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スクラップアンドビルド

作者: 星野紗奈

どうも、星野紗奈です。

映像作品のシナリオのつもりで書いたものを掘り出してきたので、記念に投稿しておきます。


いつもの書き方と全然違うので、普通の短編小説として書き直そうか悩んだのですが、これはこれで過去の挑戦ということにして、そのまま残すことにします。

普段の小説よりも無機質な描写が多いかもしれませんが、細かく書かれていない感情的な側面については、読んでくださる方々の想像力を思う存分発揮していただければ幸いです。


それでは、どうぞ↓

【登場人物】


・飯芽結良(16) 高校一年

・飯芽結衣(39) 結良の母

・リコ

・アリー

・ポピー

・クラスメイト

・通行人

・コンビニ店員

・警察官



【本文】


〇学校・教室


 ホームルーム後のやや騒がしい教室。

 結良、お手洗いから自分の教室へ戻って来る。

 自分の席で帰る支度をしようとしたとき、結良、男子生徒の威勢のある声に怯えたように動きを止める。

 声が離れていき、結良、教科書をしまおうとしてリュックを開く。

 クラスメイト数人、帰り支度を進めている結良の様子を見て笑う。

 結良、中を確認し、黙って何も入れずにそのままリュックを閉じる。

 結良、教科書を手で抱えて教室を出る。



〇外・十字路


 一般的な住宅街の通学路。

 人通りはそこまで多くない。

 結良、空のリュックを背負い、教科書を腕に抱えて歩いている。

 クラスメイト数人、結良のあとをつける。

 クラスメイトのうち一人が後ろから突き飛ばすと、全員で固まってはしゃぎながら、元の方角へ走って逃げて行く。

 結良、転んで教科書を道に落とす。

 角を曲がって自転車が近づいて来る。


通行人「危ねえな、邪魔だ! どけ!」


 と、自転車に乗った通行人、結良を怒鳴りつけて去って行く。

 結良、その場で座り込んだまま動かない。

 結良、しばらくして怯えがおさまると教科書を拾い集める。

 教科書をきれいに重ねて抱えると、結良、家に向かって再び歩き出す。



〇自宅・玄関


 ごく普通のアパートあるいはマンションの一室。

 ドアを開けて家に入りながら、


結良「ただいま」

結衣「おかえりー」


 と、結衣、マグカップを持ったままリビングから顔を出して返事する。


結衣「あれ。教科書どうしたの?」


 結良、リュックを結衣に見られないよう、前を向き背を起こしたまま靴を脱ぐ。


結良「あー、テスト前だから、持って帰りたいの多くてさ。リュックに入りきらなかった」

結衣「えー、そっかあ。結良は相変わらず勉強熱心でえらいねえ」

結良「そんなことないよ」

結衣「あ、前買ってあげたトートバッグは? あれに入れてくればよかったじゃん」

結良「それがさ、家に忘れちゃった」

結衣「あちゃー。うっかりさんだ」

結良「ほんとにね」


 結良、結衣の視線に気を配りながらリビングへと進む。



〇自宅・リビングダイニング


 整頓されているが、生活感はあるリビング。

 結衣、流しにマグカップを置いて、


結衣「あ、結良。ごめんなんだけどさ、夜ごはん自分で食べてくれる? お母さん、急に打ち合わせ入っちゃって。お金は」


 と言いかけると、結良、結衣とやや距離を置いてリビングへ歩きながら、


結良「『いつもみたいに立て替えておいてくれる?』、でしょ? 大丈夫だよ」

結衣「いつもごめんねえ。あの人話長いから何時に終わるか分かんなくて。あ、お母さんの分はいらないから」

結良「わかった」


 結衣、手を振りながら仕事部屋に戻る。

 結良、その場から動かず手を振り返す。

 結衣が部屋の扉を閉めたのを確認すると、結良、自分の部屋へ向かって歩く。



〇自宅・自分の部屋


 ある程度整えられた私室。

 結良、部屋の戸を閉めて座り込み、リュックを背から降ろす。

 結良、リュックのチャックを開け、底に開いた穴を眺める。


結良「うわー、結構大きく切られてるじゃん。どうしようかな。縫っただけじゃ、また破けちゃうかな」


 と独り言を言って、結良、ため息をつく。

 結良、ベッドの下に隠してあったトートバッグを引き寄せる。

 リュックと同様、はさみで切られたような跡を見て、結良、眉をひそめて、


結良「言えるわけないよね、こんなの」


 と言って、またため息をつく。

 結良、床に座り込んだままベッドに顔だけ突っ伏す。

 しばらくして、5時のチャイムが聞こえてくる。

 結良、トートバッグとリュックをまとめてベッドの下に押し込む。

 上着のポケットに財布、携帯、家の鍵を入れ、結良、部屋を出る。



〇自宅・玄関


 薄暗いが見えないほどではない。

 結良、結衣の仕事部屋から聞こえて来る話し声を立ち聞きする。


結衣「はい、はい。スケジュール的にも問題ないです。いけますよ。はい、ありがとうございます。いやー、こちらこそ、いつもお仕事頂いちゃって、なんかすみませんね。って、謝ることじゃないか。ほんと助かってます。え、無理? 無理なんてしてませんって、そんな」


