暗いアパートの一室にて
毎日投稿目指して頑張ります。最近、忙しさにかまけて小説から遠ざかっていたので、自分を追い込んで小説に近づきます。
都会とも田舎ともつかない、繁華街を模したスナックや居酒屋の通りばかりが騒がしい町の隅。
関原涼関原涼は独り、小さなアパートの一室で缶チューハイを煽っていた。
まだ中身が残っている缶を小さなテーブルの上に叩きつければ、底が斜めに滑って床に転がる。
きついアルコール臭のする人工的な液体がフローリングを濡らして、挙句に関原の足の裏やズボンの裾までビショビショにしていった。
「ああ! クソ!」
反射的に舌打ちをして、乱暴に席を立つ。
それから関原は近くに投げ捨ててあった布を取り、自身や床を拭こうとしたのだが、室内を真っ暗なままで放置して、遮光性の高いカーテンで月明かりすら拒んでいたので、今度は別の缶に腕を引っ掛けてしまった。
喫煙者、関原の部屋には二つほど灰皿が存在するが、そのいずれも吸い殻まみれで煤だらけだ。
灰皿の中身を処理することすら面倒くさがった関原は、よく飲み終わった空き缶の中にタバコを捨てていたのだが、今回、倒してしまった缶は、このタバコ入りの空き缶だった。
しかも、中途半端に中身が残っていたせいで、微少の酒のみならずグジュグジュになった灰と吸い殻までもが盛大に室内へぶちまけられる。
一缶目と同様に、こちらも関原の膝や足元に盛大にかかり、彼は再度、舌打ちをした。
『今日は厄日だ! クソが!』
脳内で暴言を吐きながら改めて席を立ち、大人しくベランダ付近に設置された室内灯のスイッチを押しに行く。
しかし、関原は不意に妙な違和感を覚えるとスイッチを押す手を止め、何となくベランダの方を見た。
真っ黒で分厚いカーテンの向こう側。
重なり合う二つの布の合間でチラチラと揺れるガラス戸の更に奥には、確かに人影が一つ存在していた。
泥棒、強盗、酔った隣人に奇人変人、はたまた幽霊に怪異まで。
人影の正体については様々な予想を立てることができたが、影を見つけた関原の中にあるのは困惑と恐怖ばかりで、真っ白な脳は、ただ震えあがっていた。
冷たくてサラサラしているのに肌に纏わりつくような、古い油のような嫌な汗が背中や頬を伝う。
眼球が白く輪郭を縁取る不気味な影に釘づけになって、キュッと結ばれた口内が渇いていく。
激しくなる心臓のせいで、関原は強い吐き気を覚えていた。
『なんでだよ!』
ガラスが割られて手が差し込まれたわけでもないのに、クレセント錠がカチャカチャと音を立てて、ひとりでに動き始める。
考えるよりも先に動いた手が鍵の取っ手を掴んだ。
そして、関原はそのまま取っ手を押し返して戸を閉め直そうとしたが、力を込めた途端に両方の肩から指先までの全てが動かなくなり、超常現象に対応しきれなくなった。
金縛りにあったかのようにカチカチと体を凍らせる彼では、ただひたすら、勝手に開くドアを見つめることしかできない。
体の内側にすら汗をかいているような酷い違和感に襲われながら、激しく怯えた表情でガラス戸の向こうを睨みつける。
しかし、いくつも浮かぶ恐ろしげな妄想に反して実際に室内に入り込んできたのは、大きな翼を背中から生やした可愛らしい女性だった。
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