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優しい彼女と変人だらけのシェアハウス  作者: 桐城シロウ
第一章 秋に出会って、冬を越す
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3.秋の夜長の温泉と娼婦の微笑み

 



「えっ!? ここって温泉が湧いてるんですか!? あるんですか!?」

「あるある~。元々ほら? ここって保養地だったじゃん。だから」



 濡れた髪を拭きつつ、白いバスローブ姿のヘンリーが苦笑する。いつものリビングで白黒ギンガムチェックのエプロンを着たメイベルは、開いた口が塞がらないといった様子で突っ立っていた。すると、それまで一緒に皿洗いをしていたダニエルが陰鬱な表情で補足する。



「俺の……俺の病弱な体とメンタルをどうにかしようと思った母親の悪足掻きだよ、メイベル……俺は温泉付きなんて掃除も面倒だからいらなかったのに。でもここの建設費用と土地代はあの母親が出すと言い出したから、俺はYes,ma'amとしか言えなかったんだ。それしか許されなかった」

「掃除は俺達がしているじゃないか、ダニエルさん……そろそろ入ってきたらどうだ? 匂うぞ?」



 カーキ色のエプロンを手にしつつ、ダニエルが亡霊のような表情でヘンリーを見つめる。その服装はメイベルと初めて会った時と全く同じ、ずたぼろのデニムと白黒チェックシャツだった。一方のメイベルはそれどころではなく、まだ硬直していた。



「温泉……入りたいです! 私も温泉! えっ、でも一体どこにあるんですか? 見当たらなかったんですけど」

「二階の突き当たりだからね~。メイベルちゃんの部屋は手前だから……」

「じゃあ俺が案内しよう。ついでに一緒に入るか? あだっ!」



 どこからかビール缶が飛んできて、ダニエルの黒髪頭にヒットする。シェヘラザードだった。不愉快そうに眉を顰めつつ、ソファーに座って酒を飲んでいる。



「禁止。メイベルと一緒に入るの……あたしが入る。一緒に入る」

「でもシェラ? 勿論嬉しいし、有難いは有難いんですが……お酒を飲んだ直後に温泉に入ると頭がくらぁってしちゃいますよ? 一人でも入れるので大丈夫です、ありがとうございます!」



 その言葉にダークブルーの瞳を細め、イカの足をしがみつつ頷く。彼女は寒くないのか、黒いタンクトップと短パン姿だった。



「案内されなくてもすぐに分かると思うよ? 廊下の角を曲がって、すぐの所に階段があるからそこを登って入るだけ。夜景が見える所もあるからおすす、」

「夜景!? 外も見れるんですか!? 凄い! あっ、でもプライバシーとかは?」

「大丈夫だ、外からは見えないようになっているから。君の叔父さんのライさんがね、定期的に来て魔術をかけてくれるんだ……」



 彼はそんなこともしているのか。自分が今何をしているのかとか、仕事の話を一切しないから知らなかった。そのことを少しだけ淋しく思う。



「ああっと、じゃあ。私。入ってきますね……おやすみなさい」

「分かるか? メイベル。場所」

「アレン。大丈夫よ、きっと。私、方向音痴とかじゃないし」



 ちょうどトイレから戻ってきたアレンに話しかけられ、心配させないように笑いかける。彼はどうも、目を離した隙に私が交通事故に巻き込まれるとでも思っているのか、こうしてどんなに些細なことでも気にかけてくれるのだ。嬉しい。



 そっぽを向いてアレンが自分の黒髪頭を掻き、「折角温泉がついているんだから入ってこい、お前も」とダニエルに話しかける。照れ隠しだろう、これもきっと。



「ふふっ、じゃあ入ってきまーす。ダニエルさん、ありがとう! お皿洗うのを手伝ってくれて」

「いいや、大丈夫……どーせ俺はそんなことしか出来ない人間だし、メイベル。君みたいな可愛い女の子の手が洗剤で荒れるよりも、ジメジメで陰湿なネガティブ男の手が荒れる方が世界にとっても望ましい、優しい出来事なんだろうさ……!!」

「相変わらず訳の分からないことを言いやがって、お前は。おい! メイベル! 振り向くんじゃない、さっさと行ってこい! その心配そうな善人面をやめろ! だからここの変人どもが甘えてたかってくるんだろうが!!」




