〇第五話 慟哭海峡の動乱・急
序破急の三篇、完結です。お待たせいたしました。
「ミュンヘルさん!ドリッケンさん!」
「んん?マイケル、ヒルドン、どうしたんだ、そんな息を切らして。」
「…ついてきているのは、異国の者か。マイケル、ヒルドン、どういう了見だ。」
カルナック大陸橋の反対側。同じように設えられた関所には、同じように二人の門番がいた。
違うのは、マンテリア側が両方人間であったのに対し、こちらは片方が額に二本の角をもち、背中に竜の翼をもつ、大柄な人間のような風貌の男―翼人族の一種、ドラグーン―なことか。
「我が国ではよほどの事情がない限り、異国の者は通していないことを知っているだろう。それをわざわざ持ち場を離れて、異国の者を引き連れて何のつもりだ。」
ドラグーン―ドリッケンは厳しい口調でマンテリアの門番を責めた。
が、当の二人はその言葉がほとんど耳に入っていないようだった。
息を整え、マンテリアの門番の一人―マイケルが話し出す。
「俺達、嵌められたんだよ!あの日、ユリウスの広間で、両方の使節を殺した奴がいたんだ!」
「おいおい、何言ってるんだ。俺ら、揃ってあの日、通ったやつは誰もいないって言ったじゃねえか。」
バニーゲン側のもう一人の門番、ミュンヘルが答えるが、それにも被せるようにヒルドンが話し出す。
「いたんだよ!あの日、マンテリア側に橋を渡って出て行った奴が!紫魔法で、その記憶に蓋をされちまってたんだ!」
「ねえ、ミュンヘルさん、あなたもおかしいと思ってはずです!俺ら四人揃って真面目に仕事してたはずなのに、あの日の記憶があやふやなのは何でかって!」
「確かに、あの日のことを全部思い出せっていわれると、こう…なんかつっかかるもんがあるのは事実だが…。」
「…マイケル、ヒルドン。お前達はなぜそれを思い出せた?奥にいる異国の者の力か?」
「ああ、そうだよ!この方々が、俺達の魔法を解いてくれたんだ。」
「モニカさん…でしたよね、すいません、この二人はあの時橋を双方守ってたやつらです。もしあの時、使節の方を殺したのがバニーゲンからきてるなら、たぶんこの二人も…。」
モニカは言われ、マイケルとヒルドンの一歩前に出た。
「…はじめまして。ウィンデリアの、モニカといいますぅ。その、そういった事情ですので、お二人も同じ魔法がかかっているか、確認と解除を、させていただいても、よろしいですか?」
「…わかった、頼む。」「構わん。」
ミュンヘルとドリッケンは、大人しくモニカの魔法にかかることを選んだ。
-1-
―結果は、同じだった。バニーゲン側の兵にも同じ【認識阻害】がかかっており、当時の見たもの、聞いたものの認識が改ざんされていた。
当時の記憶を取り戻したミュンヘルは、あの日使節が殺される時間の数十分前、こちら側から橋に入った者を確かに見ていた。その風貌は、マイケルとヒルドンが見たものと同じものだった。
魔法の解除を終えたモニカは、静かにドリッケンへ向き直る。
「ドリッケンさん。」
「何だ。」
「貴方、一部始終記憶が、ありましたね?」
モニカの言葉に、その場の全員が驚いた。門番である三人は、ルシエとユリアンの倍驚いている。
「おいおいドリッケン、マジかよ?お前、あの日のこと覚えてたのか?」
「なんで言ってくれなかったんですか、ドリッケンさん!もし言ってくれれば…!」
ドリッケンに詰め寄る二人を、モニカが優しく制する。
「この方は、【認識阻害】の効果が、薄くなっていました。おそらく、魔法の効果が、あまり発揮されなかったのでしょう。全て覚えている、というわけではないと思いますが、自分の見たものと覚えているものに、食い違いを感じておられたと、思います。」
「でも、なんでドリッケンさんだけ?ドリッケンさんにだけ、手抜いてたってことですか?」
「…それは、おそらく…。」
口ごもるモニカに、ドリッケンが少し恐縮したような顔で割って入る。
「気を使ってもらわなくてもよい。…俺はマナ適性が「D」しかないからな。かかりが悪かったんだろう。」
マナ適性には、より強力な魔法を扱えるようにするといったもののほかに、もう一つの側面がある。それは「相手からの魔法のかかりやすさ―魔法耐性」である。
