3.元社畜の持論と人魚になれるプール
「こんなことしてる場合じゃないと思うんだ、俺」
「四つん這いになって、背中乗ってくださいって、そう言ってきたのはハリーさんじゃないですか……はい、姉さん。トス、トス」
「こう?」
「ちょっと違う。あ、空気抜けてきた。入れないと」
プールサイドで四つん這いになった、俺の背中へと腰かけたカイルが、シェヘラザードからビーチボールを受け取って膨らまし始めた。色気もクソもない真っ黒な水着を着たシェヘラザードが、ぼーっとした顔でそれを見てる。熱い。手のひらに触れる地面が、めちゃくちゃ熱くて火傷しそう。あと、地味に膝も擦れて痛いし熱い。
いや、四つん這いになってるせいなんだけど! どっかの邪魔なクソガキが俺を指差して、「あーっ! ママ、見て! あれ! 馬だ!」と言ってきた。ふがふがと鼻を鳴らして威嚇してやろうと思ったが、「さっ! あっちで遊ぼうか!」と言って母親が連れてった。命拾いしたな、クソガキ。
「俺……実はマリエルさんが、他の男と付き合ったのがショックで」
「だから、俺に腰かけて欲しいと……?」
「ハリー、マリエルのこと好きだったの?」
「違う! 恋愛感情は一切無かった!! ただ、蔑むような目で見て欲しかっただけで!」
「分かんない、それ」
「姉さん、分かったら分かったで大問題だから。いいんだよ、それで」
「ん、分かった」
音信不通と言っていたわりには、仲が良い。暑い。陽射しも照りつけてきて暑い。汗が首筋やら鼻から、ぼたぼたと滝のように流れ出てきた。ああ、ここにメイベルちゃんがいてくれたら、水をくれたんだろうなぁ。冷たい水、めちゃくちゃ欲しい。今。熱中症になってしまいそう……。
「いいか? お前ら。俺は、俺はな!? 他の男と付き合ってる女性に踏んでくださいだとか、罵ってくださいとか言えないんだよ!! 非常識じゃん!? 彼女が自分に隠れて、こそこそと他の男踏んづけたり、罵ってたりしたら嫌じゃん!? ショックじゃん!? そういうのはもう、自分だけにして欲しいなって、そう思うだろうし、やめておいた方がいいじゃん!? だから俺はもう、マリエルさんに踏んでくださいってお願い出来ないんだよ……!!」
「意外とまともだった、ハリーさん」
「まとも……かな?」
「うん」
ビーチボールに空気を入れ終えたカイルが、「ほいっ」と言って、シェヘラザードヘボールを投げる。今度は綺麗に打ち返して、それを俺の背中に乗ったカイルが打ち返す。ぽんぽん、ぽんぽんとリズミカルに無気力状態で遊んでいた。悔しい、分かって貰えない!
「だから、だから、跡継ぎはメイベルちゃんにしようと思ってたのに……!! 最近めっきり冷たくなってきて、俺のこと、蹴ったり踏んだり、罵ってくれなくなったんだ……」
「優しいんじゃないですか? それ」
「メイベル、前まではそっと踏んであげてたから……」
「俺……アレンに隠れて、メイベルちゃんにこの社畜野郎! って言われるのが楽しかったのに!! 冷たい、冷たい、メイベルちゃんが冷たいっ!」
「あの、周りに人もいるんで、叫ぶのやめて貰っていいですか? 迷惑になるから」
「ハリー、いつもうるさいよね。視線が辛いから、そろそろやめて欲しい……」
いつになくはきはきと注意されたけど、まったくと言っていいほど響いてこない。違う! 俺が欲しいのは愛ある罵りであって、冷静な注意じゃないんだ!!
