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優しい彼女と変人だらけのシェアハウス  作者: 桐城シロウ
第四章 夏の終わりにあなたと
96/134

17.美味しいフルーツティーと余計な入れ知恵

 


 あのあと、お見合いから帰ってきたダニエルさんが笑って、「上手くいったから大丈夫」って言ってきた。ほっとした。聞けばお互いに一目惚れ状態だったみたいで、お見合い相手の女性の写真を見たハリーが「えっ、細くない!? 鶏がらみたい!」と言った瞬間、あのダニエルさんが無言でがっと、ハリーの胸ぐらを掴んでいた。みんな、慌てて止める羽目になった。


「だから、私も頑張ろうかなと思って……ヘンリー? アレンに女性のどういった格好が好きか聞いてきて欲しいの。お願い!」

「いや、なんで俺に!? 直接聞けば!?」


 テラス席で白桃とシャインマスカット、それにパイナップルとミントが踊っている、冷たいフルーツティーを飲んでいたヘンリーが驚き、ダークブラウンの瞳を瞠った。昼下がりのテラス席は穏やかで、すぐ横の運河では、水鳥が群れをなして泳いでいる。頭上では白いサンシェードがはたはたと、涼しげにはためいていた。並べられたテーブルとガーデンチェアもおしゃれだし、ちょっとレトロな向日葵柄のシャツワンピースを着てきて良かった。でも、そんな素敵なカフェテラスにて、ヘンリーはどうしてか青ざめている。


 今日は“現代貴族の肩肘張らない休日”というフレーズがぴったりな格好をしていて、いつになくおしゃれだ。肉厚で上質な白と青のボーダーTシャツを着て、上から紺色ジャケットを羽織っている。下は細身のデニムで、引き締まった足が目に眩しい。それだけなんだけど、滑らかなダークブラウンの髪を掻き上げ、虹色の貝で彩られた、船柄の腕時計をつけているからか、すごく品の良さが漂ってる。


「私、聞くのが恥ずかしくて……」

「行ってきますとおかえりのキスは毎日してるのに? さっきもしてたよね? 俺の目の前でちゅーって、頬に。というか、一緒に帰ってくるのならしなくてもいいと思うんだけど? 玄関先であれ、急に見せつけられる俺の身にもなって欲しい」

「それに、マリエルさんからのアドバイスで、極力会わないようにしようかなって思って」

「ああっ、だから!? 俺を急に誘ってきたのは!」

「そうなの。今日から私、アレンと必要最低限の会話しかしない!」

「えっ!?」


 ダニエルさんに告白されたあのあと、混乱してマリエルさんに会いに行った。そこで、すごく有益なアドバイスを貰った。


『いーい? メイベルちゃん。思うに、アレンとメイベルちゃんはちょっと距離が近すぎると思うの。顔を見るぐらいで、逃げるのがちょうどいいのよ?』

『そっ、そうなんですね……!? メモります!』

『ふふふ、可愛い~。アレンの焦る顔が見物だわ。少しは懲りたらいいのよ、まったく。腰抜けのへたれんちょなんだから』


 ダニエルさんに告白されたことは伏せ、この間のやり取りをヘンリーに伝える。すると、嘆かわしいと言わんばかりに溜め息を吐いて、首を横に振った。それから、フルーツティーをマドラーで優雅にかき混ぜる。その動きに合わせて、からんころんと氷が涼しげな音を立てた。


「メイベルちゃん……マリエルさんはアレンのことをからかいたいだけだって、絶対に。何かと相性の悪い二人だし」

「でも、私もアレンの妹から脱却したいの。ううん、娘……?」

「まぁ、確かにその必要はあるかもしれないな。毎晩のお祈りを聞いてたら、頭がおかしくなってくるけど」

「ヘンリー? どうしたの? 大丈夫……?」

「多分、大丈夫じゃない……。耳から離れないんだ、最近。暗記してしまいそうで怖い」


 フルーツティーのグラスから手を放し、形の良い額を覆って、テーブルへと肘を突く。そんなポーズでさえも、様になるからすごいなぁ。感心しながらも、私もフルーツティーを飲む。口に入れた瞬間、瑞々しい紅茶とフルーツの香りがふわりと広がった。柔らかい白桃に、冷たい紅茶がたっぷりと染み込んでいて美味しい。


