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優しい彼女と変人だらけのシェアハウス  作者: 桐城シロウ
第四章 夏の終わりにあなたと
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18.メイベルに嫌われてるかもしれない、俺

 


 しばらくして現われたエレンさんは、顔が真っ青で今にも倒れてしまいそうだった。写真で見た通り、気弱で可愛らしい顔立ちだったけど、汗が滲んで額に茶髪が張り付いている。その茶髪は後ろでゆるくまとめられていた。それに、少しでも顔色をよく見せようと思ってのことなのか、目に痛い黄色のブラウスとベージュ色のタイトスカートを履いている。でも、肩にかけた白いチェーンバッグといい、まろやかなベージュパンプスといい、品の良さが漂っている。


「あっ、あああああの、とっ、とつぜん、押しかけてしまって申し訳ありません……!! これ、クッキーです。皆様で良かったらどうぞ」

「わぁ! ありがとうございます! でも、みんなでちょうど、ダニエルさんの婚約者さんにお会いしたいねって話していたところなんですよ。お会い出来て本当に嬉しいです! ようこそ~」


 差し出された白い紙袋を受け取りながら、そう言ってみると、澄んだグリーンの瞳に涙をいっぱい溜め、ふるふると小刻みに震え出した。


「あっ、ああああああありがとうございます……!! でっ、でも、私、ゆっ、ゆびわ、ええっと、ま、まだ婚約者じゃないんですよね。残念ながら」

「あれ? そうなんですか? でも、ダニエルさんはエレンさんと結婚する気満々ですし、もうそれでいいんじゃないかなと思っ、」

「いやいやいや!! きっ、きっと振られてしまうだろうから……そっ、そそそれなのに家に押しかけたりなんかして!! こっ、このこと、黙っててください! 気持ち悪がられる!」

「へっ? わ、分かりました……。お待ちにならないんですか? ダニエルさんが帰ってくるまで」


 今日、ダニエルさんは休日出勤をしている。でも、夕方には帰ってくると言っていたし、待ってればいいんじゃ……? 首を傾げていると、必死にぶんぶんと首を横に振り出したので、戸惑いつつも頷く。


「分かりました。ここで立ち話をするのもなんですから、どうぞ上がってください。あ、申し遅れましたけど、メイベル・ロチェスターっていいます」

「あ、だ、ダニエルさんの、お友達の姪っ子さんなんですよね……? お聞きした通り、すごく優しい方ですぐ気が付きました」

「へっ!? ありがとうございます。ダニエルさん、私のこと、そんな風に言ってくれてたんですか?」

「は、はい。わ、私と……いいえ、何でもありません! どうぞお気になさらずに!!」

「あっ、はい」


 ダニエルさんから繊細な女性と聞いていたし、私が出迎えて良かった……。リビングのドアを開けると、それまで聞き耳を立てて、待ち構えていたアレンとハリー、ヘンリーにフレデリックさんが出迎えてくれた。一通り自己紹介を済ませたあとで、リビングのソファーに座り、買ってきたケーキの箱を開ける。ヘンリーが見やすいように、テーブルの中央へと置いて、エレンさんに話しかけた。


「ええっと、どれにしますか? あ、ダニエルさんは生クリームが苦手なので、出来たらチーズケーキ以外のものを、」

「へっ!? そっ、そそそそうだったんですか!?」

「えっ? ああ、そうです。聞いていませんか? お見合いの席で。好きな食べ物や嫌いな食べ物の話をしたと、そう聞きましたけど……?」


 ヘンリーが不思議そうな顔をする中で、かっと顔を赤く染め、両手で頬を押さえた。でも、流石はダニエルさんやヘンリーの親戚! すごく品が良くて、お嬢様な雰囲気を漂わせていた。


「わっ、私……ああ、じゃあ、なんてことを! 優しいから、気を使ってくれたんですね……」

「えっ? 何の話ですか? どうしました?」

「もしかして、無理矢理生クリームを腹いっぱい食わせたとか!?」

「おい、こら。そんな訳ないだろうが。一体どういう状況なんだよ」


 テーブルにお皿を並べていたアレンが不機嫌そうな顔をして、ハリーを睨みつけていると、エレンさんがおっかなびっくりとした様子でこわごわと頷いた。た、食べさせたんだ!? 無理矢理!?


