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プロローグ


 

 この世界は多数の種族が存在している。


 私、三ツ塚由紀みつづかゆきが家族と共に、この異世界に召喚されてからいろんなことがあった。


 人間至上主義の国に召喚され、色々な事があり今は色々な種族が互いを尊重しながら生活している神魔国で生活している。


「お父さん! そろそろ起きないと、今日はお母さんの救出作戦を立てるって言ってたじゃん!」

 

 魔王城の最上階にある魔王の私室で、私は今日もなかなか起きない父、三ツ塚アルトリード(みつづかアルトリード)が引きこもる毛布を引き剥がそうと必死になっていた。


「ゆき、あと5分……」

 

「それはさっきも聞きました!」


 ガシャーン!


 そんな中、魔王城のバルコニーに通じる窓ガラスを叩き割り、飛び込んできた侵入者にいち早く反応して、父さんが私を背中に庇う。


「魔王……」


 ゆらりと立ち上がったのは、背が高い青年だ。


 アルトリード父さんは、この世界に召喚されるまで外国出身の人だと思っていた。


 母さん一筋で、大きな子どもみたいなアルトリード父さんが異世界人だなんて普通は考えないでしょう?


 しかも大きな欠伸をしながらお尻をボリボリ掻きながら起きてくる中年オヤジが、まさかの魔王だなんて誰が想像するのか。


 日本人とは骨格からして違う長身で逞しいアルトリード父さんと遜色ない屈強な身体つきは、ジョブスキル『勇者』の恩恵だとしてもあまりに異常だった。


 本来ジョブスキルの恩恵はステータス値や、少しだけ筋肉が付きやすくなるとか、戦いに適した身体つきになるためにサポートされるくらいだ。


 子どもがほんの半年で大人になるなんてありえないのだ。

 

 黒髪と黒い瞳は異世界からの召喚者である証なのだと神魔国へやって来てから教えられた。


 侵入者は憎悪を漲らせて長剣を構えるなり、いまだにパジャマ姿の魔王……アルトリード父さんに斬りかかる。


 この世界で私が知る限り黒髪に黒い瞳をしているのは、私と、一緒に異世界に召喚された五人の弟達だけだ。


 現在……安否がわからないのは泣き虫で甘えん坊で、五歳の末っ子の三ツ塚奏音みつづかかなとただひとり……

 

 なんで、どうしてこんな事になっているの!?


「お前、奏音か!? くそっ、反抗期には早すぎんだろう」


 長剣を苦もなく振り回す逞しい身体も、一番上の弟よりも何歳か大人にみえる精悍な顔付きが、アルトリード父さんを睨みつける。


 数日前に魔王を討伐するために、魔王城へ攻め込んできた大魔導師……


 今はコンコンと眠り込んでしまった双子の弟を見た時ですら……なかなか受け入れられなかった。


 それなのに目の前で父を襲う人物が、可愛い弟だと認めたくない自分がいる。


「父さん危ない!」


 防戦しかできずにいる父に振り下ろされた長剣を、ジョブ『肝っ玉母ちゃん』だけが使うことができる『肝っ玉母ちゃん魔法シリーズ』の一つ、『肝っ玉母ちゃんの愛の鞭』で縛り上げる。


「くっ、凄い力」


「由紀! お前は戦闘職じゃないんだ無理すんな!」  


 奏音からバックステップで距離を取ったアルトリード父さんが私に対して檄を飛ばす。


 私なんか見えていない様子でずりずりとアルトリード父さんへ距離を詰めていく奏音の力はすごく強い。


「奏音! お願い目を覚まして! 私よ、由紀ねぇちゃんよ」


 懇願するけれど、奏音の視線はアルトリード父さんから外れない。


 ぐぬぅぅう、これは……あれをやるしかないのか!?


 大きく息を吸い込んで、頭の中に思い浮かべるのは、奏音が大好きなアニメのオープニング曲だ。


〈ゆきねぇちゃんが歌うと毎回違う曲になるのはなんで?〉


 保育園の帰り道、自転車の後部に取り付けられたチャイルドシートに座る奏音にねだられて歌うたびに、奏音は私の音痴な歌を楽しそうに一緒に歌っていた姿を思い出す。


 まぁ、あのときは『肝っ玉母ちゃん……』なんてジョブスキルは持っていなかったから、ただの音痴で済んでいた。

    

「元気いっぱい夢いっぱい!」


「由紀、もしかして歌う気か!?」  


 肝っ玉母ちゃん魔法……、色々な魔法の中で私がこの世界で一番最初に覚えた魔法!


「えぇ! 肝っ玉母ちゃんの子守唄ララバイ!」


 奏音! 直ぐにお姉ちゃんが助けてあげるからね! 

 

 


 

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