の援護がほしいんだな」

「はぁ? 誰がそんなこと言った!」

 ダイラーは私に雄たけびの弾を出すのかと思ったくらいの大声を出した。

「こんなの俺一人で十分だ。花粉が怖かったらそこにいろって言ってんの! お前がラリっても困るんだよ!」

 ダイラーは心配してくれているのか。意外と優しいやつなのかもしれない。だが、私としては状態異常の対処は事前にできるので、達人が待っているより戦いやすいのだ。木人とは何度も戦っている。あとは集団に囲まれないことに気をつければいいわけで、むしろワクワクしているくらいだ。

「素直じゃないな。でもそっちも一発撃ったし、私も一発だけくれてやる」

 弦に〈(まど)いの鏑矢〉をつがえて放った。矢はオオクマバチを貫き、甲高くゆがんだ音をひいて群れの中に吸い込まれていった。この鏑矢の音を聞いた敵は混乱し、わずかな時間動きを止める。

「余計なことしやがって。だったらお互い好きにやろうぜ!」

 そう言い残してダイラーは群れに飛び込んでいった。私に近づくときに使った〈突撃の加速〉を連続させ、あっという間に群れの中に入り込み嵐を起こす。

 私も弓を剣に持ち替えて走り出した。どれだけ無双できるのか、すっごく楽しみだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