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孤独対策課  作者: 宙色紅葉(そらいろもみじ) 週1投稿


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褒美予定のアメ

 何故、会場にいるだけでもイライラとして止まない関原が、完全自主参加のバーベキュー大会で肉を焼いているのか。


 その説明をするには、数日前にさかのぼる必要がある。


 関原に友人を作らせようと画策していたムニエルは、彼から会社主催のバーベキュー大会の存在を聞き出すと、今度はそれに参加するよう熱心に勧めていたのだ。


 絶対に行かない! と、そっぽを向く関原に対し、天使としての職務を全うしようとしているムニエルは酷く焦っていた。


 そして、その焦りは、関原が頑なになればなるほど強くなっており、ムニエルは毎日のように彼に声をかけて、口論を繰り広げていた。


 激化する争いの末、


「いい加減にしないと、ご飯作ったり、一緒に眠ってあげたり、してあげなくなっちゃいますよ! お喋りだって、しなくなりますからね!」


 なんて、脅しめいたことを言い出すムニエルにも、関原はどこ吹く風で、


「別に、元々メシくらい自分で用意できるし、流石にムニエルがいなくても眠れる。話さないのも平気だ。俺、元々は無口な方だし。バーベキュー行かなくて済むなら、その程度、軽いもんだよ。加えて、もしもムニエルが意地悪したせいで俺が精神に異常をきたしたら、その時は『天使のムニエル』が助けてくれるからな。お前は『天使』の性質上、俺に冷酷な態度を取れない。脅すなら、もう少し効果的な脅しを使えよ」


 と、せせら笑っていた。


 しかも、理不尽に罰を与えられそうになったことに腹が立ったのか、その一件以降、本格的に拗ねてしまい、バーベキュー大会の話題を出せば不貞腐れるようにすらなってしまった。


 困り果てたムニエルのとった手は一つ。


 押してダメなら引いてみろ。


 ムチよりもアメ作戦。


 すなわち、バーベキュー大会に参加しないからといって罰を与えるのではなく、参加をした場合に褒美を与えるというものだった。


 とはいえ、その褒美の内容も、単調なものでは関原はつられてくれない。


 そのため、ムニエルは関原への褒美に、

「たった一度だけ、どんな願いでもかなえてあげること」

 を、選んだ。


 ただし、実現不可能なものと、

「一生自分と一緒にいること」

 という願いだけは、取り除いて。


 ムニエルの付け加えた条件に初めは酷く不服そうな関原だったが、それでも、大抵の願い事は聞いてもらえると知って、彼は割とすぐノリ気になった。


 そのため、関原は今回、大人しくバーベキュー大会に参加したというわけだった。

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