 結良、静かに玄関のドアを開けて外へ出る。



〇外・横断歩道


 暗くなり始めており、街明かりが目立つ道。

 結良、歩道を歩いている。

 横断歩道に来て、結良、信号が変わるのを待つ。

 信号が変わり、結良、横断歩道を渡ろうとする。

 信号を無視して一台の車がクラクションを鳴らしながら通過する。

 結良、驚いて尻餅をつき、呆然とした様子で座り込む。

 やがて立ち上がり、再び歩き出す。



〇コンビニ・店内


 入店音に聞き馴染みのある、チェーン店のコンビニ。

 結良、真直ぐに棚へと向かい、カロリーメイトと天然水を手に取る。

 結良、レジへ行く途中、縄跳びを見つけて立ち止まるが、数秒見つめると目を逸らして歩き出す。

 結良、レジで商品を出す。

 コンビニ店員、結良の方を見ずにバーコードを読み、接客する。


コンビニ店員「326円っす。あ、袋入ります?」


 と言われて、結良、無言で頷き400円をトレーに置く。


コンビニ店員「えっと、329円っす。400円のお預かりで、71円のおつりと、レシートっす」


 結良、受け取ったおつりをそのまま上着のポケットに入れる。

 コンビニ店員、持ち手を立ち上げさせた状態で袋を結良の前に置き、結良、その中にレシートを入れる。


コンビニ店員「あざっしたー」


 と言いながら、コンビニ店員、適当に頭を下げる。

 結良、歩いてコンビニを出ると、ポケットに突っ込んでいた小銭を財布にしまい、歩きながら携帯を取り出す。

 結良、時間を確認すると携帯をポケットにしまい、ため息をついて歩き出す。



〇外・歩道橋


 塗装がはげかけている歩道橋。

 結良、人のいない歩道橋をのぼる。

 車の走行音が結良の足音をかき消す。

 結良、歩道橋の上から交差点を見下ろし動かない。

 数分経って、突然、


警察官「そこの君」


 と言われ、結良が顔を上げる。

 警察官、歩道橋の端から少しずつ距離を詰めようとする。

 結良、それに気づいて、反対側の階段を駆け下りる。


警察官「ちょっと、君!?」


 と叫びながら、結良を追いかける。

 結良、最後の数段を滑り落ちたが、けがはない。

 結良、警察官から逃げ続ける。



〇外・道路


 一般的な住宅街の道路。

 結良、全力で逃げる。


警察官「待ちなさい!」


 と言いながら、警察官、結良を追いかける。

 結良、何度か後ろを確認しながら走り続ける。

 結良、何かにぶつかって倒れ、一瞬意識が遠のき、暗転。



〇ネオン街・裏通り


 ネオンの光が目立つ、廃墟に似た雰囲気を醸し出す通り。

 結良、なんとか意識を保つ。

 つむっていた目を開くと、結良、ぶつかったであろう相手を見て、その格好の奇抜さに目を見開く。


リコ「あら? どうしてスクラップの街に、こんなに可愛らしいお嬢さんが?」


 リコ、派手なドレスをまとった巨体で結良を見下ろしながら、


リコ「またどこかの実験の副作用かしら。やあねえ、もう」


 と呟く。

 結良、状況を掴めずにあたりをきょろきょろと見まわす。


リコ「お嬢さん、大丈夫?」


 と言われるが、結良、パニックで答えられず俯き、震える手を隠すように握りしめる。

 リコ、少し考える仕草をして、


リコ「地べたに座ってるとお洋服が汚れちゃうわ。立てるかしら? ここはあんまり治安が良くないからね。とりあえずうちへいらっしゃい」


 と言うと、結良の手を優しく引き上げ立たせる。



〇オカマバー・店内


 レトロでおしゃれだが、色味が派手なバー。

 リコ、結良をカウンター席に誘導し、隣に座る。

 明るい店内で、リコ、結良の掌を目にして、


リコ「あら、あなた怪我してるじゃない。ちょっと、アリー? いるわよねー?」


 と、店の奥に向かって叫ぶ。


アリー「はあい。どうかしたあ?」

リコ「さっき可愛らしいお嬢さんを拾ったんだけどね、この子怪我してるのよ。だから、オーナーの部屋から絆創膏とってきてちょうだい」

アリー「絆創膏お? わかったあ」


 アリー、救急箱を持って現れる。


アリー「どうぞお」

リコ「ありがと。じゃ、お嬢さん。ちょっと手借りるわね」


 と言って、リコ、結良の手を取る。

 結良、怯えてレジ袋を持っている手に力を込めたが、黙って委ねる。


アリー「リコお、その子、どうしたのお?」


 と、アリー、頬杖をついて結良をまじまじと見つめながら尋ねる。

 リコ、救急箱を開き、結良を掌から目を逸らさず、


リコ「店の裏でぶつかっちゃったのよ」

アリー「裏でえ?」

リコ「そう、裏で。随分びっくりしているみたいだったから、きっとまた巻き込まれたのね」

