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孤独対策課  作者: 宙色紅葉(そらいろもみじ) 週1投稿


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満身創痍の帰還

 試練の間は、何人が相手であっても、決して容赦はしない。


 それは、物理的、精神的な痛みに耐えきり、完全に人間になれたムニエルに対しても同じことである。


 試練を無事、やり遂げたご褒美として、天界や地上までワープさせてくれたりはしないのだ。


 ムニエルは満身創痍のまま、重たくて仕方ない体を引きずって梯子をよじ登り、暗闇の穴から天界まで自力で帰ってきた。


 地面を鷲掴むムニエルの手を見て、ルーシィがパァッと表情を明るくする。


「あ! あれ! ムニエルじゃないか!? なあ、おい、ローテル!」


 興奮するルーシィがバシバシとローテルの肩を叩く。

 ローテルは嫌そうに顔をしかめた。


「うるさいですよ、ルーシィさん。見れば分かります。どうやら無事、人間になれたようですね。ですが、あの状態で上まで這い上がるのは、大変でしょうね」


「そうだな。おい、呑気にしてないで引っ張り上げるぞ」


「分かっていますよ。やかましいルーシィさんですねぇ」


 ヤレヤレと首を振って、力いっぱいにムニエルを引き上げようとするルーシィに手を貸す。


 二人の天使に助けられて、ようやく、花の上で寝転がることができたムニエルは、

「人間、ムニエル、帰還です~」

 と、たっぷり息を吐きながら、間の抜けた声を出した。


 酷く疲れてはいるが、それでも、確かに呼吸をして柔らかくまぶたを閉じるムニエルに、ルーシィがホッと安堵のため息を吐く。


「良かった。ムニエル、もう、平気なんだな」


「はい。姉さんたちには、ご迷惑とご心配をおかけしました~」


 ムニエルは、ゴロンと寝返りを打って、ルーシィたちに柔らかい笑顔を見せる。

 ルーシィは、ポンとムニエルの頭を手のひらで覆って、優しく撫でた。


「迷惑とか、そういうのは良いんだよ。ムニエルが元気に生きてるのが一番だ」


 ニッと豪快に笑うルーシィの隣で、ローテルも静かに頷く。


「そうですね。あの子は、失敗してしまいましたから。ムニエルちゃんは、ご無事でよかったです」


「何が、人間化を成功させることになるんだろうな。アレックスは回収すら間に合わなかったから、一旦おいておくとしてさ、ムニエルは、何で人になれたんだろうな。壮絶なんだろ? アレ。死んだほうがマシな目に遭わされるってさ、噂じゃん」


「やはり、人になる意思が関係しているのでしょうか。人間に恋をした子とか、対象者の肉親になりたいと本気で思った子たちは、基本的に成功していますから。アレックス君は、人間そのものを大嫌いになっていたようですから、試練の間に放り込んでも、記憶は失ったまま転生したでしょうけれどね」


「まあ、アイツには、それが一番、良かったかもしれないけどな」


 苦笑いを浮かべるルーシィにローテルがコクリと頷いた。

昨日、カクヨムにだけ投稿して、なろうには投稿してませんでした……

すみません

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