【後日談3-4】カプッ!
「元々、涼君には触れたかったんです。悪いこともしたかったんですけど、でも、はしたないって、涼君にヤラシイ子だなって思われたらいやだなって、内緒にしてたんです。でも、そしたら、副作用が来てしまって」
関原を布団に入れてやらないまま、酷く恥ずかしそうに言葉を出す。
「どうしようもなくなって、俺にばれないように、コソコソ俺の体を弄ってたのか。でも、それなら、素直にしたいって言ってくれりゃよかったのに。どうすっかな。やるのはいいけど、避妊具持ってねーぞ、俺」
今から買いに行くのは、少し面倒だな。
そんなことを思いながら、ポリポリと頬を掻いていると、ムニエルの手がニュッと布団から伸びて、無言で戸棚を指さした。
中には、今、必要なものが入っていた。
「なんか、良さそうなのかっておいたんです」
取り出して、マジマジと箱を見る関原にムニエルが小さく声をかける。
「気合十分じゃん」
笑われると、「むにゅん」と訳の分からない呻きを上げて、再びウツボのように布団の中に引っ込んで行った。
関原が隣に潜り込むと、変わらず威嚇をしながら彼と距離を取る。
「涼君、ヤラシイの嫌ですか?」
「別に。むしろいいと思うけど、何をそんなに気にしてるんだ? ヤるって言ってんのに逃げてるし」
「だって、流石に恥ずかしいですし、男の子の涼君より、欲が強いみたいだから」
「そんなことはないと思うけど」
「ありますよ。だって涼君、プラトニックですもん」
性欲が大きく爆発したのは今回が初めてだが、それ以前からも、ムニエルは関原に対して、そういう欲があった。
ただ、ムニエルから言い出すのは酷く恥ずかしくて、関原が誘ってくれたらな、と、連夜、彼の動きを観察していた。
しかし、関原はムニエルをキュッと抱き締めるとスヤスヤ眠るばかりで、体に軽く触れてくる気配すらない。
天使だった頃には、関原は自分の体にペタペタと触れていたので、自身に対して何もしてこない彼が意外だったし、多少ガッカリもしていた。
ムニエルは、関原は恋人に対して、あまり触れ合いを望まない人なんだと勘違いしていた。
今は二人揃って布団に潜り込んでいるから、ちょっぴり恥も薄れたムニエルが、胸中に渦巻く寂しさのままに、関原の頭を抱き締め、無防備な胸の中に彼の顔を埋め込む。
柔らかさに包まれた関原が、不満げなムニエルに笑みを溢す。
それから、甘そうな肌にカプッと甘噛みをした。