アリー「そっかあ」


 リコ、結良の擦り傷を消毒し、絆創膏をはり終えると、


リコ「これでよし、と」


 と呟く。

 結良、手当てされた手をもう片方の手で隠すように包む。


リコ「大丈夫?」


 と言われ、結良、思わず顔を上げてリコと目を合わせる。


リコ「あなた、さっきから肩震えてるわよ。もしかして寒い? やだ、私ったら。気が利かなくてごめんなさいね」

結良「えっ、あ、いや。ちっ、違うんです」


 と言いながら、結良、両手を振ってリコの言ったことを否定する。

 結良、目線を足元にそらしながら、


結良「わ、わたし、その、男の人が、苦手で」

リコ「あら。私が男に見えるの?」


 と言って、リコ、結良の顔を覗き込む。

 結良、黙り込んで数秒リコと見つめ合ってから、


結良「オカマだ」


 と、気の抜けた声で言う。

 結良、はっとして、


結良「あっ、いや。っす、すみません。嘘です、ごめんなさい。オ、オカマなんて、そんなこと言っちゃダメですよね」


 と、撤回しようとする。

 リコ、カウンターテーブルに片肘をつき、足を組んで笑う。


リコ「あら、どうして?」

結良「ほっ、ほら、LGBTQとか、多様性とか。色々、言うじゃないですか」


 リコ、眉をひそめて、


リコ「それっていったいいつの話?」

結良「え。い、いつ、って。今の時代の話ですが」

アリー「あなたあ、もしかして、昔の人お?」


 と、アリー、指さしながら言う。


アリー「今はねえ、LGBTQなんて割り振りを考えることすら、前時代的なのよお。項目を作れば作るほど、そこに当てはまらない人は差別されていくでしょお? だからあ、性別の表現なんてあってないものだし、どうだってかまわないのよお。昔はあ、オカマってよくなかったらしいけどお、アリーたちはその言葉、なかなかイケてると思うんだよねえ」


 と言って、アリー、手をひらひらさせる。


リコ「そういうことだから、私たちはオカマって呼ばれるの、イヤじゃないわよ」

結良「そ、そうなんですか。私の考えは、その、昔のもの? なんですね。え、あれ、じゃあ、今って」

リコ「2222年よ」


 と、リコー、ピースしながら言う。

 結良、息を飲んで、


結良「に、200年後?」

アリー「200年、ってことはあ」


 結良、持っていた袋を逆さにして、出てきたレシートをカウンターテーブルに広げ、日付の部分を指さす。


結良「2022年、です」

アリー「ええ、すごいねえ」

リコ「『すごいねえ』で済む話じゃないわよ、まったく。あなた、災難だったわね」

結良「そう、ですね」

アリー「あれえ、不安じゃないのお?」

結良「不安、ですか?」

アリー「突然知らない場所に来たらあ、帰れるかなって、心配するでしょお?」


 と言われ、結良、手を握って俯く。

 リコ、アリーを睨み、


リコ「ちょっと、あんまりこの子を不安にさせないで」

アリー「ごめえん」


 結良、黙り続ける。

 リコ、ため息をつき、


リコ「安心してちょうだい。こういうのは初めてじゃないから。いつ、とは言えないけれど、そのうち絶対帰れるからね」


 と言って、結良の顔を覗き込む。

 結良、作り笑いで、


結良「ありがとう、ございます」


 リコ、眉尻を下げて息をつく。

 足を組み直し、リコ、誤ってカウンターテーブルを蹴ってしまう。

 倒れていたペットボトルがカウンターテーブルから転がり落ちそうになり、アリー、置き直す。


リコ「あら、失礼」

結良「あっ、私の。置きっぱなしでごめんなさい」

アリー「大丈夫だよお。200年前っていっても、結構見覚えあるやつだねえ」


 と言って、アリー、カロリーメイトを引き寄せて見る。


結良「知ってるんですか、それ」

リコ「知ってるわよ。資料は腐るほどあるもの」


 と言って、リコ、アリーからカロリーメイトを受けとり、箱の両面を観察する。


リコ「それにしても、せっかく200年前の時代を生きているっていうのに、随分つまらないものを食べてるのね」

結良「つまらない?」

リコ「だって、こんなの今でも日常的に食べられるもの。もっとこう、その時代でしか楽しめないものを満喫しておくべきだと思わない?」

アリー「リコはいつもそうだよねえ」

結良「いつも?」


 と言うと、アリー、両肘をカウンターにつき結良にぐっと顔を寄せる。

 結良、驚いて固まる。


アリー「そうそう。今はねえ、昔よりもずーっと、おいしいものたくさんあるよお。でもリコはねえ、みんなが食べてるようなご飯、好きじゃないんだってえ。だからあ、今日の夜ごはんも、わざわざおつかいしてるんだよお」