「お、美味しい~。今度、アレンに作ってってお願いしてみようかなぁ」

「じゃあ、俺から頼んでおくよ。避けるんだろ? 今日から」

「あっ! そうだった! で、でも、同じ空間で飲んでると喋りたくなるし、お礼も言いたくなっちゃうし……」

「あー、じゃあ、部屋まで俺が持って行くよ。それでどうかな? って、ああ!?」

「どっ、どうしたの!? ヘンリー」

「だっ、だめだだめだ、俺までメイベルちゃんに何かすべきという下僕精神がすっかり骨まで染み付いてしまっている……!!」

「う、うん。あの、落ち着いて……?」


 わなわなと震え、驚愕の表情で自分の両手を見下ろしている。ど、どうしよう? 大丈夫かな……。戸惑っていると気を取り直し、こほんと咳払いをした。


「まぁ、メイベルちゃんがアレンをこれから避けることは分かった。それで何だっけ? 好みの服を……?」

「そうそう、そうなの! アレン好みの服を買い揃えたくて。ふふふ、どんなのがいいかなぁ~」

「あと、他に何か聞くことは……?」


 ヘンリーが紺色の胸ポケットから、優雅に黒い本革の手帳を取り出し、手帳に差し込まれていた銀色のペンを抜き取った。それから手帳をちゃんとテーブルの上に置いて、書き込んでゆく。す、すごい……。こうして二人だけで出かけるのは初めてだから、今まで知らなかった面も見えてきて楽しい。


「私、フレデリックさんやノアとも、二人だけで出かけてみようかなぁ~。アレンと一緒にいるとその、ついつい話しかけたくなっちゃうし……!!」

「あ~、フレデリックさんはやめておいた方がいいよ。あの人、余計なことしか言わないし、余計なことしかしないから」

「えっ? 仲悪かったっけ? 二人とも。喧嘩でもしたの?」

「まぁ、メイベルちゃんはアレンのことしか見てないからね……。まぁ、いいや。あとは? 何かある? 他に聞いて欲しいこと」

「好みのタイプ!」

「だから、それはメイベルちゃんだって! 何回目だ!? このやり取り」

「いまいち信用出来なくて……」

「う、うーん……まぁ、でも、あいつ、好みが分かりやすいからなぁ。別に今のままでいいと思うけど?」

「分かりやすいって?」

「きゅっ、急に怖くなったね? 目が、目がちょっと怖い……」


 一つ溜め息を吐いて、水滴の浮かんだグラスを見つめる。風も穏やかで、頼んだフルーツティーも美味しい。空もほどよく晴れていて、私好みの綺麗な青空だし。でも、気分が晴れなかった。アレンがいないというだけで、淋しくて落ち込んでしまう。


「ずっとずっと、一緒だったからなぁ……アレンがいないと落ち着かない。辛い」

「多分、アレンの方が辛いと思うよ。さっきからひっきりなしにメッセージがくるから」

「そっ、そうなの!? なんて言ってる!?」


 いつの間にかメモ帳から手を放して、虚ろな目で魔術手帳を見下ろしていた。次々にぺこんぺこんと音を鳴らし、メッセージが入ったことを告げている。


「主にメイベルちゃんの機嫌と……そうだな。メイベルちゃんに今日の晩ご飯、魚介類とトマトのパスタか、鶏肉のトマト煮込みのどっちがいいのか聞いてくれって。あと、もしもメイベルちゃんが熱中症にかかった場合はとか、靴擦れした場合はとか、転んで膝をすりむいた場合はとか、気の滅入ることが沢山書いてある」

