16.雨の日にはみんなでクッキーを焼きましょう
「あー、だるい。雨の日って何でこんなにだるいんだ……? あと寒い。普通に心が折れる」
「暖房が効いてるだろ、ヘンリー」
「気温じゃなくて気持ち的な問題な? 一歩外に出れば寒いし……」
「出かけてないだろ、お前。買出しも俺とダニエルで行ってるじゃん」
それまでソファーに寝転がっていたパジャマ姿のヘンリー─────寒いのか、上から紺色のニットカーディガンを羽織っていた────が飛び起きて、雑誌を読んでいるアレンに突っかかる。
「さっきから何なの!? お前! 俺を慰めようって気はないのか!?」
「ない。聞くだけ無駄だろ、そんなの」
「もういい! もういいもん! メイベルちゃんに慰めて貰うから! もういいもん!!」
「やめろ。すぐにそうやって甘えんの……」
白いシャツに黒いニットベストを着たアレンが、カモミールティーを飲みつつ雑誌に目を落とす。物凄く気になる記事でもあったのか、ヘンリーのことを見ようとすらしない。ふわふわの白いカーディガンにスカートを履いたメイベルが苦笑し、温かいマグカップを握り締める。今日は土曜日なのに朝から雨で肌寒いから、こうしてみんなでのんびりしているところなんだけど。
「メイベルちゃあ~ん……アレンが冷たいよおおおお~」
「ほら、アレンは忙しいみたいだから……」
「いついかなる時でもお前の愚痴なんて聞きたくない。面倒だ」
「ほらああああ~……あんなこと言うし! あんなこと言うし!!」
「よし、みんなでオセロでもするか?」
「何でだよ、フレデリック。二人用だろ、それは」
「俺とメイベルちゃんでする。以上!」
「誰かこの変態パン屋を摘まみ出せ! 余計なことしか言わねーぞ、こいつ!!」
今日ここにいるのはダニエルとフレデリック、アレンとヘンリーなので。
(喧嘩しかしない……!! ここにマリエルさんとノアがいてくれたら、もうちょっとだけ変わるんだけどな……)
アレンが早速フレデリックと言い争っているし、ヘンリーはアレンの膝に乗って「寒い~、アレンが俺のことを慰めてくれない~」とぐすぐす弱音を吐いている。その様子を眺めていると、キッチンの方からダニエルがやって来た。
「メイベル……大丈夫? 俺と一緒に出かける……?」
「そうだ、家の中にいるからアレンのイライラも増すんだよ! みんなでどっかに出かけようぜ! なっ? なっ?」
「フレデリック、お前とだけは一緒に出かけたくない……留守番な、お前だけな」
「何でだよ! 意味ないやつじゃん、それ! みんなでお出かけの意味! 俺だけ一人残してのお出かけはお出かけって言わない!」
「落ち着け。ちょっと訳が分からなくなってるじゃねーか、お前」
でも、そうか。お出かけか。
「私、今からクッキーでも焼こうかと思ったんだけど……」
「「クッキー!! 食べたい!」」
「何だかんだ言って仲が良いよな、アレンとヘンリーは」
「じゃあ、俺は。ボウルでも洗ってこようかな……どーせそれぐらいしか出来ないし、どーせ」
雨の日はいつも、口当たりが優しいお菓子が食べたくなる。さくさくのクッキーにふわふわのホットケーキ、檸檬の皮を削って入れたパウンドケーキにしっとりとしたフィナンシェ。蜂蜜の香りがふんわりと漂うマドレーヌ。フライパンで炒った胡桃にカシューナッツ、じゃりじゃりと音を立てる茶色いお砂糖。
「ふふっ、こうして誰かと一緒にお菓子を作るのは初めてかも……」
「とは言っても俺、全然よく分からないから薄力粉ふるってるだけだけどな……」
「すごく助かるよ、ありがとう。アレン」
「メイベルちゃん、玉子って何個だったっけ?」
「あ、このレシピ。玉子はいれないんだ~。その代わりにバターを取ってくれない? ヘンリー」
「分かった、バターね。了解」
「室温に戻す必要があるな、それ……」
みんな沢山食べるだろうなと思って、バターを二百グラム、ボウルに入れるとヘンリーとアレンの二人がさぁっと青ざめた。