「シェラさんには……罵る才能が無い。ときめきがない、あのときめきが得られないっ!」
「いや、あの、弟である俺の前でそういうこと、言わないで欲しいんですけど……?」
「ときめき、あげてなくて良かった……」
シェラさんは一応、ナイスバディの持ち主だが(うっかり鉢合わせして、見たことがある)、いつものーんとした無表情だからか子供に見える。整った美しい顔立ちに、華奢な肩と豊満な胸。それらが全部揃ってるのに、どこか色気を感じさせない。生きてる人間か? ってなる不思議系美女がシェラさんだった。違うんだよな~。よく分からないけど、女性としては見れないし、踏んで欲しいとも思えないんだよな~。
「でも、その点、メイベルちゃんはあのアレンに恋してるからか、最近ますます綺麗になってきたし」
「分かる、メイベル可愛い」
「可愛いですよね。あのそわそわしてる感じとか。今日も俺、二人でプールデートかと思ったんですけど違うし。姉さんはいるし、背中に乗ってくれって頼まれるし。それなのに、あの二人は今頃、イチャイチャしてるんだろうな……」
「ひそかに根に持ってる? メイベルちゃんに騙されたこと」
「ごめん。あたしがいると、来ないかと思って嘘ついて貰った……」
「いや、別にいいんだけどさ……」
でも、このカイル君。メイベルちゃんが今日電話して「空いてますかー? 暑いし、プールにでも行きませんか?」って誘ったら、「行きます!」って即答してたなぁ。その後、肩掛けかばん持ってやって来たカイル君は、出かける用意をしている俺達を見て絶望してた。可哀相だけど、隙あらば感が半端ない。あと、メイベルちゃんもメイベルちゃんで、好きな男以外はどうでもいいって感じだし。
「俺が当て馬になってあげようか? って言ったらなんて言ったと思う? メイベルちゃん……」
「暑いし、プールで泳ぎたいし、視線も気になるし、ちょっともうそろそろ背中から降りても、」
「まだだめ。実験中だから。それでさ~……あっ、ハリーはちょっと違うかな! ごめんね? って、あまり申し訳なさそうじゃない顔で爽やかに断られたんだよね……ただ、ぶっちゃけ興奮した。最高」
「……姉さん、ボール落ちたから拾って」
「ん、どうぞ。ハリーはいつもこんな感じだから、早く慣れた方がいいよ……」
「そうそう、早く慣れた方がいいって! カイル君!」
「そうですか……」
俺の発言に驚いたのか、それまで持ってたボールを落としてた。うける。そもそもの話、俺はメイベルちゃんとアレンのデートを邪魔しに行きたいんだけど。ここで四つん這いになってる場合じゃないような気がするよ、俺。メイベルちゃんに構って貰えないから、デートの邪魔をして、「もう、ハリー? これだから変態社畜は!」って言われたいんだ、蔑むような冷たい目で。
「でも、メイベルちゃんはお金を渡しても受け取ってくれないんだよね……」
「貢いでるんですか?」
「ううん。このお金あげるから罵って欲しいって、壁際まで追い詰めて頼み込んで、受け取れないよ! タダで踏んであげるから! えいっ! って言われて、足を踏んで貰うまでが楽しいんだ。メイベルちゃんに札束握らせて、踏んで貰うのがすごく楽しくてストレス発散になるんだ。ようするに、お金は興奮するアイテム。清らかでピュアなメイベルちゃんに札束握らせて、無理やり足を踏ませるのがすごく楽しくて興奮するんだ……」
「そうですか……すごいですね、何か色々と欲が。あと、メイベルさんの声真似が若干いらつく」
「バカ野郎! 健全だろうが!! キス迫ってるわけじゃないし!!」
「「一体どこが?」」
珍しく二人の声が揃った。暑いし、邪魔しに行きたいし、もうそろそろお馬さんポーズやめようかな?
「ああ……俺、カイル君が代わりになると思ってたのになぁ」
「えっ」
「一応美形だし、椅子にして貰ったら、興奮するかと思ってたけどぜんぜん違った。興奮しなかった、つらい」
「実験、失敗して良かったという安堵感しかないです。今、俺」
「俺は喪失感でいっぱいなのに……?」
「あたしの弟でそういうことするの、やめて欲しい……」
今日はよく喋るな、シェラさん。あれかな? やっぱプールではしゃいでんのかな?
