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最後に求めるスキルは”ログアウト”です  作者: 汎田有冴


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3.臆病者の森探索

 普通のプレイでは行けない所に出てしまったのだから、もちろん私は驚いたけれど、私よりもっと驚いていたのがガルだった。瞳は元からビックリマークに近かったが、口が目の後ろまでぐわっと開いてしばらくそのままになっていた。

「た……大陸の形は作ってあったけれど……誰が行けるようにしたの? え? みんなもディレクターさんも知らないの?」

 ガルはゲーム開発に携わったAIだけじゃなく人とも対話しているようだ。

 さて、驚いてばかりではいられない。まだ終わりたくないんだから行先を考えないと。山手は険しい崖ばかりで登るのはきついから、森の中を進んでみようかな。

「行くの!?」

「行くよ。だって他に行けそうなところないじゃないか」

「地図のある所で迷っていた君が、地図のない所行くの」

「そもそも行くべき道から逸れるから迷子になるのであって、逸れる道がないのなら、どこを歩いても迷子じゃないのだ」

「出たよ。特技『屁理屈』」

 ガルは小さい体がしぼむんじゃないかと思うくらい深いため息をついた。

「……みんながね、外側から解析できないんなら、内側から原因探ってみたらって。できるだけサポートするから、誰も知らないところの様子を教えてほしいって……えーん、僕もつきあわないといけないんだぁ。また同じところぐるぐる回って、屁理屈をきかないといけないんだぁ」

「ガルにも特技『愚痴』が実装されているよな」

 森の中は暗く鬱蒼としていたが、その様子も生えている木々もこれまで渡ってきた森と同じだった。

 私はスキル『気配斬り』を発動させた。誰かの気配を感じれば剣が反応して斬りかかるスキルなので、死角から襲われても察知できるから気がつけば死んでいるなんてことを防げる。しかし、歩みは遅くなる。攻撃力は下がる。そして発動させている間ずっとスキルポイントを消費するから、続けるにはスキルポイントの補給や休憩が必要だ。本当は霧や暗闇などもっと視界のきかないところでの使用を想定されたスキルだが、どこで使うのかはプレイヤーの勝手。謎のエリアで不意をつかれて即死は嫌だからね。私はそう、臆病者(ビビリ)なのだ。

 最初の休憩までに狩った敵は大型のイノシシや狼の集団、菌に侵されひねくれた角や羽を生やして彷徨う屍人など。これまでの森に出てくる敵と同じだ。

 大きな木の根元で熊を狩り、そこで休むことにした。リュックからたき火を出して、これの前で休めば回復する。

 ウィンドウを開いてみるが、ログアウトは回復していない。

「怠けてはいないからね」

 マントから出てきたガルから睨まれる。

「ずっと調べていたけれど、誰もこんな所をミネルの本当の故郷と設定したこともないし、『ミネルの帰還』なんてシナリオも作っていないんだ」

「でも、あの騎士はずっと前から話題になっていたよ。あの騎士はどうなんだ」

「最初はマルク城の騎士のデータでニセ動画作ったのかと思ったよ。そしたら本当に出てくるって話になって本格的にやばいって調査したんだけど、“誰が”とか“どうやって”とか、消し方すら分からなくてお手上げ状態。だけど、ネットですごく盛り上がって人気が出てきたから、ちょっとほっといていたんだよね。報告では、騎士はミネルだけじゃなくて他のNPCでも出現するらしいんだけど、こちらから解析しようとすると闇だから。今回の君の協力にみんなとても期待している。君はミネルを一度もパーティーから外さずに今までいたよね。そんな人、世界中で28人だよ」

 ミネルは初心者向けのサポートキャラだ。覚えている魔法は初級レベル。休憩すると手を握って自分が倒した敵のウラーを分けてくれるという特技がある。初期の頃はそれがすごく助かるんだけど、物語が進むと敵が強くなってミネルが倒せる敵がいなくなる。初級魔法も効かなくなってくるので、ウラーも稼げないサポートもできないキャラとはお別れすることになるのだ。

「今更だけど、どうしてずっと連れていたの? 奥さんや元カノとそっくりってわけじゃなさそうだけど」

「勝手にひとのアーカイブを覗くなよ」

 せっかく期待されてテンション上がったところだったのに。言いながらプレイヤー登録時に一度許可したことを思いだしたが、それでも良い気分はしない。

「こんなことがあったからもう一度身辺調査を頼まれたんだ。支援AIの僕がやったことで、僕が要注意って判断しないと会社の人は見ないから安心して」

「安心してって言われても……AIにはわかんないよ」

 休憩終わり。森探索に専念する。

 のろのろ進むことに飽きてきたが『気配斬り』はもうしばらく発動させておくことにした。森の様子は分かったけれど、どうも落ち着かない。各フィールドにはボス的な存在が配置されているのがお約束じゃなかったっけ。

 その予感は的中。大きな気配を察知して振り向き、剣を振ったがはじかれた。

 すかさず相手の攻撃が来る。

 はじかれた手ごたえで相手の武器の重さが分かった。転がってかわし、距離をとる。

 木を盾にしようとしたが、周りの木々は斬撃で倒れている。これは頼りにならない。

 正面から打ちあうしかないのか。

 左右にでかい戦斧を持つリザードマンと。


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