「そっ、そんなに……? そんなに入れるの? メイベルちゃん!?」
「おい、これはいくらなんでも入れすぎじゃ……」
「いや、こんなもんだって。シェヘラザードとかマリエルさんも食べるんだろうし。多めに作っておいた方がいいだろ」
「みえっ、見えない……洗い物が終わらない……!!」
「えっ、ええっと、持って行きますね! 見せに行きますね!」
慌ててボウルを持ってダニエルの横に立ってみると、何故か青い瞳を歪ませて泣いてしまった。一体、私の何が悪かったんだろう……。
「おい、いいからもう。メイベル。もう少しバター減らして作ろうぜ……」
「でも、百枚以上作った方がいいだろうから……」
「百枚!? いいって、別に! そんなに作らなくても!」
「いやぁ~、お前ら。後で絶対に後悔するぞ……?」
とりあえずカロリーが気になるのか、「せめて百グラムに!」と叫ぶ二人の言う通り百グラムだけにする。それでもその大きさがショックなのか、二人でボウルを見下ろして「俺の拳よりでかい……」とか「もうこんなの、バターでクッキー作ってるも同然じゃん……」と呟く。可愛らしくて、ついつい笑ってしまった。
「湯煎は面倒だから、ちょっとだけレンチンするね……」
「分かった、俺に任せろ。メイベル」
「いや、アレンがやると不安しかないから……俺がやるぞ?」
「あ? てめぇ、パン屋だからって一体何をそんなに偉そうに、」
「えっ、ええっとアレン!? アレンには他にお願いしたいことがあるんだけどな!?」
「メイベル、俺には!? 俺には!?」
「ええっと、ダニエルさんのお手伝いかな……!!」
アレンと一緒に砂糖を計っていると、また青ざめて「えっ、ざらんざらん入れるじゃん……こんなに入れんの?」と呟く。そうか、普段お菓子作りをしないから分からないのか。
「うん。でも、これは甘さ控えめのレシピだから……お店のはもっと入ってると思うよ? 中にはバターとショートニング、両方入れてるところもあるし」
「えっ、えええええ……ちょっとショック。やめようかな、俺。買うの……」
「何で? 美味しいのに~。それにアレンは別に太ってないから……」
「お前はちょっとここ、ぽちゃぽちゃしてきたよな?」
「えっ!? 何で!? 酷い!!」
一応、急な階段を登ったりしてカロリー消費してるんだけど。悪戯っぽく笑うアレンが「ぷにぷに~」と言いつつ、私のほっぺを突いてきたのでその手を掴む。
「もーっ! 本当に!? 本当に!?」
「本当に本当に~。俺がいっつもお前に餌やってるから~、バターたっぷりの~」
「えーっ!? 酷い! もしかして私を太らせる作戦なの!? 酷い、アレンったらもう!」
「おい、なにイチャついてんだよ……!!」
「いってぇな、クソクソパン屋が! 大理石のめん棒で俺の頭を殴るんじゃない!」
「後ろから軽く殴るぐらい、許されてしかるべきだろ!? 何だよ、お前らは!! すぐそうやって目を離した隙にイチャイチャする!」
「してねーし! ヘンリーともするやつだし、これ!!」
「しないだろ、絶対!! この大嘘吐きめ!!」
「するよ、バーカバーカ! 大体な!? お前はな!?」
どうしよう、太ったのかもしれない。自分の頬に両手を当てて、脂肪を確認していると皿を洗い終えたヘンリーがやって来て頭をぽんぽんと撫でてくれる。
「大丈夫、大丈夫。太ってないから、別に」
「ほっ、本当に? ヘンリー? 大丈夫? でも、ヘンリーが優しいからそう言ってくれるだけで」
「いいや……ふとっ、太ってないよ。その、メイベルはいつもかわ、」
「おいっ! ちょっとどうにかしてくれよ、こいつをさ!? 何でお前らはそうやってすーぐ、俺とメイベルのことをくっつけたがるんだよ!?」
「お前の頭が日々おかしくなってるからだろ!? 大体さ!? もう! 好きな女の子うんぬんを通り越しておかんだっての!!」
