私がいなくなって、どうでしたか?
「偉かったな、ムニエル」
ポフンと頭を撫でると、ムニエルが「んふふ~」と鼻歌のような喜びを溢した。
だが、少しすると急にハッとした表情になって、ジッと関原の顔を見つめた。
「涼君は、この三ヶ月、どのようにお過ごしだったんですか? 今は涼君の近くにいるおかげで、良い匂いしかしませんが、実は、一歩でも足を踏み込めば台所は生ゴミだらけ、謎の子虫だらけ、お惣菜やカップ麺の空だらけ、なんて大惨事にはなっていませんか? お仕事以外でもお外には出ていますか? 誰かとお喋りはしていますか? 高山さんとは、仲良しになっちゃいましたか?」
矢継ぎ早に不安を口にする、妙に真剣な様子のムニエルに関原は苦笑いを浮かべた。
「なんだよ。たまには、俺のことを見てたんじゃなかったのか? そしたら、俺がどんな生活を送ってたのかくらい、知ってるだろ」
「いえ、それが、時間帯が悪かったのか、私が見る涼君は眠っているか、お仕事をしているばかりで……唯一、確認することのできた食事では、カップ麺を啜っていたみたいでしたし」
「まあ、そりゃあ、たまにはな。たまには、メシ作るのがダルくなる時もあるだろ。でも、まあ、心配してくれてたのな」
「だって、涼君は私の元対象者で、最愛ですから」
照れたムニエルが、ちょっぴり頬を掻きながら言葉を出す。
「そっか、ありがとな」
照れの映ってしまった関原も、少し顔を赤くしながら後頭部を掻いた。
「なあ、ムニエル。ついて来いよ。ムニエルの心配が杞憂だって、お前ほどじゃないかもしんねーけど、俺も、それなりに頑張ってたんだって、見せてやるからさ」
どこかドヤ顔の関原に連れられて、ムニエルは一番に心配を向けていた台所へと向かう。
そこでの光景に、彼女は瞳をまん丸く見開いていた。




