見当違いにさされた図星
驚いたムニエルが「キャッ」と悲鳴を上げると、関原が悪戯の成功した子供のようにクスクスと笑った。
「浮かない顔してるから、気になったんだよ。どうせムニエルは、失敗しちゃったな、とか思ったんだろ?」
「え?」
図星を刺されて、ムニエルはドキリと心臓を跳ね上げた。
タラリと背に流れる汗を知らないまま、関原が陽気に口を開く。
「俺がずっと肉と野菜を焼くだけでバーベキューを終わらせて、そんで、あと一時間くらいでお開きになるのに、ここでのんびりムニエルと桜見てるからさ。それでムニエルは、俺に友達とか作らせられないで終わったなって、失敗したなって思ったんだろ。でも、あいにく俺は、今が一番バーベキュー大会で楽しい時間だよ。ムニエルと満開の桜を見た時間がさ。残念だったな、ムニエル。まだ、お前は俺に捕まったまんまだ」
関原が甘えるようにムニエルに後ろからギュッと抱き着いて、それからワシワシと彼女の髪をかきまぜ、乱す。
ムニエルは、「そうですね」とだけ、返事をした。
「まあ、そんなに落ち込むなって。俺、今日だけで随分と肉を焼いただろ。美味しい焼き加減ってのを見つけたんだよ。だから、家に帰ったらフライパンでムニエルに肉を焼いてやるよ。分厚い豚肉とか、牛肉とか何でも焼いてやる。海鮮を混ぜたって良い。そんでさ、家で一緒にミニバーベキューを楽しもう」
「いいですね。そしたら、スーパーに寄ってから帰りましょうか」
「そうだな。俺さ、家でやるバーベキューは、結構楽しみだ。でも、まあ、その前に後片付けをしなくちゃいけないか。散々、食材焼かせてさ、後片付けまでしろなんて、弊社は人使いが荒いよな」
ムニエルと息抜きをして、だいぶ機嫌が上向きになったらしい関原が冗談を言って笑う。
彼女はコクリと頷いて、それから、関原の隣を歩いて会場へと戻って行った。
ちなみに、帰宅後、関原は疲れて布団に横になったままだらけてしまったので、結局、購入した食材はムニエルが焼いた。




