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最後に求めるスキルは”ログアウト”です  作者: 汎田有冴


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6.あきれるほどだいたい西へ

 陵墓を出てからというもの私もダイラーもこの森の中をなんとなく進んできたが、森は360度まだまだ広がっている。どこに向かったらいいものか──ガルに聞いても困ったように首を振るだけだ。

「申し訳ありません。これから先、どんな敵、どんなイベントが用意されているのか分からないからアドバイスしようがないんです。雲の下に隠していた大陸の形も、保たれているのか保障できません」

「このまま森の中を探索してもいいが、敵も弱いし退屈だよな」

「同じ森の中を歩くなら、今まで通りミネルの飛んでいった方角へ行こう。手がかりがそれしかない。ガル、西に大陸は続いているのか」

「いえ、しばらく行けば海岸に出ることになっていますが」

ダイラーが腕組みしながら頷いた。

「じゃあ、西だな。海岸がなければないで……って、お前ミネルの飛んだ方に歩いていたのか。だいぶずれてたぞ」

 気配斬りで彷徨っているうちに外れていったようだ。ガルの冷ややかな視線が痛い。

 でもこれからは使わなくて済む。二人組になれば警戒範囲は半分だ。

 私が右、ダイラーが左側に並んで、草を払い枝を乗り越えながら西へ進む。細かいところをリアルに作ってあるのが面倒だ。

 自分の側に敵が現れれば自分が倒していく。敵の出現はランダムで、足が止まるほどしょっちゅうは湧かない。現れればたいてい瞬殺できた。

「レオパルト、何体倒した?」

「ああ、12体くらいかな。ダイラーは10体だったな」

「ふん。一振りで2体やったのを気づかないのか」

 真ん中に出れば早い者勝ち。真ん中じゃなくても、前でも後ろでも横でも、離れていても、気づいたら倒しにいくから先に倒したもの勝ち──である。

「おい、今のは魔法を使っただろう。魔法はなしだ」

「魔法じゃない。聖なる刃を飛ばしただけだ。剣技だよ」

「剣技でも遠距離攻撃はなし。近距離だけだ」

「遠距離スキルないのか。弓は? 斧投げはあるのかよ。走るな!」

「俺のスタイルに合わん。斧投げはりっぱな斧スキルだ!」

「誰がそんなしばりにつきあうんだよ! 払い落とすな聖なる刃を!」

 単調で暇だったのだ。ウラーもあまり出ない、敵の種類も少ない。ダイラーのことを聞きたいとも、自分の過去を話すことにも興味ない。もう方角はどうでもよくなって、目の前の相手より少しでも前にいければいい。

 離れたところの茂みが揺れた。走って向かう。ダイラーも走っているが、私の方が足が速い。走りながら剣を振って聖なる刃を放つ。それが動きを読んで投げられた斧ではじき消された。

「だいじな斧を投げていいのかよ!」

「斧よりだいじなものがある!」

 茂みが目の前にせまった。青い大きな葉と蔓の絡まった塊を私の剣が袈裟切りにした。

 ひゃあーと力ない悲鳴があがって、茂みのあったところに頭を抱えてうずくまった人が震えていた。剣も鎧も付けていない。曲がった角とか羽根とかも生えていない。

 モブだ。ただの完璧なおじさんだ。外見はそうだ。でもなんでこんな所にいる。

 剣を振ったまま固まっている私の横を、ダイラーが走ってきておじさんを掴んで持ち上げた。

「おい! お前は誰だ。どこから来た。ここで何をしている。そして何しにいく!」

「いたたた……や、やめてくれ。た、助けてくれ」

 私はあわてて剣をしまった。

「驚かせて悪かった。旅の者だ。イライラして困っている。どうしてこんなところにいたんだ。この辺りに町とか城とか廃墟とか、森以外のものがあったら教えてくれないか」

「わ、私はナナシ港に住んでいる者です。森に木を伐りにきたんですが……助けてください」

「おお。港があるようだぞ」

 ダイラーがゆっくりと男を下ろした。つい“おじさん”と表現してしまったが、よく見ればそんなに年を取っているキャラではなかった。野外活動用の茶系の布服を着ている小柄な成人男性といったところだ。

 男はまだ青ざめているが、声を震わせながら話し始めた。

「私はみんなと森に木を伐りに来ました。でも、あんまり切り過ぎた。森の神様が怒って、大変なことになってしまって逃げてきたんです。お願いです。どうかみんなを助けてください」

「その“みんな”というのはどこに?」

「ここから西の、森のはずれです」

 そう言って男は私たちが向かっていた方角とは90度ちかくずれた方向を指さした。

 ガルがホッとした顔で出てきた。

「よかったですね。みなさんが目指していたはずの西ですよ。いったいどこへ向かうのかと心配していましたよ」

 ダイラーがスキップしながら斧を拾いに行った。「このままヒマゲーになるのかと思ったぜ」とかなんとか呟いている。

「ところでナナシ港の方」

 男が私を見上げた。作り物のはずだが、怯えながらもこちらの中身を量っている冷静さが伝わってくる。瞳の色がミネルに似ているのは、ミネルの故郷という設定だからだろうか。

「森の神様は何をしてきたんですか」

「襲ってきました。大勢で」

「ほう。敵はどんな敵ですか?」

「木人と木人に憑りつかれた屍人。仲間も屍人にされました」

 話を聞きながら『炎斬り』をセットしなおす。装備もいくつか変更し、効率よく多勢をさばく準備をする。効率よく時間を忘れていく用意ともいうけれど。



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