マナ適性はマナをどれだけ効率よく扱えるか、言い換えるとどれだけマナに影響を与えやすいかといったものを表した指標である。
この関係は相互関係にあり、マナ適性が高い者はそれだけマナからの影響を受けやすい。
マナ適性が高い者ほど、相手から受ける魔法もより強く受けてしまうのである。
そのため、相手から受ける魔法に対する耐性の高さ―魔法耐性は、適性が低いものほど高くなる。
Dランクの適性にもなるとAランクの30%ほどしか効果を受けず、魔法使いに対してはかえって脅威となりうるのである。
事実、低ランクでも迫害を受けず、きちんと教育を受ける事ができ、体躯に恵まれた者は屈強な戦士になることが多い。
「そうだったんか…。それでだんまりを?」
ミュンヘルの言葉に、ドリッケンは首を横に振る。
「そんな理由で、真実を隠しても意味はない。俺があの時、その違和感を言わなかったのは自信がもてなかったというのもあるが、二つ理由がある。」
「ひとつ。使節が殺される前から、わが国ではすでに雪の国への攻撃作戦が進められていた。我が王オクタヴィアヌスは果断即決、一度決めるとほとんど方針を変えない覚悟の人だ。使節が殺された事に何等か違和感を抱いていたとしても、作戦は続行されただろう。」
「もうひとつ。正直に話し、橋を徹底的に探られれば…隠していたものが見つかってしまうかもしれないからだ。」
「隠してる?ドリッケン、お前この期に及んでまだ何か隠してるのか?」
ドリッケンはミュンヘルの言葉に頷き、ルシエ達一行を見る。
「そなた達の名前と、どこから来たかを教えてもらえるか。」
「全員ウィンデリアよ。私はルシエ。こっちはユリアンに、モニカ。」
ドリッケンは、そうか、と深く頷き
「風の国の者よ、そなた達のような者が現れるのを待っていた。―ついてきてくれ、見せたいものがある。」
そう言うと、一行を関所の中へと案内していったのだった。
「おいおいドリッケン、関所ン中に何か隠してやがったのか?」
「そうだ。…我が国では死者、特に戦士の死者は火山の火口に投げ込み、我らが火龍様に英霊としてささげる習わしだ。当然、死体は炭も残らぬ。」
「…まさか。」
ルシエ含む、一課一行はその言葉の意味に気づいた。その声に、ドリッケンも静かに頷きつつ、砦の床石を外していく。
「その習わしを忌避したことはない。だが今回に限っては、両方いなくなっては証拠がなくなってしまう。無くなれば真実を知る機会が失われてしまう。―だから、我が国が遣わせた使節の片方の遺体を、隠しておいたのだ。」
そこにあったのは、バニーゲン風の正装に身を包んだ、人間の死体であった。
少々干からびはじめているが、状態はむしろ良い方であった。
「我が国の砂で包んである。【腐敗防止】はないが…これで役に立てるだろうか?」
モニカは死体に駆け寄り、死体の状態を見て嬉しそうに言った。
「素晴らしいです、状態も悪くありません。ルシエさん、これなら、いけるかもしれません。」
「礼を言うわ、ドラグーンの人。確かにこれなら…欠けてたピースが埋まるかもしれない。」
そう言うと、モニカとルシエは検査魔機を広げ、検死の準備を始めた。
その様子をミュンヘルが怪訝そうに見つめる。
「ミイラになり始めた死体で、何しようってんだ?」
「検死です。バニーゲン側の死体が残っていたのはまさに僥倖でした。これなら戦争を止めるための材料が揃うかもしれません。」
「そうなのか?こっち側の死体だけ調べても、あんまり意味ねえんじゃ…。」
「バニーゲン側だけであれば、そうかもしれません。でも僕達はスノンベールでも調査を行ってきました。そこでいくつかの情報を得ているのですが、決定打に欠けていたのです。」
「その決定打ってのが、死体にあるのか?」
ユリアンは頷く。
「調べてみなければわかりませんが。でも、二人の様子なら期待はできそうです。」
―結果。
「…ユリアンさん!ルシエさん!出ました!適合率89%、およそ一致しているといって、差し支えない数値です!」
「へえ…。」
「やりましたね。これで証拠は揃ったといってよいでしょう。」
