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孤独対策課  作者: 宙色紅葉(そらいろもみじ) 週1投稿


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いじけ虫愛好家

 ムニエルへの行動を反省しているのか。


 あるいは、彼女へ怒りや呆れを募らせ、感情を昂らせて眠れなくなっているのか。


 それとも、全く別のことを考えているのか。


 毛布の塊の中でウゴウゴと蠢く関原の思考を、本人以外が知りえることはないだろう。


『どうしよう……』


 一人で心の葛藤に向き合うこと。


 それは精神的な成長に欠かせない、重要なことだ。


 そのため、天使として役割を果たすムニエルは、関原を放っておくべきである。


 だが、こんもりと盛り上がった布の塊を見る度に疼く心臓が、それを許してくれそうにない。


『ごめんなさい、涼君、神様。お邪魔します』


 心の中で呟いて、布と布の間にそっと自分の体を滑り込ませる。


 そして関原の背中に後ろから抱き着き、ギュッと体を抱き締めると、彼が不満そうな唸り声を上げた。


 驚いて心臓を跳ね上げさせたムニエルが、勢い余って彼から距離をとる。


「急に威嚇しないでください、涼君。びっくりしました」


「お前が無断で抱き着いてくるからだろ。どういうつもりだよ。さっきまであんなに嫌がっておいて」


 相変わらず不機嫌な様子の関原が、ムニエルに背を向けたままでイライラと言葉を出す。


 するとムニエルは一瞬、思考するように黙り込んで、それから、しどろもどろに目線を動かした。


「うっ、あ、いや、その~」


 言語化しきれていない曖昧な声を出して、意志疎通を先送りする。

 関原が嫌そうに舌打ちをした。


「何だよ。ハッキリ言えよ」


「えっと、その、涼君。今、不貞腐れて、いじけてますよね?」


「はぁ!? 誰が! 不貞腐れてねーし、いじけてねーよ。勘違いすんな!」


 案の定、ガルガルと怒った関原がムニエルを睨みつける。


 すると、ムニエルはピュッと布団の中に逃げ込んで、それから、

「でも、本に書いてありますよ?」

 と、関原に彼の本を差し出した。


 実は関原に渡した本にムニエルの話したようなことは載っていない。


 ムニエルの言葉はハッタリであり、嘘だったのだが、中身を読むことができず、かつ、何度も心を言い当てられている関原は彼女の虚実をあっさり信じた。


 不貞腐れていたことを認めると、「悪いかよ」と呟いて、再びムニエルに背を向ける。


「俺がいじけたのは、まあ、そうだとして、それとムニエルがくっついてくるのに何の関連性があるんだよ。まさか、同情か? 寂しそうにしている俺には柔らかな救いが必要だって言いたいのか? 胸糞悪いから、あっちに行ってくれ」


 冷たい声でキッパリと拒絶する。


 あれだけ恥ずかしい思いをして甘えていたのに、関原はムニエルが自分を憐れがっているのかと思うと不愉快で堪らず、彼女の存在を拒んでしまったのだ。


 ムニエルがキュッと関原の肩に腕を回しても、それを彼が邪魔くさそうに振り払ってしまう。


 彼女は寂しそうに眉尻を下げた。


「あの、涼君……」


「何だよ。あっち行ってくれって言っただろ。同情で触られると胃の底がムカムカするんだよ。明日だって朝早いのに、眠れなくなる」


「そうですか。でも、あの、私、別に涼君に同情したわけじゃなくて、ただ……」


「ただ?」


「ただ、あの、怒らないでくださいね。ちょっと言いにくいんですが、その、いじけ虫な涼君、かわいくて、どうしても抱っこしたくなっちゃいました」


 ムニエル自身、自分が少々無茶な話をしていることや、関原に「おちょくっているのか!」と叱られる可能性があることを理解しているのだろう。


 加えて、彼に胸の内を吐露するのも恥ずかしくて、ムニエルの言葉は少しずつ萎み、最後の方は消え入りそうなほど小さくなっていた。


 ムニエルの発言に驚いた関原が、「はぁ!?」と声を荒げる。


 勢い良くムニエルの方を振り向けば、彼女は毛布の中でモジモジと恥ずかしそうに身を縮めていた。

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