「わ、私、生クリームがいっぱい入ったマンゴーパフェを頼んで、沢山残してしまったんです……。でも、ダニエルさんがぺろりと平らげてくれて。生クリームが好きだって、そう言ってました」

「ああ、ダニエルさんはそういうところがありますからね。俺もよく、嫌いな人参を押し付けてたなぁ」

「ヘンリー、そんなことしてたの? 可愛い~」

「ああ、まぁね。ダニエルさんに甘えちゃってて……」


 ヘンリーが顔を伏せ、照れ臭そうに笑う。でも、そっか。ダニエルさんが優しいのは昔からだったんだ。しきりに申し訳なさそうな顔をするエレンさんをなだめ、私は小さいカタラーナ、アレンはガトーショコラ、ヘンリーはピスタチオと木苺のタルト、ハリーは食べにくそうなミルフィーユをチョイスし、フレデリックさんはモンブラン、エレンさんはふわふわのシフォンケーキにしていた。さっくりと、優雅に木苺のタルトへフォークを入れながら、ヘンリーが尋ねる。


「エレンさん。今日は一体、何をしにここへ? いや、別に構わないんですが」

「わっ、わわわわ私としては今日、こっ、ここへ来る気はちっともなくて……。ダニエルさんと鉢合わせしたら気まずいし」

「あ? ならなんでここに来たんだよ。ええっと、なんで来たんですか?」


 あまり取り繕う気がない様子のアレンが、フォークを突き刺し、ガトーショコラを口に運んで食べ始める。眉をひそめ、非難がましい視線を送ってみると、怯んで「ごめん」とだけ呟いた。でも、エレンさんは特に気にした様子もなく、手付かずのシフォンケーキをじっと、見下ろしている。


「あ、あの、そこのハリーさんが……わっ、わぁ!? クリームでべたべた!」

「いや、違うんですよ! 俺が文化人らしく、綺麗にミルフィーユを食べたりなんかするとみんなが嫌がるんですよ! だから、べったべたに手を汚して食べてるだけで!!」

「お嬢さん、どうぞ気になさらないでください。ハリーはいつもこういうやつなんですよ」


 すかさずフレデリックさんが爽やかな微笑みを浮かべ、とりなした。ハリーは口の周りや手をべたべたに汚しながら、残りのミルフィーユを掴み、口へと突っ込みつつ、ぶんぶんと首を激しく振っている。アレンが「きっも。お前、きっも!」と嫌そうに呟き、ヘンリーは頭でも痛いのか、青ざめて額を押さえていた。でも、すぐに復活する。


「フレデリックさんの言う通りです。どうぞ、ハリーのことはお気になさらずに……。そんなことよりも、来る気が無かったとは? 一体どういうことですか?」

「あっ、ああああの、わっ、私、まっ、前、会った時に、しぇっ、シェアハウスの電話番号をき、聞きまして! 教えて貰いまして!! わっ、私からじゃないです! だっ、ダニエルさんがもしも万が一、て、手帳が壊れた時に困るからと言って、おし、教えてくれたんです……!!」

「へー。あいつ、本当にぞっこんなんだなぁ」

「ぞっ、ぞっこぉん!?」


 アレンの呟きを聞いて、グリーンの瞳をまん丸にする。何故か、小鳥を思い出した。可愛らしい女性でほっとする。微笑ましく思いながら、スプーンでカタラーナを掬い上げると、弾むような弾力が伝わってきた。アイスも美味しかったけど、カタラーナも甘さ控えめで美味しい~。


「だと思いますよ~。ダニエルさん、運命の女性と会えたって、そう嬉しそうに話していましたから!」

「うっ、うううう運命だなんてそんな!? むっ、むしろ、ダニエルさんが運命の人で、」

「申し訳ない。話を戻しますが、それから? 電話番号を聞いたって……?」


 ヘンリーが苦笑しながら手を上げると、はっと我に返って、フォークを握り締める。


「あっ、あの、そ、それで、わ、私、実はメイベルさんと喋るつもりで今日、お電話させて頂いたんですけど!」

「あれっ!? そうだったんですか!? 知らなかった!」

「フレデリックさん? 電話とったんですか?」

「いや、俺じゃないよ。上で寝てたし」

「ヘンリー!? 俺に聞こうよ!? 俺が電話をとったんだよ!! アレンが物悲しげにぼーっとしてるし、俺にとれって言うからとったんだよ!!」

「おい、社畜。余計なこと言ったら、八つ裂きにしてやるからな?」

「わっ、分かったって……俺、アレンがソファーでたそがれてたからさ?」

「たそがれてたのか……」

「珍しいな。落ち込んでたのか、お前」


 フレデリックさんとヘンリーに好奇の目を向けられ、忌々しげに舌打ちをした。なんで落ち込んでたんだろう? 本当にハリーの言う通り、私がヘンリーと出かけちゃったことで、落ち込んでくれてるといいんだけどなぁ……。恥ずかしくなって、無言でカタラーナを食べる。さっきとは違って、味がしなかった。


