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忌み嫌われ皇女が愛を知るまで  作者: 小鳥遊
第二章/ 愛に気付き伝えるまで
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ep29.愛《アイザック視点有り》



 エステルは、とまらない泣き声を必死に抑えて、言った。










「………__好きです、…_大好きです…。愛しています…!だから、___っ私の側から、いなくならないでください…お願い…します……っ…」


「っ!?エステル…!?それは、本当か…?」




 どうしても嘘とは思えないし、そんな嘘をつく人だとも思えないが、それでも疑ってしまう。

 俺はエステルを傷つけてばかりだから。

 嫌われてたと思っていたのに。


 本当は、俺がいなくなるのが嫌なのではなく、皇宮から追い出されるのが怖いのではないだろうか。


 そんなネガティブな思考が、咄嗟に俺の思考を支配する。


「ただ俺がいないと追い出されるからそう言ってるとか、そんなのではないか?もしそうなら、家族みんなエステルことが大好きだから心配しなくて「違います…!」」


 エステルは訴えるような眼差しで俺を見つめた。


 その瞳で、すぐに俺は先言ってしまった発言に後悔を覚えてしまった。

 瞳からポロポロと止まらない涙は今も尚、しとしとと静かに降り注ぐ雨のような、寂しく悲しい様子だ。


 エステルは俺の胸に顔を埋めながら言う。


 その可愛らしい仕草に胸がギュンとなるが、どうにかこうにか、エステルの頭を撫でるだけで我慢出来た。


 なのにエステルは、構わず心臓の鼓動が激しくなるような言葉を、幾つも連続で打ってきた。


「アイザック様が好きなのです…!ずっとお側にいたいのです…、毎日会えることが、私の楽しみだったのです。一緒に話して、訓練して、昼食を取る時間が、とても大好きなのです。アイザック様がいないと、寂しいのです…」


 胸の中で頭を頑張って左右に振っている。


 そんな姿も、愛おしい。

 と同時に、彼女の気持ちを疑ってしまったことを心から申し訳なく思う。


「…はあぁぁぁぁぁぁ…愛おしいな…」


「えっ…?」


(っと…つい言葉が…、まあいいか…)


 エステルが俺の胸の中で埋めていた顔を上げる。


 泣いている目は少し充血していて、まだ目元がうるうるとしていた。


「嬉しいよ、エステル。俺の気持ちがエステルに届いたこと、俺と同じ気持ちになってくれたこと、本当に嬉しい。俺もエステルと共に過ごす時間が1番好きだ。…………エステル、愛している。俺も、お前の側にいたい。エステルが嬉しいことや楽しいことは一緒に喜びたい。悲しいときや辛く苦しいときは俺に分けて欲しい。一緒の時を過ごしたいんだ」


 涙でうるうるとしている瞳は変わらないが、それでもエステルの口角は緩やかに上がる。

 その可愛いらしい小さな口で、エステルは言うのだ。


「愛してます。大好きです…。私が世界で1番大切な御方です」


 エステルは再度顔を埋めて俺に愛を囁いてくる。


(もうここまで来ると一種の攻撃だこれは。

 頼むから、理性を刺激するのはやめてくれ……)


「それ以上はやめてくれ…俺の頭がパンクしてしまうから」


「…?……分かりました」


 何のことか分からなそうな表情をしていたのは、見なかったことにする。

 なんだかんだ素直に聞いてくれるのが可愛らしい。

 ……何故かは分かっていなさそうだが…。


 エステルには言わないが、こんなに愛を伝えてくれるのなら、怪我をして良かったかもしれないなと、そう思ってしまった。


 この小さくてか弱そうに見えて、実は強く、良心など消えていてもおかしくないものを、慈悲の心でいっぱいな彼女が、堪らなく愛おしい。




 こうして、互いに同じ気持ちだということが分かってから、一緒に過ごす時間が多くなった。



 というより、エステルが俺の部屋に見舞いに来てくれる。

 黒竜と遭遇してから1週間は経っているというのに。


 もうすっかり元気なのだが、伝えると来てくれなくなりそうで、名残惜しくて中々言えない。


 代わりに、ずっと言おうと思っていたことを口にした。


「なあ、エステル、婚約を結ばないか?」


「婚約…」


「ああ、無理にとは言わないが、俺とエステルが国民に一緒にいることを認めてもらうには、これしか方法がないんだ…」


「アイザック様、婚約、致します…あの、ですから、放してくださいませんか……?」


「ん?何のことだ?」


 俺は敢えて知らないふりをする。

 放してというのは、俺の膝の上から降りたいということなのだろう。


 何やら知らぬ間にエステルも怪我を負っていたようで、今は2人して療養を命じられている。


 エステルが何故怪我をしていたのかは、絶対後で聞き出す。

 本人でなくとも絶対に。


 エステルも元気なようだが、俺はエステルの方が心配だった。

 だが、エステルが俺の方を見て、そんな心配は無用だと言うかのように可愛らしく照れている。


「分かってますよね…」


「もちろんだ」


「もうっ…」


 不満気ながらも、魔法を使ってでも俺から離れない辺り、心の底から嫌ではないことが分かる。

 

 そういえばいつのまにか、そこかしこで言われていた【冷血王子】という厨二臭い二つ名は消え失せ、一部では【溺愛妻家】と言われているらしい。


 まだ結婚していなければ婚約もこれからで、まだ妻でもないのになと思ったが、これからなる予定なので、まあ問題ないだろうと判断する。


 当分は言わせておくつもりだ。


 俺自身、目の前の愛おしい女性を目の前にして愛妻家にならない自信など微塵もないのだから。


◇◇◇



 あれから少しして、私とアイザック様は正式に婚約を結んだ。


 私が予想していたのは、国民や貴族からの大反発だったのだが、全く異なる結果となった。

 何故かみんな私にとても好意的なのだ。


 理由が全く分からず皇后陛下に聞いてみると、以前渡す約束をしていた新聞を渡された。


 自室に戻って読んでみると、そこには大々的に私のことが大きく載っていた。


 見出しには、

【原因不明の病の治療薬を発明!?原因を突き止め治療薬を作ったのは、魔法帝国の元皇女!!】


【希代属性を応用して、魔塔と合同で生活必需品の魔道具を次々と開発!!国民からも生活がしやすくなったとの声が!】


 そしてつい最近のものには…

【千年に一度だけ現れると言われている黒竜を国民に被害なく帰還させる!?黒竜が来た際に結界を張ったのはまたまたエステル様!もはや女神なのでは?との声も!】


 これらを見て顔が真っ赤になっているところを、エミリーに見られて揶揄われたのは良い思い出だ。






これにて第二章完結です!

ここまで見てくださった皆様、ありがとうございます!

お話は次の章でラストとなります!

まだまだ未熟な部分が多い私ですが、誰かの心に刺さるような作品を残せたらと思っておりますm(_ _)m

どうか最後まで応援して頂けると幸いです!

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