第4話 裏切りの幼馴染達
「おいユートダラダラせずにちゃっちゃっとついて来いよ」
「う、うん……」
ギルドから引き受けたクエストをユート達一行はこなしている最中であった。
だが今回の仕事に対してユートはある違和感が拭えないでいた。
クエストの内容は王都から離れた魔法の森林で発見された『未知のダンジョン』の調査と言うものであった。何でもここ最近になって急に発見されたダンジョンらしくその調査が主な仕事内容だ。ダンジョンと言う場所が唐突に発見される事は決して珍しくはない。特に魔法の森林は多種多様の魔獣やモンスターが住み着く魔境だ。ユート達の様なゴールドランククラスの手練れでなければあの森を調査など危険で不可能だろう。
だがこのクエストに向かってからユートの中の警鐘はずっと鳴りやまない。不安のその理由、それは今回のクエスト最中に見せる幼馴染の不自然な優しさにあった。
今回のクエストはリーダーであるセゴムが取って来た仕事なのだが普段であれば彼は仕事を自分で選んだりしない。そのような雑務は雑用係である自分に押し付け適当な仕事を見繕わせていた。
そして次におかしな点、それは今回に限りクエスト前の荷造りは各自が自分で行っていた事だ。いつもは自分に荷造りを全部任せるくせに……その上に自分の荷物の準備まで既に3人が支度してくれたのだ。
この程度の些細な事で普段より彼等が優しいと言う事実が普通ならおかしいとは思う。だが普段の自分を仲間でなく奴隷同然と扱っている3人の性格を考えると違和感しかない。
そんな事を頭の中で考えていたせいだろう。木の陰から飛び出して来た魔獣に気付かず危うく頭部を噛み付かれそうになった。
「うわっ!?」
「危ないわユート! ファイアーボール!!」
完全に不意を突かれたユートであってがクジィの魔法により難を逃れた。
「あ、ありがとうクジィ」
「気にしなくても良いわよ。同じパーティーの仲間なんだから」
「ッ……う、うん」
もう完全に何かがおかしい。もっと言うならこの3人が何か企んでいるとしか思えなかった。
もうずっと自分を雑用係の奴隷としかみていなかったクジィが今更自分を〝仲間〟だと言うなど異常だ。
もしも今までならヘマをする度に口汚く罵声を浴びせる事が当たり前だったと言うのに……。
他の2人もそうだ。今の自分の不注意に対して咎めもしない。それにこのクエストの最中でまだ普段の罵詈雑言がぶつけられていない。今ならばもう他の人間の目だってないにも関わらず。
この3人本当に僕の知っている幼馴染なのか? もしかして別人が変身魔法でも使って僕をからかっているんじゃないのか?
とは言え3人に対して何故態度が丸いのかと尋ねる勇気はユートには無かった。
確かに違和感は消せないがハッキリ言って普段と比べると今の3人の方が遥かに気が楽だ。
理不尽な罵声、暴力を浴びなくていい。それに……少しは希望だってもてる。もしかしたらまた昔の様な仲の良かったあの頃に戻れる可能性があるのではないかと言う希望が……。
だが彼はすぐに思い知らされる。この3人は自分が想像していた以上にもう矯正不可能なほど歪みに歪んでいる事実を。
道中に襲い来る魔獣を蹴散らしながらユート達はようやくダンジョンが確認できたと言われる場所まで辿り着いた。しかし目的地に辿り着いたはいいが肝心のダンジョンが見当たらないのだ。
「おかしいな……地図ではこの辺りのはずなんだけど……」
セゴムから渡された地図に記された地点に着くがダンジョンらしき場所がどこにも見当たらないのだ。
その時だった、背後に居た3人がゲラゲラと大爆笑したのだ。
「えっと、どうかしたの3人共?」
「ギャハハハハッ!! どうかしたのかだってぇ!? マジでおめでてぇなテメェはよッ!」
次の瞬間だった、セゴムが一気に近づいてくると腹部に強烈なつま先蹴りを叩き込んで来たのだ。
「うごうぅ!?」
その蹴りの威力は普段の八つ当たりの時の比ではなかった。完全に相手を殺す気としか思えない強烈な蹴りに思わず胃の中のモノを全て吐き出してしまう。
その無様な姿を見て更に3人はゲラゲラと嘲り笑う。
「うーわコイツ吐いたわよ。消毒しないとね」
そう言うとクジィは炎の魔法でユートを包み込もうとする。
未だせり上がって来る嘔吐物を堪えながら必死に避けようと横に飛ぶ。だがその先には先回りしたセゴムがおり強烈な蹴りを顔面に叩き込んで来たのだ。
凄まじい威力に下顎が砕け歯もほとんど砕けてしまった。
「が…あ……どう……じで……?」
「本当に鈍いですね。今回のクエストは初めからあなたを〝殺す〟為の罠だったと言う事ですよ」
そう言うとネムはうつ伏せで倒れているユートの頭部を踏みつけた。
「そもそも未知のダンジョンなど発見されていません。今回のクエストはギルド受注のものでなく私達の用意した自作自演の偽の依頼、あなたをこの人気の無い森まで呼び寄せる為のものだったんですよ。全てはあなたの口を封じるためにね」
そう言うとネムは両手に持っている魔杖を大きく頭上に掲げると何の躊躇いも無くユートの頭部へと振り下ろした。
その一撃で頭部が揺さぶられ出血、彼の意識は完全に薄れてしまう。
ぼやける視界の中にはニヤニヤと自分を見ながら止めを刺そうとする3人のクズの嫌な笑みが顔面に浮かんでいた。