リコ「ちょっと。それだと私だけワガママみたいじゃない。あなただって好きなくせに、もう」


 と言って、アリーの額を小突く。

 アリー、笑いながら姿勢を戻す。

 店のドアが開く。


ポピー「ただいまー」


 ポピー、袋を掲げて店内に入って来る。


アリー「あ。ポピーちゃん、おかえりい」

リコ「遅かったじゃない」

ポピー「もー、買いに行かせといて文句言わないでよね。って、お客さん?」


 と言って、結良と目を合わせ頭を下げる。

 結良、目を逸らしながら頭を下げる。


リコ「また巻き込まれたみたいなのよ」


 と言われて、ポピー、袋をカウンターテーブルに置き中から弁当を取り出しながら、


ポピー「そっか。それはついてなかったね。ま、焦らなくてもちゃんと戻れるだろうし、今はゆっくりしていってよ。はい、これアリーさんの分」


 と言って、アリーの前に弁当を置く。


アリー「ありがとお」

ポピー「リコさんもどーぞ」


 と言って、弁当を渡す。


リコ「ありがとう」


 結良、リコが受け取った弁当を見つめる。


リコ「気になる?」


 と言われ、結良、目を逸らしながら、


結良「ちょ、ちょっと、だけ」


 リコ、弁当の蓋を開けて、結良の前に置く。

 特別な点が見当たらない普通のお弁当。


リコ「どうぞ」

結良「えっ、あの、夜ごはんなんじゃ」

リコ「あら、私ってそんなに食い意地はってるように見える?」


 リコ、結良と目を合わせて笑う。

 結良、手を合わせ、


結良「い、いただきます」


 と言って、お浸しのようなものを口に運び、無言で咀嚼する。

 リコ、アリー、ポピー、それぞれ手を止めて結良のことを見つめる。

 結良、顔をしかめて飲み込む。

 数秒沈黙して、ポピー、こらえきれなくなって笑い出す。

 アリー、結良が再び弁当に手を付けようとしているのを見て、優しく、


アリー「無理しなくていいよお」

結良「で、でも」

アリー「これ、美味しくないでしょお?」


 と言って、アリー、手を差し出す。

 結良、黙り込んで箸をアリーに渡す。

 アリー、受け取った箸を弁当箱の上に揃えて置く。

 ポピー、さらに笑う。


リコ「ちょっとポピー、笑い過ぎよ」

ポピー「ほら! やっぱりうちらの好みって変なんだよ! 最近は誰も言わないから忘れかけてたけど、久々にまともなリアクション見たわー」


 結良、困惑しながら、アリーに小声で、


結良「これ、売り物、なんですよね?」


 アリー、片手を添えて結良の耳に、


アリー「そうだよお。『真髄世』っていうお店のお弁当でねえ、あそこのお料理は、わざと不味く作られてるんだよお」

結良「わざとなんですか。なんで」


 と言いかけると、リコ、弁当を自分の方に寄せてため息をつきながら、


リコ「食べられない状況になれば、きっと分かるわよ」

結良「不味いものが食べられない状況って、そんなことあるんですか?」

リコ「まあね。ロボットが作れば失敗しないから」


リコ、手を合わせ、


リコ「いただきます」


 と言って、弁当に手を付ける。

 アリー、ポピー、同じように挨拶をして、表情を変えずに弁当を食べ進める。


リコ「あなたは、料理は嫌い?」


 と聞かれ、結良、俯き黙りこむ。


リコ「言いたくないのなら、それでもかまわないけれど」


 と言って、リコ、弁当を一口食べる。


結良「料理自体は嫌いじゃない、ですけど」


 リコ、咀嚼していたものを飲み込んで、結良の方に顔を向ける。


リコ「けど?」

結良「他の人に、自分の料理を食べてもらうのは、苦手です」

リコ「それは、なんというか、複雑ね。私でよければ、話くらいは聞くけど」


 結良、少しの間掌の絆創膏を擦って、口を開く。


結良「お父さんが、厳しかったんです。小さい頃に欲しかったものは、ほとんど手に入りませんでした。バイトもさせてくれなくて。お母さんだって今の私くらいのときにおばあちゃんから指輪を貰ったって言ってたのに、私はアクセサリーなんかほとんど持ってないんです」

