【後日談2-6】ケーキチャンス
「いや、流石の私だって、今回は、ケーキだ! って思いましたよ。でも、そうじゃなくて、どうして急に?」
首を傾げるムニエルを見て、関原が困ったように目線を下げ、頬を掻く。
「ムニエル、甘いものも好きだろ。ケーキ食ったらさ、イライラした気持ちも落ち着くかと思って、ショートケーキとチョコケーキ買ってきた」
「いや、私だって食べるの大好きですし、甘くて濃厚な生クリームも新鮮なイチゴも、ほろ苦くて甘々なチョコレートも大好きですけど、だからって、食べ物に気分を左右されるような食いしん坊じゃないですよ」
ちゃっかり、関原の分のチョコレートケーキまで一口もらう前提で、ムニエルが不機嫌に言葉を出す。
しかし、口をとがらせて関原を軽く睨みつけた後に、ふと気が付いた。
おそらく、関原の用意したソレは仲直りのケーキだ。
あまり可愛くない関原の言葉の裏には、前みたいに美味しいものを食べて楽しく会話をする関係に戻りたいという気持ちが隠されていて、そのきっかけに彼はケーキを選んだ。
『どうしましょう。うっかり、喧嘩を売っちゃいました』
せっかくチャンスが巡って来たのに、それを自分で叩き落すような真似をしているのだから仕方がない。
ムニエルは背中に冷や汗をかきながら、チラッと関原の顔を盗み見た。
だが、意外にも関原は平然としていて、ムニエルと目が合うと、仕方がないなとでも言いたげに笑んだ。
「そんなこと言わないで食おう。俺は甘いものが好きだよ」
軽くムニエルの手を引いて、リビングへ入る。
それから、関原は、テーブルの上に所狭しと並べられたご馳走に、目をまん丸くした。
「うまそう……だけど、こんなに作ってどうしたんだ? 今日って、何か特別なことあったっけ? 記念日とか? でも、そもそも、ムニエルと会ってから、まだ一年経ってないはずだしな」
半年記念日とか? と、首を傾げる関原の隣で、ムニエルがモジモジと身じろぎをしている。
その背には、いつの間に、どこから持って来たのか、大きな花束が隠されていて、少しだけ覗く真っ赤なバラの花びらが、はにかんで揺れていた。
「涼君、私は涼君を愛しています。どうか、私と恋人になってください!」
頭を下げる代わりにバッと勢いよく花束を差し出して、口の端をキュッと結んだ真剣な表情のまま、ジッと関原を見つめる。
急な告白に関原はポカンとして、ただ、ムニエルを見つめていた。