モニカは嬉しそうに声を上げた。その両手にしかと掴まれているのは、昨日スノンベールで得た血液情報が記録された、ルシエが改造した検査魔機だ。
更に、ここでユリアンの携帯電話が鳴った。
「…ヘルマンさんですね。はい、ユリアンです。いかがでしたか?」
『ああ、出たぞ。適合率94%、あの傷はアインガリア製の魔機でつけられたものと見て間違いない。後で得られたデータを送ろう。』
「ありがとうございます。こちらも今カルナック大陸橋に着いたところです。」
『流石に早いな。これから死体があるかを探すところか。』
見えるはずもないが、ユリアンは笑ってかぶりをふった。
「いえ、陸橋の門番の方が、バニーゲンの使節の死体を匿っておられました。」
『なんと!それは僥倖だな。結果はどうだった?』
「たった今検査の結果が出たところです。適合率89%。使節を殺した犯人は、間違いなくアインガリアの人間でしょう。」
ユリアンがそう報告する声を聞いて、門番達は驚いた。
「アインガリアが!?なんだって、そんなことを…!」
「山の国でも、雪の国でもねえのか?そのアインガリアってのは、何なんだ?」
「スノンベールの東にある、周りの国に戦争ばかりふっかけてる国ですよ。俺達の国とスノンベールとも、何十年も小競り合いをしてるんです。」
ミュンヘルとマンテリアの兵がやり取りを交わす中、ユリアンはヘルマンへの報告を続けている。
「…はい、以上が経緯です。得た情報は後程こちらからもスノンベールに提供します。」
『わかった。少なくとも、これで戦争を起こそうとしているのは我が国でも、バニーゲンでもないことはわかるだろう。』
「スノンベール側は矛を収められるでしょうか?」
『言っただろう、矛を収める準備はあると。後はこちらの仕事だ。お前が気にするところではない。』
「そうですね、出過ぎた真似でした。…ええ、はい。では、また後で。」
電話を終え、皆に向き直るユリアン。皆の顔には、希望と一抹の不安が浮かんでいる。
「戦争は、止められるんですか?」
「まだ完全ではありません。半分は止められる、といったところでしょう。」
「…我が国も、矛を収めねばならない、という事だな。」
ドリッケンは静かに口を開いた。そして、関所の別の部屋に引っ込んだかと思うと、一枚の書類を用意して戻ってきた。
「そなた達にこれを託すことにする。」
「…これは?」
「王都キル・ウィールの通行許可証だ。王都はバニーゲンの中でも更に堅固な街。通行証がなければ、例え我が国の臣民であっても立ち入ることはできん。」
ユリアンは書類を受け取り、大切にカバンにしまう。
「感謝します、ドリッケンさん。これだけでなく、あなたは最後のピースを守ってくださっていた。これがなければ、戦争は回避できなかったことでしょう。」
「…俺のしたことは、本来許されるものではない。反逆者としてキル・ウィリアの火口に投げ込まれてもおかしくはない。」
ドリッケンの瞳には覚悟が宿っていた。
例え自分が罰せられることになろうとも―それでも。
「…それでも、友が血を流し倒れていくよりは、ずっと良い。」
「ドリッケン…。」
自分の命運を賭して、戦争を回避するため真実を隠していたドリッケン。
ミュンヘルはそんな同僚を見て何かを感じ、一課一行に向き直る。
「おたくら、今晩の宿はねえんだろ?俺の故郷の村がこの近くにある。今晩泊められるよう、村に話を付けてやるよ。」
「それは有難い。この国では、宿を探すのも一苦労でしょうからね。」
「なぁに、おたくらに暑さにくたばられちゃ、俺達も困るってだけだ。」
―夕闇が、次第に濃さを増していく。
遠くにはまるでおさまった壺から舌を伸ばす蛇のごとく、チロチロと赤い炎が飛び出している。
炎の地獄と呼ばれたこの国で、佳境の時は始まろうとしていた。
-2-
翌日。バニーゲンの首都、王都キル・ウィール。
"邪龍の寝床"と呼ばれるキル・ウィリア活火山のふもとにあるこの街は、文字通り灼けるような熱気に包まれている。
その町の中心部にある王宮にある、玉座の間。
スノンベールで得た書と、陸橋で得た通行証が功を奏し、特例でオクタヴィアヌス王と謁見が叶い、一課一行は王の到着を待っていた。
一行のうち、ルシエとモニカは臨戦態勢でいる。