リコ「いいじゃない。どうせ金属なんて錆びついておしまいなんだから」


 ポピー、むっとした顔で、


ポピー「ちょっとリコさん、口挟まないでよ」


 リコ、咳払いをして黙る。


結良「お父さんはめったに笑わなかったし、よく叱られてました。あっ、でも、別に悪い人じゃないんですよ。ただ、愛情表現が下手、だったんだと思います。でも、それでも私、褒めてもらいたくて。お父さんに、味噌汁を作ったことがあったんです。そうしたら」


 と言って、息を吸い言葉を詰まらせる。


結良「『しょっぱいな』って、言われちゃいました。ただ、それだけなんです」

アリー「そっかあ。それで怖くなっちゃったかあ」

ポピー「でも、『不味い』って言われたわけじゃないなら、本当に口下手だっただけじゃないの? 私は親にはなれないけどさ、娘が自分のために作ってくれて嬉しくないなんて、そんなことあるかな?」

結良「そう、ですよね。普通に考えたら、そうだとは思うんですけど」


 と、結良、ポピーから目を逸らす。


結良「こう、拒絶されたような気がしたんですよね。きっと、お父さんはそんなつもりじゃなかったんでしょうけど。お母さんが、言葉には魂があるから大事にしなきゃいけないって、よく言ってたんです。だから、なんとなく重く受け止めすぎてしまって」


 と言って、結良、手を擦ってもじもじする。


アリー「なるほどお。ま、小さい言葉を気にしちゃうのは、悪いことじゃないと思うけどなあ」


 ポピー、アリーの言葉に頷きながら、


ポピー「うんうん。素直でいい子なんだなって感じがするしね」

結良「えっと、ありがとう、ございます?」


 と言って、結良、苦笑いする。

 リコ、箸をおいて、


リコ「感動的な励ましムードに横槍入れるみたいで申し訳ないんだけど、ちょっといいかしら?」


 ポピー、警戒した表情で、


ポピー「何? またちゃぶ台返しするつもりなら私が直々にぶっ飛ばすけど」

リコ「そんなわけないでしょう。私を何だと思ってるのよ。ただ、200年先の存在から一つ助言でも、と思っただけ」

アリー「おお、珍しく真面目モードだあ」

リコ「まったく、あなたたちねえ」


 と言って、リコ、額に手を当ててため息をつく。

 リコ、膝を揃えて両手を添え、結良と向きあって見つめる。


リコ「いい? お嬢さん」

結良「は、はい」


 と言って、結良、リコの目を見る。


リコ「あなたの言葉に対する真摯な態度、とっても素敵だと思う。でもね、言葉にならないっていうのも、それと同じくらい素敵なことなのよ。それはきっと、ヒトにしか出来ないから」

結良「言葉にならない、ですか」

リコ「そう。例えば、AIはどんな場合でも必ず返事するでしょう? 答えが出たらそれを伝えて、もし答えが見つからなくても、見つからなかったということを伝える。でもヒトはそうじゃない。言葉が出て来ないことこそが、答えになり得る場合もある。確かに、言葉にならないものっていうのは、無視されたり、軽視されたりしてしまうことも多い。だけどね、それは決してなかったことにはならないのよ。だからあなたは、もう少し、世界を広く見るべきだわ」