 ばたんとドアが閉まり、メイベルが去った後のリビングにてアレンが呟く。



「あれ? でも今って確か……マリエルが入ってるんじゃなかったっけ? あの糞ババア」

「マリエルさんのことを糞ババアだなんて……絶対に本人の前で言うなよ、アレン」

「だからこうして陰口を叩いているんだろうが、性根の曲がった高慢ちきの糞ババアめ。俺だったら金をいくら積まれてもごめんだね。大丈夫かなぁ、メイベル……」



 するとそれまでぼんやりと佇んでいたダニエルが、ゆったりと口を開いて話し出す。



「そう言えば。随分前にも新入りの女の子をいびって追い出していたな……あの子もあの子で中々に性格が良かったんだが」

「本人、人見知りだって言ってだけどな。あーあ、何だってこんな頭のおかしい変人どもしかいねぇんだ、ここは」



 もぐもぐとイカのバター炒めを食べつつ、シェヘラザードは考え込む。マリエルもマリエルで大概いい性格をしているが、アレンだって相当なのになと。



「んぐ、メイベルならきっと大丈夫……マリエルも毒気を抜かれると思う。たぶん」

「多分っておい、シェラ……突入するわけにもいかないしなぁ」

「まぁ、大丈夫だろ。メイベルちゃんなら。多分」

「俺には凄まじく当たりが強いけどね……どーせあんな風に可愛くて純粋でふわっふわとした女の子なら大丈夫なんだろう。優しくして貰えるんだろう、いいなぁ、いいなぁ~……」














 温泉ってどんな感じなんだろう?



(わ~。楽しみだなぁ! よくあるプールみたいな感じになっているのかな? それとも西方式で異国情緒溢れる感じになってるとか?)



 るんるんと鼻歌を歌いつつ、階段を登ってドアを開ける。綺麗なステンドグラス風のドアで、奥の光を通して虹色の影を落としていた。中に入ってみると真っ先に現れたのはバスマットで、ひんやりと濡れている。きっとさっきヘンリーが使ったのだろう。



「ええっと、仕切りがある訳じゃないのね? もうすぐに脱いじゃう感じかぁ……」



 白い壁にフローリング張りの脱衣所はがらんとしていて、洗面台が二つと茶色い木の棚が並んでいた。どうもここに衣類を置いて入るみたいだ。木の籠が置いてある。早速持ってきたタオルと洗面器を置いて、それまで着ていた灰色のトレーナーとデニムを脱ぐ。



(うっ、何だかちょっとだけ緊張しちゃうかも……誰か入ってるみたいだし)



 他にも不倫をしていて離婚されたパン屋さんと、モデルをしている綺麗な男の人がいるみたいだがどうも忙しいらしく、まだ会えていない。アレンによると「メイベルはパン屋の娘と年が近いからな。避けているんじゃないのか?」と言っていたのでちょっとだけ悲しい。



(あっ、あとそうだ。高級娼婦をしているマリエルさんって人もいたなぁ……)



 じっと、綺麗に畳まれたサテン地のネグリジェを見つめて考え込む。それは美しいラベンダー色のネグリジェで、私のくたくたになった部屋着用のトレーナーとは全然違う。頬が少しだけ熱くなってしまった。



(私も私で、何かもうちょっと違う綺麗なやつを買い足さなくちゃな……どうしようかな?)



 ひとまずは温泉に入ろう、そうしよう。持ってきたボディタオルで体を隠しつつ、勇気を出してドアを開ける。途端にむわぁっと白い湯気が立ちこめて、温泉の馥郁(ふくいく)とした香りが漂ってくる。うん、やっぱりこの香りは好きだ。



「わっ、凄い。白い……床が綺麗~」



 温泉に濡れて光っている白いタイル床はどこまでも続いていて、天井のライトがぼんやりと淡い光を放っている。薄暗い中を転ばないように歩きつつ、洗い場を目指す。そこで持ってきたシャンプーで頭を洗っていると、誰かの甘い声が響き渡る。



「そこにいるのは誰かしら? ヘンリー? それとも知らない人?」

「あっ! ええっと、知らない人です! ごめんなさい、自己紹介が出来なくって……!! あっ、痛い! 石鹸の泡が入っちゃったかも……!!」



 しまった、どうしよう?



(私が話しかけたせいだと思われませんように……!! 嫌味に聞こえちゃったかな? 大丈夫かな!?)



 パニックになりつつも、大急ぎで目に入った泡を洗い流す。ふうと一息吐いていると、白い湯気の向こうから少女のような甘い笑い声が聞こえてきた。



「ふふふふ、メイベルちゃんね? その声は。何となく分かったわ、可愛いもの」

「えっ? かっ、可愛い……? あり、ありがとうございます。申し訳ないです、入っているのにこんな……ええっと、後でそちらに行ってちゃんとご挨拶をしますね……!!」



 声が上擦っているような気がする。大丈夫だろうか、変に思われただろうか? そんな風にして戸惑っていると、ちゃぽんとお湯の揺らぐ音が響き渡る。



「大丈夫よ、そう慌てないで? ここは温泉なんだし、ゆっくりと浸かって待っているわ。ねっ? メイベルちゃん?」

「あっ、はい……ええっと、ありがとうございます。手早く済ませちゃいますね!」



 良かった、いい人だった。アレンは物凄く嫌そうな顔をして「高慢ちきの糞ババア。いかにもプライドが高そうな高級娼婦」だと言っていたが、全然そんなことはなかった。いい人だ。