「だから、代わりに電話に出たんだよぅ~……。で、メイベルちゃんいなかったから、今から遊びにおいでよ! って誘ったんだ」

「ハリー……。俺に電話した時、そんなこと一言も言ってなかったじゃないか! どうして何も言ってくれなかったんだ!?」

「いや、だって、俺を置いてきぼりにして、ヘンリーとメイベルちゃんがラブラブデートに行くから……」

「ああ!? 違うっての! 誤解を生むような言い方すんなって!」

「嫉妬だぁ~……ぶっ!?」

「お前、しばらく黙ってろ。ミルフィーユも食うな」


 口が開けない魔術でも使ったのか、ハリーが慌てて、もごもごと口を動かしていた。必死にくちびるを触ってるけど、開かないみたい。ハリーがあんまりにも余計なことを言うのなら、今度からアレンに魔術をかけて貰おう。カタラーナを掬い上げ、また口に運ぶ。うん! 今度はちゃんと味がするし、美味しいな~。


「そっ、そそそれであの、はっ、ハリーさんからお誘いを受けて、図々しくも乗ってしまい……!!」

「ああ、別に大丈夫ですよ。それで? メイベルちゃんに一体何の話が……?」

「えっと、わっ、私と一緒に服やコスメを買いに行って頂けたらと……!! もちろん、お金はお支払いします!!」

「えっ!? いりませんよ、そんなもの! わ~、でも、楽しみだし嬉しい! 私、エレンさんのことが気になってたんです! 行きましょう、行きましょう」


 エレンさんのお陰で、ダニエルさんに後ろめたさを感じずに済んだし……!! そろそろ私も、アレンの心をぐっとつかめるような服とコスメを買いに行きたい! すぐさまぱぁっと顔を輝かせ、胸元で手を握り締めた。


「あっ、ありがとうございます……!! 本当に聞いていた通りで、ほっとしました。だ、ダニエルさんがその、メイベルとなら気が合うんじゃないかって、そうおっしゃっていたので」


 照れ臭そうに顔を伏せながら、そばかすの散った顔を赤く染める。うん、ダニエルさんが好きになったのも分かる! なんだか健康的な可愛らしさがある人で、これからどんどん、さらに綺麗になっていきそう。返事しようと口を開きかけた瞬間、フレデリックさんが「はいっ!!」と言って手を上げた。


「俺で良ければついて行きましょうか? 男目線でアドバイスが出来るかと!」

「おい! てめぇな!? ぜんっぜんよろしくねぇよ! 俺がついて行くからお前はでしゃばんな! 引っ込んでろ!」

「あっ、いらないから。アレンは留守番してて?」

「えっ!? なんでだ!?」


 私が手で制し、首をふるふると横に振ってみせると、呆然とした顔で口を開けていた。ようやく魔術の効果が切れたのか、ハリーが騒ぎ出す。


「俺も! 俺も行きたい! 俺も行きたぁいっ!!」

「ハリーもだめ。ヘンリーとお留守番してて?」

「あっ、俺もなんだね……別にいいけど」

「ええっ!? 俺も行きたい、行きたいよ!! なんだよ、みんなして俺のこと仲間外れにしたりして!」

「うにゃあん」

「いでっ!?」


 その時、壁に作ったキャットウォーク(ヘンリー作成)から、白い毛をなびかせ、バニラちゃんがハリーの頭に飛び乗った。ハリーががくんと前のめりになってしまう。バニラちゃんは素知らぬふりをして、優雅に肩から降り、ハリーの膝の上にお座りした。ふふんと誇らしげに胸を張ったバニラちゃんは、まるで「ハリーのことを任せろ」とでも言いたげだ。