結良「言葉が全てじゃない、ってことですか」

リコ「多分ね」


 と言って、リコ、結良から目を逸らす。

 ポピー、アリーの方を向いて、


ポピー「最後の最後でひよったね」


 と言うと、アリー、ポピーと向き合って、


アリー「ひよったねえ」

リコ「ちょっと。何か言った?」


 と言って、リコ、二人を睨みつける。

 アリー、ポピー、向き合って小さく笑う。

 結良、三人の様子を眺めていると、強い眠気を感じて、机にうなだれる。

 リコ、アリー、ポピー、結良の方を見る。


結良「す、みません」

リコ「ああ、眠くなってきた? 大丈夫よ、そのまま身を任せれば、もうすぐ戻れるはずだから」

ポピー「意外と早かったね」

アリー「一応、荷物も忘れないでねえ」


 と言って、アリー、結良の手にビニール袋を握らせる。


結良「あ、りがとう、ござい、ます」


 結良、なんとか瞼を持ち上げ、


結良「あの」

リコ「なあに?」


 と言って、リコ、結良の方へ身体を少し近付ける。

 結良、黙ってリコの手に自分の掌を重ねる。

 リコ、何も言わずに微笑む。

 結良、完全に目をつむって、暗転。



〇外・道路


 結良が逃げていたはずの一般的な住宅街の道路。

 警察官、地面に膝をつき、結良の背中を支えながら、


警察官「君、だ、大丈夫ですか!?」


 結良、警察官の声と電燈の明かりで、目を開ける。


結良「あれ、私って」

警察官「僕が声をかけたら急に走り出して、電柱にぶつかってそのまま倒れてしまったんですよ。覚えてないんですか?」

結良「あ、そ、そうでしたね」


 と言われ、結良、痛みを感じて額を擦る。


警察官「見たところ、出血はしていないようですが」

結良「だ、大丈夫です。怪我、なさそう、ですし。あの、に、逃げちゃって、すみませんでした」


 と言って、結良、警察官の手から離れようとする。


警察官「でも、念のため病院に」

結良「あのっ、ほんと、大丈夫だと思います。あとは真直ぐ家に帰るだけなので。家に帰って何かおかしかったら、ちゃんと病院行きますから」


 警察官、結良が立ち上がるのを手伝いながら、


警察官「わかりました。ちなみに、どうして逃げたんですか」

結良「そ、その、私、お、男の」


 と言って、結良、手を握り込むと、はっとして黙り込む。

 沈黙の後、結良、警察官の目を見て、


結良「ごめん、なさい」


 と言って、頭を下げる。

 警察官、息をついて、


警察官「家に帰るんですよね?」

結良「はい」

警察官「本当に?」

結良「か、帰ります。ちゃんと」


 警察官、しばらく考え込んでから、


警察官「わかりました。未成年は補導の対象ですからね。あんまり遅くならないように」

結良「はい。ご迷惑をおかけして、す、すみませんでした」


 と言ってお辞儀すると、警察官、去って行く。

 結良、掌の絆創膏を見て、袋を持ち直すと家に向かう。



〇自宅・玄関


 暗くて静かな玄関。


結良「ただいま」


 と小声で言う。

 靴を脱いで真直ぐリビングへ向かう。



〇自宅・リビングダイニング


 電気がつけっぱなしで、明るい。

 結良、袋からペットボトルを取り出すと、中身を全てポットに注ぎ、ごみを捨てる。

 カロリーメイトはレジ袋ごと上着のポケットに詰め込むと、結良、上着を脱いで椅子に掛ける。

 結良、手を洗ってから、冷蔵庫の中身を確認し、食材を取り出す。

 結良、ラップにくるまれた冷凍ご飯2つを電子レンジで解凍する。

 結良が食材を切っていると、結衣、仕事部屋からリビングにやって来る。


結衣「あっ、おかえりー」


 結良、顔だけ振り返って、


結良「ただいま」


 と言って、手元に目を戻す。

 結衣、結良の隣へ来て手元を覗き込み、


結衣「外出た音したから、何か食べに行ったのかと思ってた」

結良「外行ったんだけどね、なんか、そういう気分じゃなくなっちゃって」

結衣「そっかあ。何作るの?」

結良「チャーハン」

結衣「いいね、チャーハン」


 と言って、結衣、親指を立てて見せる。

 電子レンジの音が鳴り、結衣、ラップに包まれたご飯を取り出して結良のもとへ持ってくる。


結衣「はい、ご飯。熱いから気を付けてね」

結良「ありがと」

結衣「それにしても結構な量じゃない? よく食べるねえ。さすがは現役高校生。あ、もしかしてお弁当も足りてなかったり」


 と楽しげな結衣の話をさえぎって、


結良「あの、さ」

結衣「うん?」

結良「食べる? チャーハン」


 まな板の方を見つめたまま、結良、手を止める。

 間をおいて、結衣、驚いた様子で、


結衣「え、結良がご飯食べさせてくれるのってすっごい久しぶりじゃない?」

結良「そうかな」

結衣「そうだよ。あんなに人に食べさせるの嫌がってたのに」


 結良、拗ねたように、


結良「それは、昔お父さんに文句言われたせいで」

結衣「文句って、まだそのこと根に持ってるの?」


 と言って、結衣、笑う。

 結良、再び手を動かしながら、


結良「持ってるよ。だって、せっかく頑張ったのに、『しょっぱいな』しか言ってくれなかったんだよ? いくら厳しいって言ったってさ、そんなとこの評価まで厳しくする必要なかったじゃん。冷たいにもほどがあるでしょ」


