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孤独対策課  作者: 宙色紅葉(そらいろもみじ) 週1投稿


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【後日談2-7】アホ

「あの、涼君、お返事は?」


 数秒経っても返って来ぬ返事に、ムニエルが不安そうな表情になって関原の顔を覗き込む。


 関原は、ハッとすると、「あ、ああ」と曖昧に返事をして頷いた。


 コクリと縦に振られる首にムニエルがパァッと表情を明るくする。


「良かった! 涼君、好きですよ!」


 嬉しそうに笑みを浮かべたムニエルが、バラの花束を持ったままバフッと関原に抱き着く。


 何となくの習慣で関原がムニエルの頭を撫でると、彼女は嬉しそうに「んふふ~」と笑って、それから、頬を彼の胸にくっつけた。


 ご機嫌なムニエルに対し、関原の方は酷く戸惑った様子だ。


「な、なあ、ムニエル、急にどうしたんだ? ストレスでおかしくなったのか? そんなにバイトと家事の二重生活が苦しかったのか? 悪かったよ。もう、寝てばっかでも怒らねーから、休んでくれ。連日クソ不機嫌だったのに、急に告白してくるとか、ヤベーだろ。情緒めちゃくちゃ過ぎんだろ」


 ドン引きと困惑の入り混じった感情を、そのまま素直に顔に出して、関原が真直ぐムニエルを心配する。

 すると、ムニエルは関原に引っ付いたまま、気まずそうに目線を逸らして苦く口角を引き上げた。


「いや、あの、何と言いますか、急におかしくなったというよりは、元々、こういう予定だったんです」


 どうやらムニエル、天界の勉強で、人間は相手に告白をすると、場合によっては、相手と恋人になれて、ずっと一緒にいられるらしいということを学んだようだ。


 人間になる前の関原とのやり取りやアレコレで、彼が自分に恋愛感情を抱いていることは知っていたが、ムニエル自身は自分の気持ちをキチンと伝えていないことにも気がついていたし、なおさら、ちゃんと告白しなくては! と思っていたらしい。


「それは分かったけど、予定って……普通に、適当な日に告白してくれりゃ、それでよかったのに」


 ホカホカの食事を横目で見る関原の素朴な疑問に、ムニエルが曖昧に笑って頬を掻く。


「いや、あの、どうせだったら、こう、ロマンチックな感じにしようと思ったんです。だから、涼君が好きな料理をいっぱい作って、花束も用意したんです。まあ、ホームパーティみたいになっちゃいましたし、準備のためにお金欲しくて、バイトいっぱい入れちゃったから、その関係で喧嘩する羽目になっちゃいましたし、なんか色々、失敗しちゃったんですが」


 せっかく手に入った札束も、当初の目的通りに関原と自分のために使わなければ意味がない。


 そのために、ギスギスしていた空気の中でも告白を強行突破することに決めたようだが、そうやって愛の言葉を口にしても、怒ったままの関原がのってくれなかったらどうしていたのか。


 空回るムニエルの行動には、疑問点が多い。


 彼女も、そのことを自覚しているのか、なんとも言えない表情で落ち込んでいた。

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