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最後に求めるスキルは”ログアウト”です  作者: 汎田有冴


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12.森神攻略

 ダイラーを驚かせた虫は目標の枝への最短ルートとなる斜め上にいた。一匹じゃなかった。黒く細長い胴体からたくさんの足が出ているヤツが、めくれた木の皮から次々にもぞもぞ這い出てきている。大きさは私の身長の三分の一くらいで、角や針などは持っていないから大して強くはなさそうだが、この見た目だけで嫌がられるタイプ十何匹がこちらへ行進してくるのだから私も背筋がぞくっとしてくる。

 ようやくダイラーのしっぽを放せた手にハンドアクスを握って虫に切りつけると、あっけなく落ちていった。四五匹落とすと虫の体液が手や刃にべたべたついた。

 刃の体液を落とそうとしてハンドアクスを振っていると、残りの虫が火の粉を吐いて、手に付いた体液に火を点けた。

「あちぃ!」

 火が点いたのは一瞬で大したダメージではなかったが、ハンドアクスを落としてしまった。

 すかざず別の剣を取り出し、次の火が点く前に残りの虫を払いおとした。

 この虫の群れは罠なのだ。上ってくるプレイヤーを落とすために、わざと切らせて可燃性の体液を付けるという。虫自体もよく燃えるのだろう。地が植物だからと気軽に火を使うのはよくないということか。

 一本になったハンドアクスとヒリヒリする感覚を帯びた右手と両足を木の皮にねじ込みながら木登り再開。木の表面に注意しながら目標の枝まで移動した。

 後ろから上ってきたダイラーもむすっとした顔で枝に到達した。

「木登りはなかなか骨が折れそうだね」と私が言うと、「ああ」と短い返事をして腕組みをして外を向いた。

「あんな虫が急に出たら誰でも驚くよ」

「ああ」

 ダイラーの眉間の皺が深くなった。本人の中で何か葛藤があるらしい。ダイラーの気持ちが落ち着くまで少し待つか。

 枝の細くなった先には色とりどりの花が咲いて花粉をまき散らしている。木こりの「世界が屍人だらけになってしまいますだー」というセリフを思い出し、花に火矢を放った。これは普通に燃えて消えた。

「ガル?」

「なんですかー?」

「『僕たちが作ったキャラじゃないから知りません~』なんて言われそうだから訊かなかったけど、この大きな木のことで何か知ってることある?」

「うふふふふ。よくぞよくぞ聞いてくれましたー」

 予想に反してニヤニヤしたガーゴイルゲッコーが、背中から出て左腕に這ってきた。

「この敵については知ってることありますよー。僕たちは今大騒ぎしてるんです」

「え? なになにどういうこと?」

「この敵『森神』はですねぇー……」ガルはそこで息を大きく吸い、ためにためてから言葉を続けた。「ボツになった敵なんです!」

「え? ボツ? な、なんで?」

「簡単なことです。容量食い過ぎるからです。大きすぎてうまく動かなかったんです」

「そのボツになった敵が、なんでここにいるんだ?」

「それが分からなくてディレクターさん達はカンカンです。『誰が持ち出したんだー!』って。森神のデザインした人やお手伝いしたAIさんは感動してますけどね。『ぬるぬる動いてるー』って」

「AIも感動するんだ」

「自発的学習機能の発動に加えいつもより高速で解析に勤しんでいましたので、人に例えれば目がウルウルのデザイナーさんと同じ状態として表現しました。『闇』なんですけどね。どこからこれだけのリソース来てるんでしょう」

「細かいことはどうでもいい」腕組みしたダイラーがやっと口を開いた。「こいつの弱点は? HPは? 虫の種類は? まだ登るのか?」

「HPなどの数値は決まってなかったので答えられないのですが、設定上の弱点は一番上です。『木を守る虫を退治しながら登り、頂上で弱点を攻撃する』ことになっています」

 登りながらの虫退治はたいへんだ。私はまたガルに尋ねた。

「ガル、簡単に登れるルートはないのか。隠し洞穴とか。せめて虫の出るところが分かればいいんだけど」

「隠しルートなどはありませんね。敵の出るポジションも定まっていません。そこまで作ってなかったので。さっきの虫もこの森神を組み上げた何者かがアレンジしたのではないでしょうか。虫自体はオルエンディーワールドに出てくるエネミーと同じなので、その弱点も同じだと推察します」

「出てきたか? あんな虫」ダイラーが首をひねる。

 私もすぐには出てこなかったが、記憶をたどってようやく思い出した。かなり初期のころ、まだミネルの手助けが要る頃に通った森に出てきた。周回プレイヤーやイケイケの初心者は走り抜けて会ってないかもしれない。確かに火の粉を吐いていたが、一匹ずつ出現していた。

 本当に始めたばかりだった。ゲーム機にも慣れていなかったから私の動きもマリオネットみたいで、隠れている虫から火の粉を浴びせられるたびに瀕死になった。そこでミネルが魔法〈ライト〉で森を照らすと、隠れていた虫が驚いて出てきたのだ。

 〈ライト〉は光系魔法の一番最初の魔法だ。杖の先から一筋の光を出す。懐中電灯かちょっと強めのポインターといったところだ。

 私もミネルのように魔法使いの杖を装備して〈ライト〉を唱えると、杖の先から出た光が細く長くのびていった。その光の先端でこれから登りそうな森神の幹の表面を撫でてみる。

すると、幹のところどころから慌てた様子の虫が湧いて出た。出てきたところでもう一度光を当てると、光から逃れるように跳ね、ぼろぼろと落ちていった。

「うぎゃ。頭の上に落とすなよ!」

 ダイラーは大騒ぎしているが、これは使えそうだ。登る先に光を当てて、虫をあぶりだして落としていけばいい。


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