アンとハチ
ある村に1本のりんごの木がありました。
そこはいろんな人たちが集まる場所。
パン屋さんや、お花屋さん、おじいさんや、ちっちゃな子ども。
そこへ1人の少女・アンと、その子がかっている子犬・ハチがやってきました。
「わー、りんごがたくさん、なってるわ!」
アンはとてもうれしそうでした。
それを見て、ハチも喜びました。
アンはりんごが食べたくて、木に登ってりんごをとろうとしました。
「やったー! とれたわ!」
しかし、アンは手をはなしてしまいました。
「きゃー!」
アンは落ちてしまいました。周りの人は驚きました。
ハチも慌ててアンに近づきます。
大人がやってきてアンを連れて行ってしまいました。
そして、ハチとアンがとったりんごだけが残されました。
ハチはりんごの木の下でずっと待ちました。
寒い時も、暑い時も、雨の日も、風の日も。
またアンが笑ってここにきてくれることを信じて待ちます。
ある日、りんごの木が切られてしまいました。
ハチはほえて止めましたが、だめでした。
残ったのは切り株だけです。
ハチはその切り株の上にのってアンを待ちました。
だけど、いくら待ってもアンはきません。
でもハチはいつまでも待ちました。
また一緒にいられることを信じて……
やがて月日は流れていきました。
すると、1人のおばあさんが女の人に連れられてやってきます。
そのおばあさんは、アンでした。
「あのりんごの木も、なくなってしまったのね……」
アンはとてもさみしくなりました。
「おばあさん、あれはなんでしょうか?」
女の人が切り株を指さしました。
そこには首輪がひっかかっていました。
女の人はそれを取ってアンに渡します。
「これは、ハチがつけていた首輪だわ……」
アンは涙があふれてきました。
「ずっと待っていてくれたのね……ありがとう、ごめんね……」
アンは涙を流しながら、ハチの首輪をぎゅっと抱きしめました。
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