 結衣、結良の隣を離れ、席に座って、


結衣「あれ? 言ってなかったっけ?」

結良「え、何が?」


 と言って、結良、器に卵を割り入れようとする。

 結衣、頬杖をつきながら、


結衣「結良は泣きながら逃げちゃったけどさ、あの時お父さんも泣きかけてたよ」


 割られた卵が器に落ちる。

 卵を割った姿勢のまま、


結良「嘘でしょ?」

結衣「ほんと。めっちゃ面白い顔してたもん。あれは一生忘れないね」


 結良、ため息をつき、殻を捨てて卵をかき混ぜる。

 結衣、手から顎を浮かせながら、


結衣「え。何、今のため息」

結良「別に」

結衣「えー、気になるじゃん」

結良「あ、ポットの電源入れてくれる?」

結衣「ねー、教えてくれないの?」

結良「あとマグカップと、ティーバッグも」

結衣「はあい」


 と諦めたように返事すると、結衣、立ち上がる。

 結良、フライパンで調理を進める。

 お茶をいれる準備をして、ポットの電源を入れると、結衣、席に戻る。

 しばらく水が沸騰する音と炒められる音だけがして、結良、口を開く。


結良「後でさ、見せたいものがあるんだけど」

結衣「おっ、何々?」

結良「あ、いや、その、全然良いものじゃないの。どっちかって言うと、むしろ悪い方で」


 と言って、結良、動きが小さくなる。

 結良、取っ手を握りしめてフライパンを強く振る。


結良「とにかく、謝らなきゃいけないことがあってさ」


 結衣、真剣だが穏やかな面持ちで、


結衣「いいよ。分かった」


 ポットのお湯が沸いた合図が聞こえ、結衣、立ち上がってお茶を入れる。

 結良、手元から目を逸らさないまま、


結良「何茶にしたの?」

結衣「ほうじ茶」

結良「チャーハンとほうじ茶って、なんか独特な組み合わせじゃない?」

結衣「そう? 夜ごはんのためにわざわざ熱いお茶入れる時点で、かなり珍しいと思うけど」

結良「それもそうだね」


 結衣、お湯を注ぎ終えて、ポットを元の位置に戻す。


結衣「これ何分蒸らすんだっけ」

結良「好きなだけどうぞ」

結衣「うわー、そういうの困っちゃうんだよねー」


 結良、笑いながら、


結良「いいよ、多少渋くなっても。私は平気だから」

結衣「うーわ。その優しさが逆にプレッシャーだって知ってる?」

結良「知ってる」

結衣「うひゃあ。うちの子ってば賢いの」


 結衣、結良、笑いながら雑談を続ける。

 マグカップに蓋をして、暗転。



〇オカマバー・店内


 静かな店内。

 リコ、アリー、ポピーが食べ終えた弁当を片付けている。

 結良のいた場所には、無機質な真白い人形が座ってうなだれている。

 リコ、テーブルを拭きながら、


リコ「想像はしていたけど、やっぱりスワンプドールの誤作動だったのね」

アリー「いなくなっちゃって、残念?」


 と言って、アリー、リコを見つめながら首を傾げる。


リコ「そりゃあ残念に決まってるでしょう? オーナー以外のヒトとの会話なんて、貴重すぎるにもほどがあるわ」

ポピー「とはいえ、最近のスクラップの誤作動の多さに関しては、ほんと勘弁してほしいけどね」

と言いながら、ポピー、白い人形を席からどかし、店の隅に座らせて置く。


 リコ、人形が置かれていた場所を拭く。

 アリー、ごみ箱に弁当箱を捨てながら、


アリー「まあ、やばい怪物なんかが乗り移ってないだけ、ましじゃなあい?」

ポピー「それはそうだけど」

リコ「そんなことになったらこの街は一瞬でおさらばね」


 リコ、アリー、ポピー、片付けを終えると、椅子に腰かける。


アリー「ねえ。さっきの子、200年前を生きているんでしょお? ならあ、リコの好きな桜井優子って作家のことも、知ってたんじゃないのお?」


 と聞かれると、リコ、足を組み直して、


リコ「馬鹿ね。桜井先生はもう少し早い時代にお亡くなりになってるのよ。それに、当時もかなりマイナーな作家だったらしいし、きっと知らないわ」


 ポピー、にやつきながら、


ポピー「だといいね。じゃないと、リコさんの台詞が全部借りものだって、ばれちゃうもん」


 リコ、テーブルに肘をついて、ポピーの方を向き、


リコ「だって、しょうがないでしょう!? 学習しようにも、オーナーが口説き文句の一つも知らないんだから。自力で学習しないと駄目だと思って書庫を勝手に漁ったこともあったけど、あの人の本ってどうしてあんなに真面目なのばっかりなのかしら!? まったくもう、ヒトの癖に! ヒトの癖に!」