「ふふふっ、お利口さんね? バニラちゃん! じゃあ、ヘンリーと一緒にハリーのことを見ていてくれる?」

「うにゃあん」

「あっ、そうか。俺が手下その一で、バニラたんが手下その二なのか……!!」

「うにゅうん」

「へ、ヘンリー? どうしちゃったの? てした?」


 ヘンリーがはっと、何かを閃いた表情ですかさずバニラちゃんのことを見つめていた。ハリーはぐすぐすと泣き真似をしながら、白い毛皮をもふもふして、顔を埋めている。


「いや、何でもないよ……でも、フレデリックさんを連れて行くのはやめた方がいいんじゃないかな」

「じゃあ、当て馬要員で何かと使えるカイルさんを、えっと、んぐっ!」


 ついうっかり、本音を口にしてしまった。両手で口を押さえていると、ヘンリーが呆れた顔をして「隠しきれてないから。言っちゃったあとだから……」と言ってきた。フレデリックさんは苦笑している。おそるおそる、隣に座ったアレンの方を振り返ってみると、何故かカメラを構えていた。い、いつの間にどこから出したの!?


「あ、あの? アレン? それは!? あと、今のは聞いて、」

「いや、最近のメイベルは中々いい表情をするようになったからな……。その瞬間をカメラに収めたくて。で? 何だって? ウィルを連れて行くだって?」

「ううん、カイルさんを連れて行くの! 最近、一緒にご飯食べましょうって誘われてるし。ついでにお昼ご飯でもどうかなーって、みんなと一緒に!」

「そうだな! カイルは社交的な性格だし、あいつ、けっこう淋しがりやなところがあるからいいんじゃないか? 人数多い方が絶対に喜ぶって! お前と二人きりよりも、絶対人数多い方があいつも喜ぶって!」

「だよね~、だと思った! でも、アレン、カイルさんと仲が良いの? アレンも一緒に食べに行ったりしてる?」

「それはしてないけど、ちょっと聞きたいことがあってな……。近々、食事に誘おうかと思ってた」

「へ~。でも、確かに二人とも相性が良さそう! あっという間に仲良くなりそう~」


 アレンが無言でカメラを構えたので、にっこりと微笑む。バシャバシャとシャッター音が鳴り響く中で、何故かヘンリーとフレデリックさんがぞっとした顔をしていた。エレンさんはひたすら戸惑ってるし、ハリーはもふもふしながら黙り込んでいる。


「じゃっ、じゃじゃじゃじゃあ、あ、あの、ふ、フレデリックさん? もいてくれたら嬉しいです……。そ、その、カイルさんとはどなたのことでしょう?」

「恋愛経験豊富な弁護士さんなんです! 優しくてよく気が利く人なので、きっと有益なアドバイスをくれますよ~。エレンさんさえ、良ければお呼びしたいんですけど、どうでしょう?」

「あっ、た、頼もしいですね……!! 私も人慣れしておきたいので、じゃあそれで」

「いやぁ~、申し訳ないなぁ! 俺だけ女性二人とお買い物か~って、いって!? アレン、やめろって! ガキかよ!? お前は!」

「うるせえっな! 余計なことばっか言いやがって! なぁ、メイベル!? この色ボケおっさん、絶対連れて行かない方がいいだろ! 代わりに俺がついて行く!!」

「お前、自分が置いて行かれるのが嫌なだけじゃん……」


 アレンには申し訳ないけど、嫉妬心をあおるためにもアレンは置いて行きたい。使えるカイルさんを連れて行きたい。フレデリックさんが来るのは誤算だったけど、別にいいや。シェアハウスメンバーを一人連れて行った方が、アレンもより淋しく感じてくれるかもしれないし!


「ごめんね? アレン。その、色々事情があって連れて行きたくないの……」

「だっ、大体! エレンさんでしたっけ!? 一人で買い物に行けばいいじゃないですか! どうしてメイベルを連れて行く必要があるんですか!?」

「おい、アレン。落ち着け。みっともないぞ、お前」

「エレンさんに当たるのはやめろよ……」


 フレデリックさんとヘンリーにたしなめられても、どこ吹く風でエレンさんのことを睨みつけていた。途端に真っ青になって、がたがたと震え始める。


「ごっ、ごめんなさい!! いつもはお母様とか叔母様と一緒に服を選びに行くんですけど、こっ、こここ今回はその、デート服ということで……おっ、おおお手伝いさんからも、似合ってない服ばかりって言われちゃったし! わ、私、ひ、一人で買いに行くのが恥ずかしくて。こっ、こんなこと、お母様とお父様には到底頼めないし……!! ごっ、ごめんなさい。服ぐらい、一人で買いに行けなくてごめんなさい……」