「あらい、洗い終えたのでそちらに行きますね~……」



 こういう時は何て声をかけるのが正解なんだろう? 温泉の熱い湯気に当てられて上手く頭が回らない。おそるおそる湯船へと向かって、ちゃぷちゃぷと波打っている温泉を見下ろす。



「ふふっ、どうぞ? メイベルちゃん。ライさんの……ダニエルさんのお友達の紹介なんですって? お噂はかねがね」

「えっ、ええっと、噂……? とりっ、とりあえず失礼しますね……!!」



 やたらと緊張してしまう。少女のような甘い声はほんの少しだけ掠れていて、円熟した美貌を持つ女性を連想させる。白い湯気の向こうでまた、高級娼婦であるというマリエルがころころと笑う。



「そんなに緊張しなくってもいいのに。いじめたりしないから。ねっ?」

「ええっと、すみません。どうもちょっとだけ人見知りなところがあって、上手く話せないんですよ……ごめんなさい、未熟で」



 しょんぼりと落ち込みつつそう話すと、ぬっと白い腕が現れる。その次に現れたのは宝石のような青い瞳で、黄金を溶かして紡いだかのような金髪を纏めている美女がいた。綺麗だ。思わず見惚れてしまう。



「いいのよ、何歳? 見たところ、アレンと年齢が近そうだけど?」

「ええっと二十五歳です……そう言えば私、皆さんの年齢を知らないです……」



 美しいマリエルはゆったりと微笑んで、顎に白い指を添える。美しい、どの所作も優雅でまるでお伽話のお姫様のようだ。



「そうねぇ~……私もうろ覚えだけど、確か大家のダニエルさんは三十一歳。アレンは二十七歳。ヘンリーもそうね? 確か二十七歳だったと思う。シェヘラザード、あの子は幼く見えるけど三十五歳ね」

「三十五歳!? 全然見えませんでした……!!」

「そして私は永遠の十八歳。まっ、そういうことにしておいて? 実年齢はもっともっと上なんだけどね?」



 マリエルがとろみのあるお湯を自分の肩にかけつつ、愛嬌たっぷりのウインクをする。ぽーっと顔が赤くなってしまって、慌てて自分の手を見つめる。お湯は熱く、冷えた体にじんわりと染み渡ってゆく。



「あっ、ありがとうございます……その、教えて頂いて」

「いいのよ、メイベルちゃん。大変でしょう? 来て何日目?」

「ええっと、四日目です。でもみんな良い人達ばかりで。私、つくづく来て良かったなぁと思います」



 ああ、駄目だ。全然上手く喋れない。綺麗な人だから尚更だ。もう少ししっかりしないと。



「ごめ、ごめんなさい。私。マリエルさんがその、あんまりにも綺麗な人だから思わず緊張しちゃって……すみません、上手く喋れなくて」



 マリエルが青い瞳を瞠って、ふっと妖艶な微笑みを浮かべる。満ち足りたペルシャ猫のような笑みだった、美しい。



「ありがとう、そんな風に褒めてくれて。……下手なお世辞はいらないんだけど。顔も真っ赤だし? まっ、賛辞として受け取っておくわね?」

「お世辞……きっと皆さん、心からの言葉だと思いますけど……」

「メイベルちゃん、いいわね。貴女、とっても綺麗な栗色の髪をしている。可愛い」



 にっこりと微笑んで白い腕を伸ばし、私の零れ落ちた毛先を掬う。絶対に金髪の方が綺麗なのに。



「でも私、マリエルさんみたいな綺麗な金髪に憧れちゃいます……お姫様みたいで綺麗」

「ありがとう、でもそんなに好きじゃないのよ。……昔、ある人に目に痛い色だと言われてしまって。たかだかそんなことで情けないんだけどね」



 淋しそうに笑う。何となく男の人にそう言われたのかなと思い、メイベルは栗色の瞳をまん丸にする。



「きっと眩しいからでしょうね、マリエルさんの金髪が。でも言われたらその、嫌ですよね……」

「そうね、嫌だったわ。あら、ごめんなさい。私ったらついうっかり愚痴ってしまって」

「いえ……その、マリエルさんとずっと喋ってみたかったので嬉しいです。その、私。弟が一人いて」

「あら? 見えなかったわ、てっきり一人っ子かと」

「よくそう言われます……ふふっ」



 ちゃぷんとお湯を揺らして動き、背後に広がっている夜景を眺めた。壁一面に窓ガラスが張られていて、そこから宝石箱をひっくり返したかのような夜景が見える。



「わぁ~……綺麗。ええっとだから私。ずっとずっとお姉さんが欲しくって。だからこんな風に綺麗なお姉さんと話していると声もつい上擦ってしまって、」

「可愛い~、可愛いわ。メイベルちゃん。何だか浄化されてしまいそうよ、私」

「じょうっ、浄化……? ふわっ、わっ」



 上機嫌のマリエルに抱きつかれ、思わず硬直してしまう。ふんわりとダマスクローズのような甘い香りが漂った。白いお肌も吸い付くようなもちもち具合で、何だかふわふわとしていて柔らかい。