「きっ、気が滅入っちゃうの!? 私は嬉しいけどなぁ」

「っそれはメイベルちゃんだからだよ!! ひっきりなしにメッセージ送ってくるし、俺としてはびっしり並んだ文字を見るだけで気が滅入るよ! うんざりなんだよ、もう!!」

「そっ、そうなの? ごめんね……?」

「ああ、ストレスが溜まる……俺とじゃなくてシェラさんとか、ノアあたりを誘えば良かったのに」


 ダークブラウンの髪を心なしかぱさつかせながら、ヘンリーが返事を書き込んでゆく。でも、ノアは大体彼氏さんとのデートで忙しいし、シェラはお酒にしか興味無いし、真っ直ぐな瞳で「お酒が無いところに、あたしは行かない」って言われちゃったし……。そのことを説明すると、魂が抜け出そうなほど、「はあぁ~」と大きく溜め息を吐かれてしまった。


「じゃ、じゃあ、今からでもカイルさんを呼ぼうか?」

「いっ、今から……? でも、向こうにも予定があるだろうし。急に呼んだら、迷惑なんじゃ?」

「私のためならいつでも予定空けるから言ってって、そう言われてるの。それに今日は暇みたいだし。暇だ~って、メッセージがきてるよ? ほら」

「うっ、うーん……カイルさんもカイルさんで分かりやすいなぁ。でも、もしも万が一のことがあったら、嫌だから。我慢するよ、俺……」


 ヘンリーが私の魔術手帳を見て、複雑そうな顔をする。そして顔を伏せ、また大きく溜め息を吐いた。も、申し訳ない……。


「ご、ごめんね? 我慢させちゃって……。でも、心配しなくても大丈夫だよ? カイルさん、弁護士さんなだけあって、頭の回転が速いし、ハリーよりもずっとずっと使えるの」

「つ、つかえる……?」

「うん! 当て馬として最適な男性で」

「当て馬として最適な男性で……」

「本人も遠慮なく使ってくださいって、そう言ってくれてるし。シェラの弟さんなだけあって優しいの」

「善良な一般人に紛れて生きる、マフィアの女ボスみたいな顔してるね? メイベルちゃん……」

「えっ!? どっ、どういうこと!? 怖い顔してるってこと!?」


 びっくりして両手に頬を添えていると、曖昧な微笑みを浮かべてから、フルーツティーを黙って飲み始める。こ、怖い顔。一体、どういう風に? 睨んだりしてなかったんだけどなぁ。頬をもにもにとマッサージしてると、涼しい風が吹いた。もう、夏の盛りをとっくに過ぎているということを、肌で感じ取って少し淋しく思う。運河を見てぼんやりしていると、ヘンリーが口を開いた。


「じゃあ、まぁ、一応、好みのタイプと好みの服を聞いておくよ……」

「ありがとう! あと、どんな女性に惹かれるのかも聞いておいて!」

「いや、好みのタイプだけでいいんじゃ……? ああ、またきた。アレンからメッセージが」

「でも、どんな女性に惹かれるのかっていうのと、タイプの女性はまた少し違うと思う! あと、女性のどういう仕草を見たらドキッとするのかを、」

「アレンもメイベルちゃんも一旦黙ってて!! ああ、もう、止まらないなぁ。二人とも。二人で出かければいいのに」

「ご、ごめんなさい……でも、避けなくちゃいけないから」


 ぺこんぺこんと、鳴り響く魔術手帳を見ていたヘンリーが「はぁ」と溜め息を吐く。するとその時、ズドーン、ズドーンと、地の底から響くような低い音が鳴り始めた。


「あ、ハリーだ。もしもし?」

(ハリーからの電話、あの音に設定してるんだ……)

「ちょっと待てって。落ち着け。今日? 今日はこのまま帰るつもりだけど?」


 ヘンリーが椅子から立ち上がり、テラス席の端の方へと向かう。そのまま川沿いに面したウッドデッキにもたれかかり、困った様子で話し出した。その隙に、追加で何か頼もうと思って、メニュー表を取り出す。