「それにしても羨ましいなぁ、アレンが。あのキュートなえちえち水着を着たメイベルちゃんと、キャッキャうふふとか……あいつ、一体前世でどんな善行をしたんだよ!? その一方で俺は、男を背中に乗せて四つん這いになってるし!!」
「姉さん、泳ぎに行こうか」
「うん。行こっか」
「二人が無視してくる、つらい……!! ああっ、メイベルちゃんとアレンの邪魔をしに行きたいっ!」
「絶対だめ」
「ほら、俺達と泳ぎに行きましょうよ。ハリーさん……」
アレンが私のことを避けてる。こっちを見てくれない。入ったら人魚になれる、水深の深いプールに入って泳いでると、ふちの岩に腰かけたまま、ぼーっと遠くの方を見つめていた。このプールは底の方に岩や、珊瑚があってすごく綺麗。海草まで揺らいでる。水面に上がると、びしゃんと、濡れた髪が音を立てた。ぼうっとしているとは言えど、アレンがすぐに気が付いて、こっちを見下ろしてくる。
「ねぇ、アレン? どうどう? 人魚みたいに泳げてた?」
「あー、うん。泳げてた、泳げてた。……なぁ、メイベル?」
「うん? なぁに、どうしたの?」
「ここってさ、カメラ持ち込み禁止なんだよなぁ~……プールの監視員に、金でも握らせたらいけるかなぁ?」
「……だめだと思うよ。他のお客さんが不安になっちゃうから」
「あああああっ……!! あいつらも連れて来れば良かったなぁ。せっかく、せっかく、メイベルが人魚になって泳いでるのになぁ~、綺麗なのになぁ」
思ってたのとちょっと違う反応だった。しょんぼりと落ち込みながらも、真珠のような光沢がある、ブルーとピンクの鱗が生えた尻尾を動かし、ぱしゃんと水面へ叩き付ける。アレンがそんな私を見て、「可愛い。落ち込んでるメイベルも可愛い~。ごめんな、写真撮ってやれなくて……」と言ってきた。水深が深いからか、ここは十八歳未満は立ち入り禁止で、辺りに人はあまりいない。楽しそうにイチャイチャしてるカップルしかいない……。
「ねぇ、アレン?」
「ん~? どうした?」
「アレンは泳がないの? 一緒に泳ごうよ」
「俺が魚の下半身、生やしてるの見て楽しいか? 楽しくないだろ?」
「でも、一人だと淋し、」
「よし、入るか。ちょっと待ってろ。下がっててくれ」
「うん! 待ってる!」
そっか、早くこうやって頼めば良かったのかもしれない。後ろへと泳いで下がると、アレンが綺麗なフォームを描いて、飛び込んできた。かっこいい! すぐに近付いてみると、「ぶはっ!」と言って水面に顔を出す。夏の太陽がきらきらと、水に濡れたアレンを照らしていた。いつもの黒髪が濡れて、額へと張り付いてる。
「おっ。……なんで俺のだけ、尻尾が真っ赤なんだよ!? ランダムとは言えども誰だよ、こんな色入れたやつ……金魚かよ!」
「で、でも、よく似合ってるけどなぁ。深みのある赤だし、金魚には見えないよ?」
「そうか? でもまぁ、水中に入っちまえば気にならないか……泳ご」
「だね! 泳ごうか!」
「おわっ!? メイベル?」
アレンの肩にとびついて、首に腕を回してみると、苦笑して「おいおい、驚かせるなよ」と言って腕に手を添えてくれた。たの、楽しい! ちょっとはカップル感、出てるかもしれない! アレンがもう逃げれなくなったので、頑張ってたたみかけてみる。
