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【後日談2-10】好き!

 関原に押し付けた口が、ムームーと音になりきらない文句の吐息を吐く。

「何が、そんなに不満なんだよ」

 面倒くさい様子のムニエルを少し笑いながら、関原が彼女の方を振り返って柔い体を抱き締める。

 ムニエルは、そのまま脱力して関原の胡坐をかいた膝の上に流れ込むと、崩れたお姫様抱っこのような姿勢を維持して、仰向けになったまま彼の頬に触れた。

「涼君」

「なんだ?」

「私、天使の頃とは、そうしたいと思う理由とか、感情とか、変わったんですけど、でも、相変わらず涼君のこと世界で一番大事にして、大切にしたいって思うんです。だから、涼君が寂しいのヤなんです。でも、バイト楽しくて、どうしようって」

「それでヘラッてんのか。しょうがねえやつだな」

 関原がワシワシとムニエルの頭を撫でる。

 ムニエルはムチムチと関原の頬を弄って、「ヘラッてないです~」と、抵抗していた。

「もし、何とかしてくれようって思ってんならさ、そしたら、バイトの日数、減らしてくれ。今、ムニエルは週五で大体、四時間から五時間くらい働いてるだろ。だから、それを週二か三くらいにしてくれると助かる。それと、できたら、土曜に仕事に行くのはやめてくれないか? せっかく、二人で丸一日いれる日なんだからさ、それが二日から一日になるのは寂しいよ。辞める必要はないからさ、ムニエルが俺と時間を過ごせる範囲にしてくれたら、嬉しい。バイトの他に家事だって、減らしても構わないから」

 関原にとっての最優先事項は、ムニエルと同じ時間を共有することだ。

 散らかった家には確かに疲弊するが、それでも、今まで粗雑な生活を送って来たから、ある程度の耐性がある。

 食事もカップ麺や出来合いの総菜で構わない。

 ジャンクフードは好きだし、何より、ムニエルが隣で笑ってくれているのなら、その時間を共有できるなら、食べ物なんて何でも良かったから。

 関原が耳まで赤くして、いつもの照れ隠しに頬を掻くと、ムニエルは上機嫌に「んふふ~」と、笑った。

「涼君、ちょっぴり女の子みたいですね~。あ! 嘘! 嘘です! 嘘だからモチらないでくださいよ! 痛いです~!」

 ようやく、つまみにくくなってきたムニエルの脇腹を、ムヂィ……と、つまむ関原が軽く彼女を睨みつける。

 ムニエルは涙目になっていた。

「全く、涼君は利かん坊なんですから! でも、分かりました。バイトの日数、ガクンと減らしちゃいます! 子どもは好きですけれど、やっぱり、最たる大好きは涼君ですからね! ねえ、涼君、人間も、求めてもらえると嬉しくなっちゃうんですね。ちょっぴり女の子な寂しがり涼君、好きですよ」

「だから、その言い草を止めろって。俺は女の子じゃねえ。でも、人間もそうだよ。っていうかさ、多分、人間の方がそうだよ。だから、好きって言われたら嬉しくなるんだろ。ムニエルも、俺も」

「なるほど! んふふ、涼君、好きですよ~。大好きです! 好き~!!」

 寝転がったまま、パタパタを手を動かしてはしゃぐムニエルの頬を照れた関原がムニッとつまむ。

 緩くイチャついて、久しぶりに明るい夜が過ぎていった。

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