アリー「まあまあ、落ち着きなってえ」


 といって、アリー、リコの背中を擦る。

 リコ、体の力を抜いて息を吐く。


ポピー「しょうがないよ。オーナーは機械一筋なんだから。でも、そのおかげでスクラップの私たちは今もここでこうやって話していられるわけでしょ?」

リコ「それは、そうだけど。いやでも」


 と、リコの言葉を遮って、アリー、笑いながら、


アリー「ヒトからも機械からも好かれてないなんて、オーナーってかわいそうだよねえ」


 リコ、ポピー、静まってアリーをじっと見る。


リコ「アリーって変な所で辛辣よね」

ポピー「同感」

アリー「ええ、そうかなあ?」


 と言って、アリー、足を揺らす。

 妙な間が開く。

 リコ、わざとらしく咳払いをして、


リコ「そういえばあの子、私たちのこと、『オカマ』ですってね」

ポピー「え、まじ!?」


 と言って、ポピー、椅子に膝を立てて身を乗り出す。

 リコ、手で振り払うような仕草をしながら、


リコ「まじはまじだけど、その姿勢はやめなさい。はしたないわ」

ポピー「足組んでるリコさんに言われたくないんだけど」

リコ「これはお上品のつもりでやってるの」


 ポピー、ぶすくれながらも椅子にきちんと座り直して、


ポピー「えー、オーナー以外にもその呼び方する人いたんだ。聞きたかったなー」


 アリー、にこにこしながら、


アリー「まさか、スクラップがそんなふうに呼ばれる日が来るなんてねえ」

リコ「ほんとよね。これでも少しずつヒトに近付いてるってことかしら」


 と言って、リコ、胸のあたりを撫でる。


アリー「でもお、リコ、ちょっとずるくなあい?」

リコ「あら、何のことかしら」

アリー「だってえ、自分がスクラップって話、全然しなかったじゃあん」


 と言いながら、アリー、指先でくるくると円を描く。


ポピー「えっ、そーなの?」


 と言うと、アリー、深く頷く。


ポピー「うわー、それはずるい。だって、相手は200年前のヒトでしょ? そりゃあ見た目だけじゃわかんないって」


 リコ、そっぽを向き、


リコ「いいじゃない。あの子が『オカマ』って言ったんだから」


 と、リコが満足げに笑っているのを見て、ポピー、アリー、口角をあげながら、


ポピー「あっそ」

アリー「ふうん」


 リコ、眉をひそめて、


リコ「何よ」

ポピー「別に」


 アリー、ポピーを真似するように、


アリー「別にい」

リコ「あなたたちねえ」


 と言って、リコ、ため息をつく。

 ポピー、店の隅に置かれた人形を親指で示しながら、


ポピー「で、あれどうするの? またいつもみたいに戻しに行く?」

リコ「そうね」


 と言って、リコ、軽く頷く。


アリー「じゃあ、さっきはポピーちゃんがおつかいしてくれたからあ、今度は私が行こうかあ?」


 と言って、アリー、人差し指を自分の顎に当てて首を傾げる。


リコ「いや、私が行くわ」

アリー「任せちゃっていいのお?」

リコ「ええ。私が連れて来たんだもの。だったら私が返すのが道理でしょう?」


 アリー、ポピー、目をあわせてからリコの方を向いて、


ポピー「リコさん、お別れが寂しいからって一人で泣いたりしないでよ?」

アリー「そうそう。あとお、隠して持っておくとか、無しだからねえ?」


 リコ、手で払うような仕草をして、


リコ「そんなことしないわよ。あの子はヒトで、このスクラップはただの器。それくらい、ちゃんと分かってる」


 と言いながら、リコ、テーブルに両手をついて立ち上がろうとする。

 リコ、突然椅子から崩れ落ち、床に座り込む。

 アリー、驚いて腰を上げる。

 リコ、膝を建てた姿勢で下を見ている。


ポピー「リコさん!? だ、大丈夫!? どこか不具合でも」


 と言って、ポピー、焦った様子でリコにかけ寄る。

 リコの足に琥珀色の液体が滴る。

 リコ、頬に手を当てながら、


リコ「あらやだ。興奮しすぎてオイルでも洩れちゃったかしら」


 ポピー、額を押さえながら天を仰ぎ、


ポピー「うっそでしょ。このタイミングで?」


 と言ってから、店の奥に向かって、


ポピー「ちょっとオーナー!? オーナーってば!!」


 と叫ぶ。

 アリー、笑い出す。

 つられて、リコ、笑い出す。


ポピー「ちょっとアリーさん、何で笑ってるの? もう、リコさんまで!」

アリー「なあんでも。私、オーナー呼んで来るから、ポピーちゃん、リコのこと見ててあげてえ。あ、ついでにお掃除道具も持って来よお」


 と言って、アリー、店の奥へ去る。


ポピー「わかった、けど。って、リコさん、いつまで笑ってるんですか!? もう!!」


 リコ、上品に目元を押さえながら、笑い続ける。



〇ネオン街・裏通り


 ネオンサインがまぶしい、人気のない廃れた通り。

 リコ、アリー、ポピーの騒ぎ声が響く。

 路地の行き止まりの場所に、いくつかのスクラップの山がある。

 古びた色の金属に、ネオンの光が反射している。

 どこかのスクラップが、音をたててずり落ちる。


〈了〉

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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