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孤独対策課  作者: 宙色紅葉(そらいろもみじ) 週1投稿


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言いくるめ

「距離、あるんだけど」


 二人の間にある小さな隙間が不満で、関原が不貞腐れたように口を尖らせる。


「だって、抱き着かれるの恥ずかしいって言ってたじゃないですか」


「前はな。今は恥ずかしくない。むしろ、抱き着かれたい。今、ちょっと寂しくてさ。落ち着くんだよ、ムニエルとくっついていると」


「本心ですか?」


「当たり前だろ」


「素直になりましたね」


「まあな」


 どれだけ困らされても、基本、ムニエルにとって大切であるのは対象者の心の安寧と笑顔だ。


 寂しい。


 落ち着くために抱きしめてほしい。


 そう頼まれれば拒否はできない。


 そのため、ムニエルは関原をギュッと抱きしめると、ピタリと体を密着させた。


 柔らかな温かさに包まれた関原が、ホッと安堵のため息を吐いて嬉しそうに目を閉じる。


 そして、モゾモゾと体勢を変えてムニエルの豊かな胸の下に自分の顔面を埋め込んだ。


 みぞおち付近の薄い肌が関原の熱い吐息でくすぐられて、ムニエルがビクッと体を揺らす。


「涼君」


 咎めるように関原の名を呼べば、彼はムニエルの胸元でモゾッと動いて面倒くさそうに彼女を見上げた。


「何だよ」


「これは流石に、ちょっと……」


「前は、可愛いものは無条件に胸に埋め込みたくなるって、俺が嫌がっても無理やり顔面をここに押し込んでたじゃねえか。何でダメになったんだよ」


「涼君が女性を言いくるめて無理やり悪いことする大人になったら困るから、注意を入れているんです。現にそうでしょう。私の胸元に顔を埋めたり、ご飯食べさせたり、お着替え手伝わせたり、色々。まったく、もう!」


「残念ながら、俺はもう大人なんだよ。二十歳こえてんだ。今さら注意されても直んねーよ。そして、これはそういう意味合いの行動じゃない。子どもは基本、母親の胸が好きだろ。俺はあくまでも子供として、癒されてんだ。いいだろ。お前にとって俺は子どもなんだから」


 ポコポコと怒るムニエルに対し、ふんぞり返る関原は咎められるものならば咎めてみろという態度だ。


 もちろん、ふと湧いただけの些細な感情や思考は本に載っていない。


 ムニエルは一瞬だけ本を開こうか迷って、やっぱり止めると小さくため息を吐いた。


『十中八九、黒ですが、決めつけはよくありませんよね』


 ギュッと関原を抱き直して頭を撫でる。

 関原は嬉しそうに目を細めて、それからムニエルの胸の下に顔を埋め直した。

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