(悪いことしちゃったなぁ、ヘンリーには……次、カタラーナでも食べようかな? 意外とアイスが小さかった)


 キャラメリゼしたバナナとバニラアイスを見て、思わず飛びついて注文しちゃったけど、すごく小さかったから……。「うーん」と唸りながらも、顎に手を当てて考え込んでいると、くたびれた様子のヘンリーが戻ってきた。


「あれだって。これからダニエルさんのお見合い相手の……ええっと、何だっけ? 名前」

「ええっと、確かエレンさん?」

「そうそう。エレンさんが遊びに来るみたいで。何しに来るのかは知らないけど。まぁ、俺にも会いたいみたいだし、帰ろうかな? メイベルちゃんはどうする? 俺と一緒に家帰る?」

「帰る! じゃあ、カタラーナはやめておこうかな~」

「え? 追加で頼む気だったんだ? どれどれ?」


 魔術手帳片手にヘンリーが近付いてきて、私の後ろからメニュー表を覗き込む。美味しそうな焦げ目のついたカタラーナを指差すと、「ああ、これか。はいはい」と呟いた。


「確かこれ、お持ち帰りが出来たはずだけど……。ああ、載ってる載ってる。お持ち帰り出来ますって。じゃあ、ついでにカタラーナとケーキでも買って帰ろうか。エレンさん、甘いものが好きだってそう言ってたし」

「ヘンリーとエレンさんって遠い親戚だったよね? あんまり会ったことないの?」

「ないなぁ~。そういう子はいっぱいいたし。それに親戚が集まる場所でもなんか、家族ぐるみでお付き合いのある取引先とか呼ばれてたし」

「へ~。じゃあ、無理もないね。覚えてないのは」

「だね。まぁ、向こうは俺とダニエルさんのこと、はっきり覚えてるみたいだけど。細いそばかすの女の子がいたような……?」

「ふふふ。多分、それがエレンさんだろうね~」


 二人でそんな会話をしながらケーキを買って帰って、玄関のドアを開ける。すると、アレンが腕を組んで仁王立ちしていた。「ただいま」と言いかけて、思わず動きが止まる。ヘンリーは後ろでがちゃんと、鍵をかけていた。


「た、ただいま。アレン……一体どうしたの? 怒ってる?」

「いや、二人でデートに行くから」

「えっ!? デートだって? 言っておくが、アレン? これっぽっちも甘い雰囲気は漂ってないからな? 主にお前のせいで」

「あ? なんで俺のせいなんだよ? 何かしたか?」

「メイベルちゃん、俺、ケーキしまってくるから。じゃ。お先にー」

「えっ? あっ、うん……」


 白いケーキの箱を片手に、ヘンリーがさっさとリビングに行ってしまった。ど、どうしよう……。避けるって決めたばかりなのに、思いっきり顔を合わせちゃってる。だらだらと冷や汗を掻いていると、「はぁ」と大きく溜め息を吐いた。今日はラフな灰色のポロシャツを着ていて、珍しくエプロンをつけていない。しんと、玄関に気まずい沈黙が落ちる。アレンが首の後ろを掻き、自分の足元を見つめた。


「俺……なんかしたか? お前に。ずっと変だろ、ここ最近。態度が」

「えっ? いや、あの、別に何もしてないけど……?」

「今日だってヘンリーと行くし。俺もついて行くって言ったのに」

「と、特に理由は無くて。たまにはヘンリーとお茶しに行こうかなって、そう思っただけで……」


 また気まずい沈黙が落ちる。顔が見れなくて、白いパンプスの先を見つめていると、アレンが「なぁ」と声をかけてきた。つられて顔を上げてみると、真剣な青い瞳が私のことを見つめていた。耳が熱くなって、鼓動がほんのちょっぴりだけ速くなる。