「私、その、胸がもう少しあると良かったんだけど……」
「えっ? あっ、うん?」
「アレンはその、どう思う? シェラもマリエルさんもかなりあるから、ちょっと羨ましくなっちゃって」
「そうだな~……そういや以前、ハリーがどっかから変なお菓子貰ってきて、胸生やしてたぞ。こう、ぼいんってなってて。いやぁ、あれは傑作だったなぁ~。一週間続く呪いだったから、ハリーがしきりにその場でジャンプしてて」
(またハリーの話をし出した……)
照れると饒舌になるタイプなのか、私を背負ったまますいすいと泳いで、しきりにずっと、アラン君が人参を食べられない話だとか、ダニエルさんのフケの話をしていた。ちょっと、ううん、かなり思ってたのと違う時間になっちゃった……。
「よし! 体も温まってきたし、泳ぐか! メイベル!」
「うん……」
「お、どうした? 腹でも減ったのか? ああ、そうだ。さっき、お前が好きそうなキャラメルポップコーンとか、スイカとメロンが乗ったパフェだとか」
「ううん、大丈夫! 今はアレンとこうやって泳いでたいな! でも、その、溺れるのが心配だから、手を繋いで泳いでくれる……?」
「ああ、もちろん。はい」
差し出された手は濡れていて、冷たかった。微笑んで、ぎゅっと握り締めてみると、アレンがどうしてか青い瞳を瞠る。
「ん? どうしたの? アレン」
「……いや。今度、プール来る時は弟連れて行くか」
「弟ってウィルのこと? どうして?」
「精神統一のため、かな……」
「せいしんとういつのため……?」
「よし! 泳ぐか!!」
「わっ!?」
じゃぽんと、急に冷たい水の中へ引きずられた。眼前に広がるのは青い世界。薄く透き通るような緑の海草が揺らぎ、手を伸ばしても触れられない、小魚の大群が前を横切っていく。その中を、アレンと二人で尻尾を動かして泳いでいた。息はちょっとだけ、いつもより長く続く仕様になってるけど、早めに切り上げて水面に顔を出す。
「ぶはっ! た、楽しいね、アレン……!!」
「だな。でも、さっきまで泳いでただろ? さっきと同じ光景見て楽しいか? 飽きないのか?」
「飽きないよ! だって、アレンがいてくれるから!」
「ああ、まぁ、なら良かったけどさ……」
「えっ!? 大丈夫?」
アレンが真顔でぶくぶくと、泡を立てながら沈んでいった。笑ってそれを追いかける。途中から意識させようとか忘れちゃって、夢中で泳いでいた。でも、アレンもすごく楽しそうに笑って、私の顔に水をかけてきたり、水中で追いかけてきたりと、人魚になれるプールを満喫していた。
「アレン! これっ、怖いよ!? かなり高さがあるんだけど!?」
「よし。お前が無理なら今からでも引き返して、」
「あっ、う、ううん……アレンがこう、ぎゅっと後ろから抱き締めてくれると、楽しめそうっ!」
「ならこうか。ごめん、察しが悪くて」
「うっ、ううん……」
アレンが私を膝の上に乗せて、ぎゅっと後ろから抱き締めてくれた。す、スライダー、最高! 楽しい! 途中で体が宙に浮いちゃうレーンもあったけど、楽しめた。
(すっ、すごい……!! アレンにいくらでも抱き締めて貰える!!)