ルシエは魔機の鎧を、モニカは…特注の白衣を着ている。なぜだか袖がかなり余っているが、これは意味があるのだろうか。
そして。
「オクタヴィアヌス王の―お成りであるッ!!」
脇から数名の侍従と共に、ゆっくりと一人のドラグーンが現れた。
流れるような金髪に、蒼く輝く瞳。金髪の美丈夫といっていいそれは、しかし全身を黒く赤い鎧に身を固めている。
そして何よりもその瞳と姿から放たれる、周囲を焼き殺さんばかりの強烈なプレッシャーが、この者がこの国の王であると知らしめてくる。
そんなオクタヴィアヌス王は、玉座につき、静かに、しかし重々しく口を開いた。
「風の国から来た、氷の国の遣いとは、そなたらのことか。」
「はっ。この度はお目通り叶いましたこと、誠に恐悦至極に存じます。」
ユリアンは三人の先頭にて跪いている。交渉は自分が受け持ちます―彼は王都に着く前、そう宣言していた。
「要件は何だ。」
「は。此度、慟哭海峡にて起こっている動乱を鎮めるため、炎の国も海峡から手を引いて頂きたく、参じました。」
「ほう。」
オクタヴィアヌス王は、眉根をぴくりと動かせるだけにとどまった。
「あの海峡の動乱を知っているなら、我が方にも死者が出ていることも知っているだろう。貴様は、それを知ってなお、我が国に手を引けと申すのか。」
「死者が出ておりますのは雪の国も同じにございます。それでもなお、雪の国は貴国との戦争を回避する道を選ばれました。」
ユリアンは顔を上げる。
「名君と名高きオクタヴィアヌス王は、よもや戦意のない者共に手をかけるなどといった愚行はなさいますまい。」
「貴様!王を侮辱するか!」
「善い。」
近衛兵の一人がいきり立つのを、オクタヴィアヌス王はぴしゃりと止める。
オクタヴィアヌス王の瞳に、覇気以外の何かが宿り始めた。
「子犬、雪の国は矛を収めたと申したな。」
「は。確かに。」
「それは何故か。雪の国は自国の民が他国の民に傷つけられても黙っている、軟弱な国だとでもいうつもりか。」
「王、それは異なります。かの国は真実を知ったのです。かの国は軟弱な国などでは決してありませんが、要らぬ争いをするほど愚かな国でもございません。」
「ほう、真実とな。」
オクタヴィアヌス王の、覇気以外の何かが強まった。
―これは興味だ。ユリアンは、彼の興味を引きつつあった。
「申せ。雪の国が知った真実とは何だ?」
「この動乱を、背後で糸を引いていた者共の存在でございます。」
「何?」
「無礼を承知で申し上げます。―この国は、謀られております。」
先ほどよりも複数の近衛がいきりたつ。
それを、オクタヴィアヌスはまたも制止する。
「控えよ。余が善いというならば善い。―謀られていると言ったな。では、その者共は何か?」
「雪の国のある、寒く大きな山のその向こう、砂塵と荒れ地に囲まれた"鉄の国"の者共でございます。」
鉄の国、という言葉に、周囲はどよめく。
バニーゲンとアインガリアは、スノンベール、マンテリアを挟んで丁度対極に位置する国である。
元々他国との交流が少ないバニーゲンは、その国民のほとんどがあの山の向こうにも国があることを知らない。
ただ、この場においてはオクタヴィアヌス王だけは違った。
「…伝承には聞いたことがある。吹雪の山の向こうに、魔神が治める国があると。だがその国の者が、何故雪の国と、わが国を謀る?」
「かの国の真意は、この子犬にはわかりません。ですが、かの国は現在でも雪の国と山の国を相手に、終わりも知らぬ闘争を続けております。ここで雪の国が貴国とも戦いを始めれば、その分鉄の国へ割く戦力は減り、鉄の国にとっては闘争を優位に進められましょう。」
「鉄の国に、わが国を謀る理由があることはわかった。だが、鉄の国が謀ったという証拠はあるのか?」
ユリアンはルシエとモニカに目配せをし、スノンベールで得た、使節を殺した武器がアインガリアのものである証拠、そして同じ武器で使節が全員殺されたことを示す証拠を提示した。
「―これは我らが雪の国と、大陸橋で得た証拠をまとめたものにございます。これをご覧頂ければ、鉄の国が此度の動乱の裏で糸を引いていたことが、お分かりいただけるかと。」
