謎のモフモコポンチョ
幼少期からの癖で、基本的に風呂はシャワーのみで済ませる関原だが、今回は強制的に沸かされた浴槽の水が惜しかったので、湯に浸かった。
『ただお湯に浸かってるだけなのに、なんで、こんなに気持ちいいんだ? 溜め込んだ体中の汚れがお風呂に移っていくみたいで、なんか、俺まで溶けそうな感じがする』
季節は冬。
夏のように膨大な汗をかかない代わりに体が冷えやすく、少し行動するのにも、筋肉が強張っているせいで必要以上に力がこもってしまう。
ホコホコと温かな湯は、そうやって知らず知らずの内にカチコチになった全身を優しくほぐしていくようだった。
心地良さで細められていた関原の目が、静かに閉ざされて開かなくなる。
関原は眠りそうになりながら長湯をして、それから、いつもよりも丁寧に体や髪を洗って浴室を出た。
『いつの間に用意したんだ?』
再び着る予定だったタバコ酒まみれ、汗、垢まみれの小汚いスウェットが消え、代わりに真新しいパジャマが棚の上に置かれている。
シルク製のパジャマは触り心地がよく、白と灰色のモノクロぎみなチェック柄が愛らしい。
加えて、一緒に用意されたポンチョのような上着とスリッパもモコモコな生地で出来ており、温かくも可愛らしいデザインをしていた。
しかし、そのいずれも関原には購入した覚えがない。
用意された衣類で唯一、明確に見覚えがある物は、トランクスのみだった。
『これ、アイツが用意したんだよな。なんか、妙に女っぽい趣味というか、なんというか。こんなのを俺が着るなんて、罰ゲームみたいなもんだろ。あーあ、ほら、なんとも言えないチグハグ感』
これから寝るまでの時間をパンツ一枚で過ごすわけにもいかないので、関原は用意された衣類を身に着けたのだが、鏡に映る自分に思わず苦笑してしまった。
チェック柄のパジャマはともかく、雪ウサギを思わせるようなモフモコポンチョが、とにかく似合っていない。
しかし、生地の薄いパジャマ一枚では、いかに暖房がかかっている室内でも肌寒さを感じてしまうことは確実なので、関原はポンチョを身につけたまま脱衣所を出た。
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