「ちげーし!! おかんじゃねーし!! 普通に気を使ってるだけだろうが!」
「嘘だーっ! アレンは俺にそんなことしてくれないもん!! 最近ずっとずっとメイベルに張り付いてばっかで」
色々あったが、砂糖とバターと粉を混ぜ合わせてクッキーを作る。オーブンの予熱をしている間、みんなで並んでクッキーの型抜きをした。
「うぉっ、べたべたする……粉足すか」
「元々これ、型抜きレシピじゃないからね……」
「でも、ここまでやったら型抜きがしたい……!!」
「どーせ暇だしな、俺ら」
「ダニエル、ここはもうちょっとそっと扱って……そうそう。うまいうまい」
「むずっ、難しい……途中で折れる……」
大きな星に小さなハート、飛行機に木の形にわんこの形。大小様々な型を並べて選んで、みんなでせっせと抜いてゆく。
「あっ! もう予熱が終わった! どうしよう!?」
「落ち着け、アレン。大丈夫だから、まだ。暫くはそのままだから……」
「あと三個ぐらい、小さなハート型のクッキーが欲しい……!!」
「あと三個? じゃあ手伝うよ、二個」
「俺も……俺は、大きいやつを作ろうかな……」
「わ~、もうふんわり甘い匂いがする~。早く食べた~い」
お菓子作りの醍醐味は、甘い甘い砂糖の香りとバターの香りで指が染まっていくところ。石鹸で洗っても甘い香りは落ちずに、そのままふんわりと残る。型抜きしたクッキーをオーブンに入れたあと、にんまり笑って自分の手の香りを嗅いだ。
「はー……いい香り! 早く焼けないかなぁ~、楽しみだねぇ。アレン」
「だな。でも確かに、自分の指からすっげぇいい香りがする……!!」
「バニラエッセンスの匂いだよな、これって」
「うまそう……もう。早く食いてぇ~」
「何でか、俺の指。焦げ臭い匂いしかしない……」
「さっき、ケーキクーラーに残ってた欠片を取ったからじゃないか? 焦げてただろ、あれ」
「うん……」
そのまま何となくオーブンを眺めて、ちょっとだけ黙った後にリビングへと移動する。前を歩くアレンがそれまで着ていたエプロンをテーブルに投げ捨て、どさっとソファーに寝そべった。
「あ~、意外と疲れた。案外神経使った……」
「隙ありーっ! ていっ!」
「うおおおっ!? やんのか!? ヘンリー! お貴族様には負けねぇぞ、俺! あっ」
「またアレンが言ったああああああ~……でも、よく考えたら俺もそろそろ克服、いや、絶対に無理だ!! 無理!! 大体貴族の連中どもが社会にとって悪影響しか及ぼさないのは歴史を見ればよく分かることなのに、それなのに若い女でも男でも、いや老若男女問わずに貴族というシンボルに憧れを募らせるのは世界三大不思議の一つだあああああっ!! あいつらはゴキブリの皮を被った蛆虫同然の存在なんだ!! それなのに一体どうしてさも当然のような顔をして、この国の政治を動かしているんだ!? どいつもこいつも腐ってやがる!! はぁっ、はぁっ……」
「相変わらず滑舌がいいね、ヘンリー……」
「流石は変態善人女子。どんなやつの欠点でも長所に変えやがる……!!」
アレンが真剣な顔で呟いている間中ずっと、ヘンリーはアレンの腰にしがみついてめそめそと泣いていた。プロレスごっこをする気分じゃないみたい……。
「あの? ヘンリー? クッキーが焼き上がるまで時間があるから、」
「いいか? メイベルちゃん……ちょっとでも身のこなしが優雅で貴族み溢れる人間がいたら、木の上に登って逃げるんだぞ……? あいつらは害悪だ。若者の思想に悪影響しか与えない……!! そうだ、メイベルちゃんもアンティークが好きだとか何とか言っていたが、それも真夜中に忍び込んでくる貴族によって洗脳されているだけで、」
「おい、ヘンリー……俺の上から退けよ。邪魔」
「こうなったら中々落ち着かないからな~。メイベルちゃん、珈琲でも淹れてあげよっか?」
「お願いします、フレデリックさん」
「俺もメイベルと一緒に珈琲飲む……」
