【後日談2-8】ごめんね
酷くチグハグなムニエルの行動がおかしい。
関原は、飼い主に叱られた犬のようにしょんぼりとするムニエルを見ると、
「情けなっ!」
と、軽く笑って、ワシワシと彼女の頭を撫でた。
「情けないって、涼君、私、私なりに一生懸命頑張ったつもりなんですよ。そんなに笑わないでくださいよ!」
「でも、ムニエルのやったことってあれじゃん、ナルシストぎみの駄目男みたいな感じじゃん」
「そ、それは、確かに! そうかもですけど~!」
笑いが込み上げてしまって、小刻みに体を震わせる関原の背中を、ムニエルがペチペチと叩く。
「あんまり、嬉しくなかったですか?」
しょんぼりと問いかけてくるムニエルに、関原は一瞬、答えを迷った後、コクリと頷いた。
「俺は、どっちかっていうと側にいて欲しかったから。メシも、告白してくれようって気持ちも嬉しかったけど、それはそれとしてさ。今になって思えば、寂しかったんだと思う。ムニエルが寝てばっかで俺の話を聞いてくれなかったのも、そのくせして、外には出てバイトはきちんとこなすのも。多分、つまらなかったんだ」
言葉にすることすら恥ずかしい、関原の本音。
これを口から出すことで、関原はようやく、最近の自分の感情を知った。
「涼君……」
「随分と素直になりましたね、だろ?」
自分の言葉を先読みする関原に、彼女は目を丸くして驚いていた。
「よく分かりましたね!」
「分かるよ。ムニエルのズレた感想くらい」
クスクスと笑う関原に、ムニエルが少し黙り込む。
「あの、涼君」
「なんだ?」
「その、すみませんでした。寂しくさせて。私、気が付いてなかったんです。涼君の感情に。てっきり、ご飯ができてないのが嫌だったんだろうなって、そんなに怒らなくてもいいのにって、そればっかりで、意地、張っちゃってました」
「ムニエルは鈍感だもんな。いいよ。俺も悪かったんだ。バイトって言っても、働くの大変だろ。俺も高校の時、学校行きながらガッツリ、バイトしててさ、家に帰ってくると動けないなんてザラだったから、疲れるのは分かるんだ。分かってたはずなんだ。それで、ムニエルには家のこと色々してもらってたはずなのにさ、わがまま、言っちまってた。ごめんな」
照れ隠しに関原がポリポリと頬を掻く。
その癖がすっかり移ったムニエルも、はにかみながら頬を掻いていた。