 辛くなってしまったのか、目に涙を溜めて泣き出してしまった。すっと私の表情が消えたのを見て、慌ててヘンリーとフレデリックさんがアレンに向かって「おい、謝れ! 今すぐ謝るんだ!」と野次を飛ばし始める。


「わ、悪かったな……あー、メイベル? どうしてもだめか? てか、カイルとフレデリックは良くて、俺がだめな理由は?」

「だってアレン、女心なんて分からないでしょ? 今のだってそうだし。それに、恋愛経験だって豊富じゃないんでしょ。だから、今回はお留守番してて? お土産買ってきてあげるから」

「……」


 とたんに、アレンが無の顔で黙り込んでしまった。エレンさんがぐずぐずと泣きながら、「メイベルひゃん、ありやとうございまふ……」と言ってくる。


「ごめんなさい。アレンが失礼なことばっかり言って! あっ、そうだ。連絡先交換して貰えませんか? 私も色々と相談に乗って欲しいことがあって」

「いっ、いくらでも喜んで……!! わ、わぁ、大人になってから初めて、お友達が出来たかもしれません……!!」

「あれ、そうなんですか? でも、確かに学生時代とは違って、誰かと会う機会がなければ、中々お友達なんて出来ませんよね~」


 二人で楽しく連絡先を交換していると、その他の男性陣がもそもそと、所在無さそげにケーキを食べ始めた。やった! これで恋愛相談出来るお友達が手に入った~! 昔からのお友達には恥ずかしくて、なかなか恋愛相談が出来ないから嬉しい……。


「あ、あれっ!? エレン!? 一体どうしてここに……」

「ひっ!? すっ、すすすすすみません!! お留守中に勝手に入り込んだりして!!」

「いや、別に構わないけど……」


 紺色のスーツを着たダニエルさんが首を傾げ、慌てるエレンさんの腰へ手を添えた。物言いたげに私を見て、それから無の表情で突っ立っているアレンを見て、さらに困惑した表情を浮かべる。今ちょうど、お見送りしようと思ったところなんだけど……。玄関で鉢合わせしてしまった。ええっと、どう言えばいいんだろう?


「ええっと、あの、ハリーが無理に呼んだんです。本当は私に話があったみたいで。お電話、かけてくれたんですけど……」

「メイベルに? 話が?」

「ほっ、ほら、だっ、ダニエルさんが、めっ、メイベルさんと気が合うんじゃないかって、そう言ってくれたでしょう? だから私、その、人に慣れるためにも会いたくてお電話したんです」

「ああ、なるほど。でも、無理はしないで? 心配だから」

「ひょわっ!?」


 ダニエルさんが腰を抱き寄せ、その頬にちゅっとキスをする。途端にエレンさんが真っ赤になって、両手で頬を押さえながら、へなへなと座り込んでしまった。慌てて、ダニエルさんが手を差し伸べる。わっ、わ~……!! ダニエルさんってこういうことする人だったんだ! 素敵! 


(いいなぁ、羨ましいなぁ! 私も今の、アレンにやって貰いたいな~)


 ちらりと横を見てみると、まだ無の表情で二の腕を組んでいた。無理そう……。無事にエレンさんを立ち上がらせたダニエルさんが、苦笑してこちらを振り向く。


「メイベル。俺、このままエレンのことを送ってくるよ」

「あっ、はい! 行ってらっしゃーい……あと生クリームの件、聞きましたよ~。誤解を解いておきましたよ~」

「えっ!? なんで知って、」

「あ、あの! 気を使ってくださってありがとうございます! そ、その、お話ししますね! あとで」

「ああ、うん。じゃあ、そうして貰おうかな? それじゃ、俺達はこれで。ごめん、鍵お願い出来るかな……?」

「あっ、はい! 鍵、かけておきますね~!」

「よろしく」


 幸せそうな笑顔の二人を見送ったあと、鍵をかける。見てみると、アレンはまだ硬直していた。そ、そんなにショックだったのかな……?


「なぁ、メイベル?」

「ど、どうしたの? 大丈夫?」

「いや……何でもない。当日、不安で仕方ないな」

「大丈夫! カイルさんも呼ぶから~」

「……」


 エレンさんとフレデリックさん、カイルさんと一緒にお出かけだなんて楽しみだな~! その日の夜、ハリーとアレンはひたすらバニラちゃんをもふもふしながら、小声で何かを話し合っていた。淋しい者同士、通じる何かがあるみたい?











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