その後も水上バイクに乗って、坂道のようなレーンを登って、いきなり滑り落ちたりするアトラクションにも行ったけど、なんと二人乗りが出来るから、後ろから「わーっ! 怖いよ、アレン~!」と言って、しがみつくことが出来た。でも、ぜんぜん怖くなんてなかったから、演技だってこと、ばれちゃってるかもしれない。止まったバイクのハンドルを握り締め、アレンがこっちを振り返る。
「ごめんな? メイベル。乗りたいって言わなきゃ良かったな……」
「う、ううん! 平気。大丈夫よ、ありがとう……」
ぜんぜんばれてない! 良かった。それから屋台やレストランが立ち並んでいるエリアに二人で行くと、それぞれカキ氷やフランクフルト、カレーやジェラートをいっぱい抱えたハリー達に遭遇して、アレンが回れ右をする。
「おいおい、おいおいっ! ちょっと待てよ、アレン!? 自分だけずぅーっと、ずっとメイベルちゃんとイチャつく気か!? いくら良いことをしたとは言ってもな!? 体が変わってからも、良い思いをし続けるなんてそんなこと、」
「うるっせぇよ、黙れ!! 相変わらず謎なことを言いやがって!」
「メイベルさん、楽しめました? 一緒にご飯食べません?」
「楽しめましたよ~。……食べましょうか!」
「不満そう」
「メイベル、がっかりしてる……?」
「う、ううん。そんなことないよ、シェラ……」
でも、チキンカツと海老フライが乗ったカレーを頼んだあと、アレンに「熱くて食べれないかも~」と言ってみると、真面目な顔をして「そうか! じゃあ、俺が冷まして食わしてやるからな!」と言ってくれて、あーんまでしてくれた。終始、向かいに座ったハリーはぎりぎりと歯軋りをしていたし、カイルは虚ろな目をして、カキ氷をひたすら口に突っ込んでいた。シェヘラザードはビールが飲めてご機嫌らしく、鼻歌を歌っている。
「よし! じゃあ、帰りは俺が運転するよ!」
「やめろ、ハリー。不安要素しかない……事故りでもしたらどうするんだ、メイベルがいるのに」
「俺と姉さんもいますよ、アレンさん。じゃあ、俺が運転しましょうか?」
「いや、今日一日迷惑かけちゃったし、お詫びも兼ねてこの俺が運転を、」
「いや、いいんで。迷惑じゃなかったし、そうですね……どうしても何かしたいのであれば、助手席に座って鳥の数でも数えてください。俺、飛んでいる鳥の数を把握するのが趣味なんですよ」
「弟、適当すぎやしないか? そんなのでこいつが納得するわけ、」
「分かった!」
「するのかよ。まぁ、いいや。お前が運転しないのなら……」
まぶたが重たくて、眠気にぐらんぐらんと頭を揺らされてる。アレンがそんな私の腕を掴んで、後部座席へ乗せてくれた。「鳥の数を数える!」と意気込んでいるハリーは助手席へ、カイルは運転席へ。何故かシェヘラザードは私達を見て、「用事思い出した。バス乗って行ってくる」と言って、そこで一旦お別れ。アレンの肩に頭を乗せながら、両目を閉じる。
(ああ……シェラ、気を使ってくれたのかな? そうだ、おひざ、おひざに乗りたい……)
私が黙って、アレンのお膝へ頭を乗せると、軽く笑って頭を撫でてくれた。アレンのごつごつとした指が、私の細い髪を梳かしてゆく。
「その時ちょっと油断していたんですよ。だから、ソーセージを取られて」
「ええ~? 俺だったら威嚇して追い払うけどなぁ。あっ! でも、どの動物からもご飯を取られたことない! すごいだろ!?」
「ですね。あっちであっちで、動物とは言えども、やばいやつだって認識しているんでしょうかねぇ……」
「だと思う! 俺、強い!」
「強い強い~、強い強い~」
いつもなら会話に参加するのに、アレンはひたすら私の肩に手を添え、たまに頭を撫でてくれたり、持って来た毛布をかけてくれたり、色々とお世話してくれた。期待してしまう、どうしても。
「でも……今日は疲れていて、何も出来なさそう……」
「歯磨き以外なら手伝ってやるが。いや、歯磨きもこう、膝の上に乗せて口を開けて貰えたら出来るか……?」
「っふふ、もう、アレンったら。でも、ありがとう。いつもいつも、私の傍にいてくれて……」
だから、一休みしたらまた頑張ろう。眠りに落ちる寸前、アレンがぽつりと呟いた。
「……まぁ、俺がお前の傍にいたいんだろうな。メイベル」




