第27話 突き付けられた事実に幼馴染は後悔する
ざまぁ回です。ここからどんどん幼馴染達は堕ちて行きます。
「なあセゴム、それにクジィ……だれがテメェ等みたいなクズともう一度パーティーなんて組むと思うんだ? 本気で俺がお前達の元に戻って来ると思っているなんてもしかしてバカなのかなぁ~?」
この期に及んで上から目線で自分を連れ戻そうとする愚かな幼馴染二人に対して最大限相手を逆なでするかのようなセリフと表情で舌を出しながらユートはそう告げる。
一瞬ポカンとする間抜け共だったがすぐに顔を真っ赤に染めて掴みかかって来た。
「テメェざけんじゃねぇぞ! 俺達の親切心を踏みにじるなんざ許されると思ってんのか!? テメェ同じパーティーに居た間どれほど俺達に世話になったと思ってんだ!!」
「そうよこの無能のユーズレスが! 私達のお陰で長い間甘い汁を啜っていたくせに偉そうに拒否するな!!」
よくもまぁコイツ等はこんなズレたセリフを大真面目な顔で吐けるもんだ。
同じパーティーに居た間に世話になった? 甘い汁を啜って来た? どれだけ記憶を遡ってもそんな好待遇を受けた記憶など無い。あるのは良い様に雑用を押し付けられ、ストレス発散の為に理不尽な暴力を振るわれ、そして最後はゴミの様に殺害されそうになった恨みだけしかない。
今にも顔から火が出そうな程に真っ赤になってがなり立てる二人を鼻で笑いながらユートは言葉を続ける。
「お前等が俺を呼び戻したい理由なんて見え見えなんだよ。どうせ俺との決闘以降から自慢のスキルを扱えなくなったから焦ってんだろ? 仲間に戻すなんてただの口実だけでの事、スキルによる恩恵を無事に取り戻したら用済みとしてまた追放するに決まっている。本心で俺を仲間として迎え入れる気なんてサラサラない、だろ?」
あっさりと目論見を看破された二人は一瞬たじろぐ。だがそれよりも今のユートのセリフに激昂した。
「テメェ……やっぱり俺達のスキルが正常に機能しないのはお前が何か細工していたからだったんだな。このクソ野郎がッ!!」
「ふざけんじゃないわよ! 今すぐ私達のスキルを元の状態に戻しなさいよ無能のクズ!!」
今のユートの発言で自分達のスキルが機能しない理由がユートによるものだと完全に理解した二人は元々隠し切れていない本心をあっさりぶちまける。
セゴムもクジィも額に血管を浮かび上がらせながら犬の様にぎゃんぎゃんと吠え噛みついてくる。
そんな二人の激怒している姿を見てもユートは動じない、それどころか愉快そうに嗤ってやる。
「そうかそうか、俺の狙い通りお前達はスキルの恩恵を受けれず苦労しているようだな」
そう言いながらあえてセゴム達の身に起きている異常事態を丁寧に説明してやった。
「生憎だがお前達のスキルが発動しないのは当たり前なんだよ。だって……お前達クズ共のスキルは俺が〝喰っちまった〟んだからな」
「はあ? アンタ一体何を言って……」
「まあそう焦るなって。今から全部説明してやるからよ」
ユートの言葉に理解が出来ないと言う顔をする二人。
そんな間抜け顔を見せる幼馴染達にユートは更に細かな説明を嘲笑と共にしてやった。最初は怪訝そうな顔をしていた二人だがユートの話を聞いていくほどその顔面は真っ青になっていく。そして説明を終えた頃にはもう死人の様な絶望的な表情に変わり果てていた。
「うそ…だろ……。じゃ、じゃあ俺達はお前にスキルを『喰われて』もうスキルそのものを失ったって言うのか?」
「そうなるな」
「そ、そうなるなって……」
二人は我が身に起きている事態の重さに絶句する。
てっきりユートが決闘の中で自分達に何かしらの細工でもしたかと思っていた。だからユートを脅す、それが不可能なら最悪向こうの出す条件を飲めばまたスキルが正常に戻ると思っていた。しかしそもそものスキルが〝奪われていた〟と言うのは想定外だった。
つまり……今の自分達は今まで見下していたユートと同じ〝ユーズレス〟……いや、それ以下の何かと言う事になる。何しろ外れスキルすら持っていないのだから。
絶望から言葉を失う二人に対してユートは他人事の様な口調で慰めの言葉を送る。
「まあスキルが無くても死ぬわけじゃなだろ。冒険者以外にも道はあるだろうからせいぜいひっそりと生きればいいんじゃないかぁ?」
そう言って二人の前から立ち去ろうとするユート。
当然だがこのまま話を終える訳には行かない二人は必死にユートにスキルを返して欲しいと訴える。
「おいユート今までの事は謝る! だから頼む、俺のスキルを返してくれ!」
「私も本当に酷い事をしてしまった事は謝るわ! だから私のスキルを返してちょうだい!!」
そう言いながら悲痛な表情で自分に縋りつく二人。
だがユートはそんな沈痛な二人を見ても心は揺れ動かない。何故ならもうこの二人の本心は完全に知れたのだから。コイツ等には自分に対して行った人道に反した行為に反省など微塵もない。もう矯正など不可能なレベルで性根から腐り落ちているのだ。
それが分かっているからこそユートはここで二人のプライドを更に泥に塗れさせる要求を突き付けてやった。
「そうだな、どうしてもと言うなら今この場で土下座しろよ。それが出来たら考えてやってもいいぞ」
もう今のユートの心には過去の幼馴染達との美しかった友情の記憶など無かった。このクズ二人のスキル同様に元幼馴染との過去はユートの中から〝消失〟してしまっていた。




