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孤独対策課  作者: 宙色紅葉(そらいろもみじ) 週1投稿


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叱られ天使

「それでさ、ムニエルは、なんでそんなに落ち込んでたんだ? あたしと違って、対象者の自立社会復帰率は、ほぼ百パーセント! 孤独対策課のエリート天使、子守りのムニエル様がさ、にこにこ子どもの話してるならともかく、辛そうにため息ついてるなんて珍しいじゃん! 確かムニエルさ、今、対象者いるだろ? その子を放っておいて天界にいるってのも、けっこう珍しいし」


 こざっぱり、明るい様子のルーシィが、ハッキリとした言葉を使ってムニエルに問いかける。

 ムニエルは少し迷ったように口をモゴモゴとさせて、それから小さく唇を開いた。


「対象者を、泣かせちゃったんです。すごく、すごく傷つけちゃって、私、駄目だなって。子どもだってすごく複雑で、小さな頭でいろんなことを考えているわけで、ですから、私だってたくさん、色んなことを考えながら向き合わなくちゃいけなくなるんです。ですが、大人は想像以上に入り組んでいて、複雑で、普段通りにはいかないんだなって……」


「そっか。でも、落ち込んだのは分かったけど、対象者から離れちゃ駄目だろ。ムニエルの対象者、どういう状態なのか分からないけど、場合によっては死んじゃうぞ。寂しくて、苦しくてさ。夜中が一番、自殺リスクが高いんだから。よりにもよって、こんな時間に放置しちゃダメだろ」


「ですが、一緒にいてほしくないって泣きながら言われてしまって、これ以上傷つけるくらいなら、一晩くらいはって、思ってしまったんです。万が一のために、涼君には光をくっつけてきましたし。だから、大丈夫かなって」


 モゾモゾと言葉を出すムニエルをルーシィは厳しい瞳で見つめて、それから、「駄目だ」と、ハッキリ首を横に振った。


「そんな状態なら、余計に置いてきちゃ駄目に決まってるだろ。どんなに拒絶されても、ギュって抱っこして寝せるんだよ。ちゃんと、天使の魔法は使ったか?」


「使いました。多分、今もぐっすり寝てると思います」


「そしたら、なおのこと、離れる必要ないだろ。相手は寝てるんだから、ずっと抱っこしててやったら良かったじゃねーか。寝てる間は、確かに意識はないだろうけど、でも、それでもギュってしてやるんだよ。起きた時、少しでも寂しさが緩和しているように。対策課の対象者に選ばれるような大人は、大体が意地っ張りで、強がりで、聞かん坊で、そんで、とんでもない寂しがり屋だぞ。撫でてやったり抱っこしてやったりしても、ガンガン文句を言ってくるくせに、いざ目が覚めた時とか、夜中になった時とか、そういう時に近くにいてやらないと、それはそれでキレて落ち込んだりするんだ。それでさ、最悪、死んじまったりもするんだ。とにかく、離れちゃ駄目だし、ちょっと文句言われたくらいでへこたれちゃ駄目だ」


 ハッキリ、キッパリ、ムニエルを否定して叱るルーシィの言葉は強い。

 しかし、ムニエルはルーシィの言葉に頷いて、少し落ち込みながらも、「ですが……」と口を尖らせた。


「ですが、なんだよ」


「だって、私、涼君と寝る前に約束したんです。今日は寝る時、離れていてあげるって。多分、涼君、眠る前に頷いてたから」


「だから何だよ。その程度の約束、破っていいに決まってんだろ。対象者だって、馬鹿真面目に約束守って抱っこしてもらえないより、ずっと一緒にいてもらえる方が嬉しいよ」


 布を破裂させそうな、豊かを通り越して凶器的な胸をズンと張ってシッカリと主張するルーシィの姿は非常に自信ありげだ。


 ムニエルは目をシパシパと瞬かせて、それから、

「そう、なんでしょうか」

 と、首を傾げた。


 これに対し、ルーシィは自信満々な表情でコクコクと頷いている。


「そうだよ。確かに、あたしは落ちこぼれだけど、唯一、他の天使に褒められるのが対象者の自殺率の低さと寿命なんだ。ムニエルは子供好きだけど、多分、あたしは、面倒くさくて落ち込みやすい、寂しんぼの大人が好きでさ、そんな子ばっかりに向き合ってきた。だから、これは、絶対にそうなんだ。すぐ、戻ってあげな。ムニエルの対象者が夜中、無意識に泣いたり、空っぽの布団で寂しいって思いながら起きたりしなくて済むように」


「分かりました、姉さん。そしたら私、涼君の元へ行ってきますね!」


 次の行動が見えたからだろうか。


 ルーシィの説教を聞くムニエルの態度は素直で、人間界へ飛び立つ姿も明るい。


 しかし、ルーシィは浮かない表情でムニエルの後ろ姿を見送っていた。

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