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最後に求めるスキルは”ログアウト”です  作者: 汎田有冴


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5.たき火を囲んで

 私がミネルのイベントに気づいたのは、ある町の広場で休んでいた時だった。前からふらふらと歩いてきたNPCの男が、隣に現れたミネルに深々と頭を下げたのだ。

 ここはゲームの世界。ミネルなどのパーティーを組んでいる仲間NPCは町では姿が見えなくなる。私は一人でうろつき、モブともいわれる町のキャラクターと会話することになる。設定で常時見えるようにもできるが、ぞろぞろ連れて動くのはうっとおしいしゲーム機にも負荷がかかる。不可視だったNPCが姿を現したということは、それが必要だったということ。始まりの旗が立ったということである。

「ミネルになにかご用ですか」

 ただ驚いているように見えるミネルの代わりに私が男に尋ねると、学者風のローブを着たその男ははっとして私の方にも頭を下げた。

「突然のご無礼ご容赦ください。以前この方にそっくりの女神の石像を見かけたことがありましたのでつい……」

「へえ。その石像はどこにありますか」

「私が見たのは古物商の店の中です。西の方で出た遺物だと話していました」

 男はそう言って立ち去った。

「ミネルは知ってる?」

「いいえ。知りません」

 元の無表情に戻ったミネルは首を振って姿を消した。その町の店を覗いて回ってもそれらしい物はなかった。

 この時は別のイベントにとりかかっていたのでそれ以上追及しなかったが、しばらくして西方のフィールドを探索中にたき火の前で休んでいると、突然ミネルが話しかけてきた。

「レオパルトさん。このあたりに誰にも知られていないダンジョンがあるとしたら興味がおありでしょうか」

「あるよもちろん。どこにあるの?」

「あの山を越えた谷の奥深くに私のお墓があります。実はこの体は仮のもの。私の本当の体はそこに封じられているのです。墓にある宝は全て差し上げます。その代わり体のある玄室まで連れて行ってほしいのです」

 ミネルの案内で私は『ミネルヴァの陵墓』にたどり着いた。ガルはずっと黙っていた。基本的に支援AIは私が呼びかけない限り応えることはない。

  ◇

  ◇

  ◇

「ダイラーもそうやってミネルヴァの陵墓を見つけて、騎士を倒してこのフィールドに来たのか?」

 私が尋ねると、たき火を挟んだ向かいに寝そべっているダイラーは、頭をかきながら少し考えていた。

「そうだと思うぜ。その学者風の男っていうの、俺は覚えていないけど。それと、俺のミネルは、話しかけられたのはたき火の前だけど『あなたはこのあたりにとてつもなく強い敵がいるとしたら興味おありですね。私の体を封じ込め番人となっている騎士がいます。私の墓へ行き玄室にたどり着けば戦えます』ってなセリフだったぞ。そしてその騎士を倒したら、ミネルは勝手に飛んでってさ。出られなくなったから、あちこちぶっ壊していたら、壁の中の道をみつけたんだったな」

「出られなくなった……」

「だって玄室にはミネルの魔法で入っただろ」

 そうだった。すっかり忘れていた。

「ログアウトはできる?」

「へ? ログアウト? あれ? なんだこれ」

「スキルツリーの所にあるんだよ」

「でも使えねえんだな。しょうがない。行くところまでいくか」

 ダイラーはウィンドーを閉じるとまたごろりと転がった。まったく気にならないらしい。

「謎のイベントいいねぇ。オルエンディ―・ワールド7巡目にしてようやくあの騎士に出会えて倒した。俺はそれで満足だ。このままぶちっと切って元の大陸に戻って続けてもいい」

 私が思わずガルの顔を見ると、ガルはすまし顔で

「このゲームやっている人はたいていこんなもんです。あなたのように細かいことにこだわる人の方が少数派です」

 と、のたもうた。

「じゃあ、ダイラーは帰るんだな」

「いんや。せっかく来たんだ。行くとこまで行くって言っただろ。イレギュラーなイベントなら次新しく始めてもできるか分からんし。おいAI」

「ガルって名前もらってます」

「ああそう。飛んでったミネルは元にもどってるのか」

「そこも分かりません」

「そうか。引継ぎで始めたらミネルいるかな。いてもどのくらい連れていたらフラグ立つかわからないんじゃ、もうめんどくさいわ」

「そうだな。ダイラーはミネルとどのくらい一緒にいた?」

「7巡目開始からずっとだな」

「意外だな。支援AIも切ってるベテランなのに。ミネルなんていらないような気がするが」

「ああ。”しばり”だよ」

「しばり?」

「ただやるのも飽きたからよ。一番弱そうなヤツ連れて、そいつが倒されないようにやるっていうしばりプレー。そうそう、お前あの騎士何回目で倒した?」

「……数えきれないほどチャレンジした……」

「そうか」ダイラーはニカッと歯を見せた。「俺、18回目だぜ」

 18回【も】だろうと突っ込みたかったが、やめた。やっかみにしか聞こえない。くそ。今度はストップと言っても止めてやらん。脇腹にもう一回ぶっさしてやるからな。

 ダイラーがゆっくりと立ち上がった。

「さて、そろそろ動こうぜ。まだイベントは続いているっていう案には賛成だ。騎士は強かったが確かに報酬が少なすぎる。クリアしなきゃな」


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