みんなでのんびり珈琲を飲んで喧嘩したり、喋ったりしているとオーブンから音が鳴る。焼けたみたいだ。全員でソファーから立ち上がって向おうとしたからか、「おい、退けよ! 邪魔!!」とか「は? 大体な? お前な? 俺はお前のかなり年上なんだからな!?」といった小競り合いが発生してしまう。
「あーあ、どうしようもないな。あいつら……ダニエルさん、メイベルちゃん。見に行こっか?」
「そうだね、ヘンリー……」
「アレンとフレデリックは、何であんなに仲が悪いんだろ……?」
三人で焼き上がったクッキーを並べつつ、笑い合ってつまみ食いをしていると慌ててやって来た。
「俺も! 俺も食うっ! 俺も食うから、それっ!」
「喧嘩してるからって、置いていかないで欲しい……!! 淋しいじゃないか!」
「はい、どうぞ。アレン。美味しく焼き上がったよ~。ありがとう、手伝ってくれて」
「ん、ありがとう。わっ、うまっ」
「いや、だから何で隙あらばイチャつくんだよ……?」
「ナチュラルにイチャつかれて、もうこの空間にいるの、この二人だけなのかな? って錯覚しちゃう……」
「シェアハウスの風紀が乱れるからやめて欲しい……恋愛禁止にする……」
「何でだよ。今のはその、こいつが差し出してきたから食っただけで……」
しまった。つい、弟にする感覚でしてしまった。さくさくと温かいクッキーを食べつつ、謝る。
「むぐ、ごめんね? アレン……いっつも家では弟にあーんしてあげたりとか、頭を撫でたりとか、膝枕もしてるからつい……」
「えええええ……? 仲が良いって言うか、絶対シスコンじゃん。それ。弟……」
「そうかな……ウィルにはいつも、怒られてばっかりだけどね……」
「何て言って怒られんの? メイベルちゃん」
「えーっと、夜一人で歩くなとか。男性とお酒を飲みに行くなとか。出かける予定があるのなら、あらかじめ俺にちゃんと言っておいて欲しかったとか」
「うわっ、シスコンの匂いしかしない……」
「うーん、だな。こればっかりはアレンに同意だな、流石の俺も……」
シスコン。どちらかと言うと、私がブラコンのような気がするけど。クッキーをもさもさと立って食べているアレンを見つめると、たじろいで「なっ、何だ? 何をさせたいんだ? 俺に」と言う。
「っふ、違うの。そうじゃなくて、アレンとウィルの雰囲気が少しだけ似てるなって……もちろん、髪の色とか目の色とかは違うんだけどね?」
「へー、じゃあ性格悪そうだな……」
「おい、ヘンリー。てめぇ……後で蹴ってやろうか、お前」
「ウィルもアレンも悪くないよ……二人とも可愛いよ……」
「可愛い? あれが? 弟ならまだしもあれが……?」
「フレデリックさん、指を差しちゃ駄目です……!!」
「そっか……メイベルの目には、そう映っているんだね……」
ダニエルもフレデリックも、そして何故かヘンリーもアレンも落ち込んでもそもそとクッキーを黙って食べる。ああ、ついうっかり私があーんしちゃったからだ……。
「ごっ、ごめんね? マグカップ持ってたし、アレン……」
「片手は空いてたよ、メイベルちゃん」
「そっ、そうだよね? ヘンリー、ごめんね……」
「ヘンリーじゃなくておじさんに謝るべきだと思うんだ、メイベルちゃん……」
「やめろ……寄ってたかって面倒臭いことを言うんじゃない、お前ら」
「アレン、アレンは俺に謝るべきだと思う……」
「何で!?」
「そう……それで貴方達は結局、五十枚以上あったクッキーを全部食べたと。そういうことなのね……?」
「ごっ、ごめんなさい。マリエルさん……その、私が席を外している間に、みんなで全部食べちゃったみたいで」
「いいのよ、メイベルちゃんは何も悪くないから。悪いのはこいつらでしょう?」
マリエルが威圧感のある笑顔で、横一列に並んだアレンとヘンリーとフレデリックを見つめる。全員「俺達は何も悪くありません」という顔をしていたし、「食べようと言ったのはこいつ」とお互いに罪を擦り付け合っていた。クッキーを守りきれかったダニエルがめそめそと泣き、私の肩にしがみつく。
