2−2.5 ベルナード商会の会頭ベレスター
私の名はベレスター、鷲大陸に在る魔族と呼ばれる、魔力が普通の人間より高い人類の国セイルーン国の、長い歴史を紡ぎながら商いをする大商会の四十代目の会頭だ、若い時は良く父である会頭の拳骨の鉄拳制裁を受けたもんだ、良くアホに成らずに生きてるか不思議な位だ。 父が死に私が会頭に成り、長男エレクシスには忙しい支部の店長を任せている、私は沢山の友好的な国に行き貿易の幅を広げ、商会は父の代より繁栄に成功した。
主に扱ってるのは魔道具の日用雑貨や、酒や食料品に冒険者が必要な回復ポーションや日用品、旅に必要な干し肉や缶詰等も取り扱っている。 貿易品は主に穀物やワインやそれなりの質の、蜂蜜酒や林檎酒に生温いビールだがそれなりに需要は在る、だが慢心は商人の敵だ私は会頭に成っても向上心は忘れない、たまに長男や次男を連れ新しい契約先を探す、連れて行くのには息子達にノウハウを叩き込む為だ、たまに長男の孫娘のミリアムを連れて行く、息子より度胸が在るが男女差別が昔より無い世の中に成ったが、ミリアムに家督は継ぐ事はまだ難しい社会だ、本当なら新しい店を一つ位任せて良い位の度量は在る。
そして私の手にはとある海路の地図が在る、私は若き日に余り好きではない男に、東の南航路の地図を貰ったが、その好きではない男グランツはその日に出会った以降、奴とは出会ってない…………商会を押し付けられた、グランツの弟のハインツとは今も交流が在る、ライバル商会だが敵ではないし得意分野が重なろうが、貿易は家しかしてないので他国の商品の売買では、向こうは客様であるから問題はない。
貿易特化の貿易商も在るには在る、だが私の販路には遠く及ばない………それにまだ世界は広い、私の知らない未知の土地にはまだ未知の物が在るに違いない。 私は新しい道が開けるのが好きだ、アイツ………グランツもそうだったのだろう、奴の場合は新しい大陸の支配者に成る事だが、野心が過ぎた結果数十年経っても帰って来ない、見付けたなら絶対アイツは自慢する為に帰って来る、東の北の海路の地図未完成の瓶と遺書らしきのが、長い時を経て国の北の海岸に流れ着いたのは、この日から二ヶ月前の事だ。
バカな奴だ、危険な竜の住みかの大陸を北に進みその先で、ワイバーンに襲われたらしい………昔から遭難の名所に行くとは、他にも何通か有り船は海に沈んだが逃げ延びるも、ワイバーンのエサに成る仲間に自殺者が現れ、最後はグランツは病気で死に最後の食料を片手に、この瓶に手紙を入れ行くも最後に託された者の末路は、ワイバーンに見付かり食われたか大海原で死んだかだ、そして最後に書かれたグランツの手紙に、私は奴の意思は継がないが、奴が目指した大陸に行きたくなった、あと託された最後の者の手紙は無事遺族に渡っている。
だが私は昔に比べて老いた、だが私は商人だがそれ以前に商売の開拓者だ、開拓者に老いなぞ問題ではない、好奇心が騒ぐ………初めて飛び出した航海をした若い日の、あのざわめきが私を動かす………そしてあの時より確実に、この胸の鼓動は高鳴り誰かが待ってる気がする、それは亡きグランツではないし葬儀はもう終わってる、先に逝った奴ではない………誰だ?
「お祖父様、何故か私は誰かに会わないと行けない気がします………何故か………」
孫娘のミリアムが東の海の彼方を見て言う、さあ私の決断の時間だ………妻はもう居ない身だし、私が帰らなければ長男が会頭に成り次男が長男の代わりに入り、次男の店を孫息子がやれば良いだけだ、ミリアムは止めても絶対一人でも行くだろう、だが生きて帰る自信は在る………何故か分からぬが、そして私は連れて行く使用人を選別し野心なき、交渉相手を不快にしない人選を連れ、懐かしい船に乗り魔改造した一部鋼鉄等を使った、魔力を使った高速航行をする帆船を大海原に向け、バカが行かなかった安全航路に向け旅立った。
何人かやはり船酔いした、孫娘ミリアムもだが………だがスピードを落とす気はない、モンスターの巣窟の大陸を大きく迂回しする、たまに異世界の旅人と遭遇するとされる大陸だが、モンスターに遭遇するリスクが高いと知ってる大陸に、わざわざ行くつもりは無い。
途中新たな列島が見えたが、火山の噴煙が見えたのでやめた、そして迂回に少し大回りした結果、一ヶ月の食料が尽きるギリギリに新大陸の航路に入り、魚を食べつつ海王モンスターにも遭遇せずに、海底火山は在ったし岩礁も在ったが問題なく進めた、そして辿り着いた………新たなフロンティアに、予定より十五日以上遅く到着は計算外だが、何故か帰りの食糧は大丈夫な気がした………何故か?
「お祖父様アレを!」
ミリアムが指差す方には、私が知らない方式の信号弾の光が見える。
「急ぎ敵意が無いと白旗を振り、ゆっくりと進め」
「「「ハイ!」」」
メイドや船員は急ぎ走り長く共にする、セルジュが見える位置に行き旗を振り、私達は巨大な大砲を積んだ要塞が止まった、私達が知らない技術で作られた綺麗な港を目にする。
「上陸するぞ、ミリアム」
「はい、お祖父様」
私達合わせ四隻の上陸挺に乗り着水と共に向かう、太った男が居る港へ。
そして私は帰路に居る……色々疲れたが、ミリアムは大陸に残り商談は成立した筈だ、ビールは何とか売れたが需要が無いとは珍しかった、帰りの食糧は少し高かったが新鮮な野菜に新鮮な肉は、私の人生でも信じられない味だった、それに広い温泉は我々が知らない文化だ、サウナが普通の我々にはだ………まあ風呂は在るが、水が高いから井戸や魔石が無い者には贅沢だが………アレは、そんなレベルではない…………お湯が無尽蔵に涌き出てるらしい、何て贅沢なんだ………ミリアムには温泉とやらをどう手に入れるか、探って貰う…………あと酒…………大量に欲しい………個人的に。
次は長男のエレクシスに任せ、商談を任せる予定だ………ミリアムにも会いたいだろうしな、それにモンスター避けのアイテムは商売に成りそうだ、あの魔女殿との商談も息子に任せよう。 さて新しい物を入手する為に、新しい船と倉庫も必要だな………若い日より何かワクワクして来たぞ。
そして私は国えと帰路に着き、新しい商談の品を手配しエレクシスに任せて、また行く前に色々準備がしたいのでさっさと帰り、会頭の仕事を終わらせたら長い休暇が出来る様にしよう、次は絶対飲んでない酒や食い物を味わってみせる! 次は飲んでない酒を飲みたい!!