「本当に本当に何もないか? 怒ってないか?」

「へっ? 別に怒っては……」

「いや、植物園行った時からなんか変だし。……嫌なことしたんじゃないかって、そう悩んでるんだけど? 俺」


 そっ、そっか! 避けてたら私が怒ってると、そう勘違いして……? ぎゅっと、拳を握り締める。変な汗が止まらなかった。別にヘンリーとはただ、お茶を楽しんでいただけなんだけど。


「あ、アレンは別に何も悪くないよ……私が悪いの。ええっと」

「何が? 俺の顔見た瞬間、逃げやがって」

「うっ! ええっと、今、そう! アレンの顔が見たくない気分なの! ずっとずっと一緒にいたし、たまには別の人と行動したいな~! って、そう思ってて!」


 避けることで気まずくなんてなりたくないから、ちゃんと説明した。のにアレンはどうしてか、青い瞳を見開いて硬直していた。ちょうどその時、白いスーツ姿のハリーがリビングから出てきて、膝をついてから腹ばいとなり、「淋しいよおおお~……」とめそめそ泣き出したので、慌ててそっちへ逃げ出す。


「たっ、ただいま! ハリー、どうかしたの!?」

「今のはアレンの物真似ぇ~! 俺がソファーの後ろに隠れてるの知らなくて、ぼそっと淋しいなって呟いてて。魔術手帳開きながらさ」

「えっ!? さ、淋しいってどうして……わぁっ!? ハリー!?」


 いきなりぼんっと、ハリーの茶髪に火がついた。「あちちちち!! あれかな!? 嫉妬の炎かな!?」と叫びながら、ごろごろと寝転がる。振り返ってみると、アレンが真顔でこっちに向かってきていた。お、怒ってる。かなり……。


「あ、アレン? 火をつけるなんて……」

「大丈夫だ。火傷しないよう調整したし、二秒で消えるやつだから」

「こっ、こここここ怖い!! ごめんなちゃいっ! 俺、アレンがリビングで一人たそがれて、どうしてメイベルはヘンリーとって言ってたこと、絶対に言わないから! 口が裂けても、絶対に絶対に言わないからさ!?」

「いっそ、口元が裂ける魔術でも試してやるか」

「怖い怖い怖い! 発想が怖い! 発想が怖いようっ!!」


 アレンがしゃがみ込み、がっとハリーの茶髪頭を掴む。目、目が本気だ。怖い。どうしよう? 初めて見た、こんなアレン。本気で怒ると静かな真顔になっちゃうんだ……。


(でも、素敵かも! じゃなくって、ええっと!)


 アレンが口を開きかけた瞬間、ふと思いついて私もしゃがみ込む。いきなり隣にしゃがみ込んで驚いたのか、こっちを振り返った。青い瞳に私が映ってるような気がした。それぐらい、距離が近い。


「あ、あの……」

「どうした? 口が裂ける魔術なら、試しにかけてみるだけだから」

「ひぃっ! 裂く気満々じゃん、俺の口元! お水が飲めなくなるぅっ!」

「落ち着いて……!? ええっと、そっ、そうだ! じっとしてて、そのまま!」

「あ? うん」


 ハリーの髪を掴んだままのアレンの頬へ、近付いてちゅっとキスをしてみる。青い瞳を限界まで瞠っていた。照れ臭くなって笑いかける。


「ええっと、おかえりなさいのキスがまだだったから……? それで」

「俺の存在って一体何!? 当て馬!?」

「ううん、ハリーは当て馬にすらなれない存在だから。違うよ?」

「根にもたれてるぅーっ!! 善人が根に持つと怖いよう!! ひーんっ」

「……」


 アレンが黙り込み、両手で自分の額を押さえていた。ハリーが「あっ、照れてる! 超照れてる!!」と叫ぶと、立ち上がり、遠慮なくげしっと頭を蹴り飛ばす。


「いだっ!?」

「おい、メイベル。手を洗ってこい、まずは」

「あっ、うん! じゃあ、洗ってくるね~」

「待って待って、俺もおてて洗う……洗ってケーキ食べる!」

「客が来てからだっての! それは。皿は何にするか……迷うな」






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