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最後に求めるスキルは”ログアウト”です  作者: 汎田有冴


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4. 嵐の対戦

 リザードマンはゆっくり歩きながらこちらの隙をうかがっている。防具は胸当てと手甲・脛当てぐらいだが、その分二つの戦斧が大きい。斧系武器には詳しくないが、どこかの敵が落とすグレートアックスを巨大化させたものとみた。身軽に装っても大型武器を装備すると動きも鈍くなるものだが、さっきの素早い斬りこみは気配斬りで先に反応していなければくらっていた。見た目に反して素早さの高いキャラなのか、高速で踏み込んでくるスキルを持っているのか。いかにも狂暴な戦士といういで立ちからして最終奥義みたいな技スキルも使うに違いない。

 対して私が装備している武器は『上級騎士のロングソード』という一般的な武器で、両手持ちにしている。もっと大型の剣も持っているが、森の中では使うにはこのくらいがいいかと思っての選択だ。

 店で売っているような武器は唯一無二のお宝武器と違って、スキルを付け替えたり鍛冶屋で鍛錬(カスタマイズ)できるのが魅力だ。私のロングソードも少し長く硬質に、スキルも3つ付けられるよう鍛えてある。

 今その剣に付けているスキルは『気配斬り』『炎斬り(森の動物は火に弱いやつが多いから)』『切り払い(剣パリイの上級技として付けている)』。あの敵と戦うには心もとない小技ばかり。無用の気配斬りを付け替えたい。火系はトカゲ系の敵に効いたっけ。あの重量をずっと払いつづけられるのか。盾を装備しておけばよかった……不安要素や対策が頭をよぎっていくけれど、それをやる間に踏み込まれて終わるのが目に見えている。

 そういえばあのリザードマンには見覚えがある。どこのフィールドの敵だったんだろう。いや、キャラ作成時に用意されている基本パターンの一つじゃないか。ということは、森のボスキャラではなく──

「あいつはプレイヤー(ひと)じゃないのか、ガル」

 対戦できるマルチプレイはオフにしているはずなのに。これも不具合の一つか。

「ええと……解析不能。闇でーす」

「オルエンディワールドの今年の漢字は“闇”だな!」

 リザードマンが動いた。斧を振り回し、飛ぶように間合いを詰めてくる。

 人間なら聞きたいことがたくさんあるのに。終わりたくなければやるしかない。

 よける、よける。切り払う(手がしびれるほど重たい)。よけて後ろに回り込み、炎斬り。

 こちらの攻撃もよけられ、炎がかすってもびくともせず斧を叩きつけてくる。それを間一髪よけて炎斬り。相手にはじかれる。それでも攻撃をかわしながら炎斬りを出し続ける。

 炎が火の粉が木や草に移り、辺りに燃え広がってきた。火柱が上がり煙がたちこめて視界を遮っていく。

 煙に紛れて距離を取ることに成功した。相手は私を見失っている。急いで気配斬りを別のスキルと入れ替え、スキルポイントも補給。

「ちょこまかとうるさいヤツだな」

 あ、リザードマンしゃべった。やっぱり人だ。

 大風が吹き、炎と煙を巻き上げた。視界が開ける。嵐の真ん中でリザードマンが二つの斧を振り回している。そのままの勢いで突っ込んできた。スピードも威力も今までと違う。大技だ。

「これで終わりだ! うるさいヤツ!」

 こちらもスキル発動。10秒間反応速度回避判定爆上がり。横殴りの刃の雨をかいくぐり続ける。相手の懐に入り込み、がら空きの脇腹が目の前に来た時、胴を真っ二つにせんと『切り払う』。『炎斬り』よりも切れ味が上なのだ。

 うおっと声をあげて相手が下がった。

「ちょ、ちょっと待て! タイム! いったん中止!」

 下がって仕切り直しかと思ったら、それを上回る戦闘停止を呼びかけてきた。自分から仕掛けてきたくせに。

「それ! そのスキル!」今度は私を指さしながらズカズカ近づいてきた。「『鳳雛演舞』か! 拳王ロンジェンが落とすヤツ!」

「そ、そうだけど」

「初めて見た! 300回戦っても出ないっていう激レア! すげえ! いったいどういう確率にしてやがんだ運営さんよぉ!」

 何事かと肩から顔を出したガルがリザードマンにわしづかみにされた。

「ううう運を上げてください運を。能力値を分けたりアクセサリーを付けたりして~」

 ガルは前にもそうアドバイスしたが、私も物申したいと思っていた。

「私も運を上げるアイテムジャラジャラつけて行ったけどさぁ、出たのは318回目だったよ。あれはあんまりだ。500近く戦ったっていう人よりはましだけど」

「まじで300やったのか。信じらんねぇ。俺なんて20回ちょっとでやめたのに」

「それは諦めるの早すぎる」

「にしても避けるにはタイミング合わせて回避行動とらないと回避できないんだろ。上げた反応速度に合わせてさ。俺の『双斧断撃嵐』を全てかわしやがった。気配斬りでウロウロしているのを見つけた時はどんなのろまかと思ったけどよ。お前すげえな」

「お褒めにあずかり光栄だ。ちょっと聞きたいことがあるんだけど、どうやってこのフィールドに──」

「俺の名はダイラー。なあ、鳳雛演舞もう一回やってくれよ。今度は別の技出すからよ」

「あ、いや、わけあって死にたくないんだけど」

「行くぜ! よけまくれよぉ」

 話を聞かないリザードマンに、あと三回も対戦に付き合わされた。いくつもの技を無茶苦茶なスピードとパワーで出してくる。やられたらどこまで戻されるかわからんと訴えるのに。目は痛くなる、神経も張り詰めっぱなし。拳王ロンジェンと300回戦った時よりきつかった。まじで。


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