良い子、優しい子、綺麗な子
「考えもよらなかったって顔してんのな。まあ、清い天使様に俗物の考えることは分からねーか。おまけに、クソガキ、エロガキにすら甘い天使様だもんな。でもな、天使ムニエル様、残念だけど男は生まれた時から男なんだわ。強制的に硬くなる棒を身体にくくりつけられて誕生したわけだからさ、エロいものとか好ましいものとか、そういうのに発情すんなって方が無理な話なんだよ。だから、良識もなんもねえ本能むき出しのガキの頃の俺だったら、絶対にお前を穢してた。それも、お前の好む無垢な赤ん坊のふりをして、都合よく、汚くな。なあ、ムニエル、俺が言うことでもないけど、一つ忠告してやる。成人男性を対象に選ぶのは、いや、男を対象に選ぶのは、これっきりにしろ。理由は、言わなくても分かるだろ」
ムニエルは他の大多数の天使と違い、学び、成長する天使だ。
関原の言葉に何か思うところができたのかもしれない。
彼女は眉尻を下げ、目をほんの少し関原から逸らした。
「でも、私の対象者たちは皆いい子で、男の子も、女の子も、誰も、そんなことしたことなかったですよ。皆かわいくて、見るだけで大切にしたくなるような素敵な子たちでした。涼君のソレは極論だと思いますよ」
「極論な。人間のことなんかロクに知らねーくせに、よく言うよ。偶然、お前の担当する人間がみんな異常に清かっただけだろ。運が良いだけの分際で、ほざくなよ。少なくとも俺は人間で男だ。その俺が、俺も男も皆きたねえって言ってんだ。それが答えに決まってんだろ」
「そんなこと……だいたい、涼君はご自身のことを勘違いしているだけです。本当はすごく良い子で、優しい子で、綺麗な子なんですよ。そうじゃなきゃ、私が対象者に選ぶはずがありません!」
ずっと気弱だったムニエルが、それだけはキッパリと断言した。
真直ぐな瞳を関原に向け、優しく微笑みかける彼女は少しも自分の言葉を疑っていない。
ムニエルは、いつもの心から関原を信じる清らかで美しい天使様に戻っていた。
真っ暗な闇の中で、ふんわりと蝋燭を灯らせるような明るいムニエルの声色に、今度は関原が黙りこくる。
「涼君?」
自分の元から完全に離れ、横にゴロンと寝転がって背を向けてくる関原に、ムニエルが問いかけるような言葉を出した。
「なんか、今日はもういいわ。疲れた。一人で寝る。気色悪く甘えて、ギャアギャア騒いで、迷惑かけて悪かったよ。おやすみ」
戦意喪失したらしい関原が頭から毛布をかぶって不機嫌に言葉を出す。
彼は酷く不貞腐れていた。