「ごめん、ごめん、メイベル……守れなかった、俺。クッキー……」
「だっ、大丈夫ですよ……でも、ごめんなさい。やっぱり百枚以上焼くべきでしたよね……」
「うまかったんだ。すぐに溶けて消えて無くなるのが悪い!」
「アレンが最初、何も考えずにばくばくと食べていて。でも、よく考えたら五十枚じゃ足りなくて……」
「だから言っただろ? お前ら。百枚の方がいいって。百枚でも、十人で分けたら一人十枚しか食べれないんだからな……」
結局、誰が最初に「全部残さずに食べよう」と言い出したのか。それを聞くとアレンは真顔で「フレデリック」と言うし、フレデリックは「ヘンリー」と言うし、ヘンリーは「アレン」と言う。よく分からない……。混乱していると、マリエルが深い溜め息を吐いた。
「あのね? 貴方達何歳? 他の人達のためにクッキーすら残せないの?」
「いや、だから。俺は残そうと思ったのに、フレデリックが全部食っちまおうぜって言うから……」
「俺はいい年だし、ヘンリーを止めたんだけど。みんなでやれば怖くないとか言い出して……」
「アレンがフレデリックさんのせいにして、俺達だけで食っちまおうぜって言い出して……」
「いい加減にしなさい、三人とも……」
「「はい……」」
「いや、だから。俺は流石にこの年にもなってそんなことはしないから……」
肩にしがみついているダニエルに「分かりますか? 真犯人」と聞いてみたところ、「みんなで徐々に貪り食ってた……」と返ってきた。そのあとまた悲しそうに泣き出して、後ろからぎゅっと私を抱き締める。
「ダニエルさん、もう一度一緒に作りませんか? 私と! どうしてもマリエルさんとノアと、ハリーとシェラにも食べて欲しくって……」
「うん、手伝うよ。俺……」
「じゃあ、私も……」
「いいえ、大丈夫ですよ? 疲れているでしょう? マリエルさん。あっ、でもダニエルさんも疲れて、」
「大丈夫……元気いっぱいだから俺、大丈夫……!!」
喋っている間中、三人はずっと無言だった。マリエルがそれを見て満面の笑みを浮かべ、親指でぐっとソファーを差し示し「ちょっと来なさい。こっちに。貴方達に常識と思いやりというものを叩き込んであげる」と宣言した。ちょっとは罪の意識があるのか、三人は売られてゆく子牛のように項垂れてとぼとぼとソファーへ向かった。
それを見たあと、ダニエルに笑いかけるとダニエルも少しだけ笑ってくれる。
「それじゃあ、クッキー作りましょうか! ダニエルさん!」
「うん、作ろうね……俺、型抜き全部するよ。さっきは上手くいったから……次は失敗しちゃうかもしれないけど」
「大丈夫ですよ~。一緒にしましょう? せっかくですから! それにちょっと、歪な方が手作り感あって美味しいです……より美味しく感じるような気がします!」
「そうだね……お店のとはまた違って、美味しいよね……自分で作ったやつ」
ダニエルもクッキーを守れなかった落ち込みから回復し、楽しく二人で作ってゆく。何気なく「みんなで作るのも楽しいけど、ダニエルさんと作るのも楽しいです! また私と一緒に作ってくれますか……?」と聞いてみると、ぷるぷる震えて真っ赤な顔になっていた。そのあと、こくこくと激しく頷いてくれたのでほっとする。
「……という訳なの。ノア。美味しい?」
「はー、そんな馬鹿みたいな出来事があったんだね……結局、誰が先に食べようって言い出したの?」
「だからフレデリックだって」
「アレン。唆してきた」
「ヘンリー。いっつも優等生顔してるけど、ヘンリー」
「まっ、いいわ。貴方達はクッキー無しだからね?」
「「「ええええええっ!?」」」
「逆にどうして食べれると思ってたんだろ……メイベルちゃん、ダニエルさん。美味しいよ、ありがとう」