「誰かに何か、変なことを言われたらすぐに言うのよ? 私がその子達のお尻を引っぱたいてあげるから。ねっ?」

「だいっ、大丈夫です……ダニエルさんもアレンも優しいから。でも気にかけて下さってありがとうございます……のぼ、のぼせちゃったのであがりますね、私」









「おい、糞ババア……無理を言って引き止めたんじゃないだろうな、お前」

「お黙り、アレン。それに何かしら? 彼女に振られたばかりだからってがつがつしているのかしら? そうね? メイベルちゃんはとっても可愛いもの。貴方が()()気にかける理由もよく分かるんだけど、流石にがつがつし過ぎじゃない? 今からそんなんじゃあっという間に振られるわよ、お気の毒に」




 すらすらと淀みなく紡がれる言葉の数々に、流石のアレンも反論出来なくなったのかむっつりと黙り込んでしまう。のぼせてしまったメイベルは冷たいタオルを額に当て、ソファーに寝転んでいた。しまった、先程着ていたスウェットが暑い。ここに男の人がいなかったら脱いだんだけど。



「大丈夫か? メイベルちゃん。アイス食べる? 苺ミルクアイスだぞー?」

「ありがとう、ヘンリー……でもいいの? 貴方のアイスなのに。貰っちゃって」

「いいよ、勿論。どーぞ」



 ソファーにもたれていたヘンリーがにっこりと笑って、小さいスプーンと赤いカップのアイスをくれる。それを受け取ろうと思った瞬間、ぬっと腕が伸びてきてアイスを奪い取った。アレンだった。顔を顰めつつ、無言でぺりぺりと蓋を剥がす。



「おい、それ。メイベルちゃんに……」

「分かってる。うるさい、黙れ。貴族のボンボンが。ほい、メイベル。スプーンもほい」

「ありがとう、アレン……でもマリエルさんに。その、ババアだなんて悪口を言っちゃ駄目よ? 心配してくれたのは嬉しいんだけど、これはついうっかり、私がのぼせちゃっただけだから……」



 苦笑して見上げると、口をひん曲げてぎゅっと苦虫を噛み潰したような顔となる。アレンは深い溜め息を吐くと、片手をひらひらと振った。



「いい。どーせお前みたいな善人はすぐに嘘を吐くからな。誰のことも責めやしない、誰のことも」

「あら、そんなに私を悪者にしたいの? それともメイベルちゃんの気を引くため? ねぇ?」

「うるせぇよ、マリエル。そんなつもりはない。というか恋愛はもうこりごりだっつの! 寝る、おやすみ」



 荒々しくリビングを出て行って、ばたんとドアを閉める。可憐なネグリジェ姿のマリエルが溜め息を吐き、腕を組んだ。



「つまんないの。もっともっと動揺するかと思ったのになぁ~……」

「ははは……マリエルさんも相変わらずだな。手強い。じゃあ、ええっと。俺はキッチンの隅で泣いているらしい家主さんを回収してくるよ……ちょっと待てって、すすり泣きがわざとらしいなぁ、もう」



 薄暗いキッチンの向こうからダニエルの「うっ……ううっ、どーせどーせ俺は。ううっ……」という声が響いてきたので、慌ててヘンリーがそちらへと向かう。彼も彼で面倒見が良くて優しい。アレンは「あいつ二ートだからな。暇なんだよ」と言っていたが、きっと優しい人なんだろう。



「マリエルさん……ごめんなさい、私が倒れてしまったせいで。アレンがあんな勘違いをしてしまって……ごめんなさい」

「いいのよ、気にしなくって。メイベルちゃんは何も悪くなんてないからね?」



 まるで母のような優しい指が降ってきて、さらりと私の髪を梳かしてくれる。ふわふわと夢見心地でまどろんでいると、マリエルが小さく笑った。



「でも、確かにそうね? あの子が心配になるのも分かるわ……何だか危ういもの。おやすみなさい、メイベルちゃん。アレンを呼びに行ってくるわ。あの子ならきっとちゃんと、貴女を運んでくれるだろうから……」




 声が遠ざかっていって、ドアが開いて閉じる。熱い頭でぼんやりと考えていた。



(危ういって何だろう? 私、どこも危うくなんかないのに……)



 ふっとライ叔父さんの顔が浮かんだ。それを掻き消して両目を閉じる。いくらどんなに頑張ったって無駄なのにな。





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