オクタヴィアヌス王は側近に指示し、二つの証拠を受け取り、目を通す。
隅々まで目を通し、二つ目の証拠―使節の傷跡から得られた血液情報―に目を落とし、尋ねる。
「子犬、貴様我が国の遣いの死体を、どうやって手に入れた。」
「は。陸橋にて門番をされている方より、提供頂いたものを調べさせて頂きました。」
「橋に我が国の遣いの死体があっただと?―おい、それは誠か。」
オクタヴィアヌス王は側近に尋ねる。
「は、恐れながら誠と存じます。かの橋から我が国に帰ってきた死体はひとつでございました。」
「たわけ。何故死体が足りないことを報告しなかった。」
「門番からの報告では、我が国の遣いの死体は一つだけであり、海に捨てられ、渦に呑まれて消えたのではないかとの内容でありました故。」
「それでは遣いを全て海に捨てねば道理が合わぬではないか、阿呆。…まあ、それはこの際善い。」
「申し訳ございませぬ。」
オクタヴィアヌス王は証拠に目を通し終え、側近に預けてこう言った。
「不十分である。これでは鉄の国が確実に関与しているという、明確な証拠にはならぬ。」
「は。我らの力及ばず、王に満足頂ける証拠を提示できなかったこと、痛恨の極みにございます。」
「だが。」
オクタヴィアヌス王の瞳がきらりと光る。
「これらの証拠にも、その口が申す事にも偽りがあるとは思えぬ。よって、不足な証拠をもって余の前に現れた罪は、その誠実と、何より余を前にして一歩も退かぬその覚悟をもって赦すこととする。」
「ははっ。寛大なご処置、誠に有難く存じます。」
「だが、これでは方針を変えることは出来ぬ。一度振りかざした矛は、簡単に降ろすことを許されるものではない。」
失敗か…。一課一行がそう思ったが、オクタヴィアヌス王はさらに続けた。
「よって―貴様らの覚悟を試すものとする。―マルクス、デキウス。」
「「はっ。」」
オクタヴィアヌス王の声で、二人の側近―両方ともドラグーンである―が立ち上がる。
馬上槍を携えている方がマルクス、2mはあろうかという大剣を携えている方がデキウスだ。
「―風の国の者共よ。貴様らに二対二の決闘を申し渡す。どちらかが共に倒れるか、余が止めよと言うまでは終わらぬものとする。」
(…やっぱり…。)
(そうなるのね…。)
ルシエとモニカは、内心でため息をついた。
もっとも、そのために臨戦態勢であったのだが。
「貴様らが勝てばその強さに免じて、子犬の要求を呑んでやろう。負ければその弱さのために、キル・ウィリアの煤となることを覚悟するがいい。」
「寛大なお心遣い、感謝いたします。ですが、何故三対三ではないのですか?」
オクタヴィアヌス王はにやりと笑った。
「子犬、貴様は血の匂いが薄すぎる。―戦えぬ者を戦いの場に繰り出させるほど、余は愚かではないぞ。」
「…これは、大変失礼をいたしました。」
顔を下げつつ、ユリアンは少し笑う。意外と、人間味のある王ではないか。
そう思いつつ、ユリアンは申し訳なさそうに、後ろの二人に言う。
「…そういうことです。すいません、勝手に決めてしまって。」
「いいわよ。こうなることはわかってたし。」
「死なないように、頑張らないと、いけないですね。」
二人はそう言って立ち上がり、ユリアンの前に立ちはだかった。
ルシエは武器を刀の状態で佩いている。
モニカはだぼだぼの袖を、地面に向けてたらしている。
「…ウィンデリア外務省、特務一課、ルシエ・テリオバール。」
「同じくウィンデリア外務省、特務一課、モニカ・ブラウン。」
「バニーゲン近衛騎士第一席、マルクス・エイジ。」
「同じく近衛騎士第三席、デキウス・アルム。」
互いが前に出、互いに名乗る。
と、同時にルシエは剣を構え精神を集中する。体が青く輝きだし、次第に周囲に風がまとわり始める。
『草のそよぎ、木々のさざめき、大空を翔ける全ての風に宿りしものよ。今こそ顕れ、我が身に宿り給え。』
『貴方を縛るものは何もなく。貴方を遮るものは何もなく。駆け抜けよう。あるがまま、我が身と共に、雷鳴渦巻く嵐の中でさえ。』
「…小娘、青魔術師であったか。珍しい。」
「だが魔法で強化したところで、我らに敵うとでも?」
ルシエが詠唱を開始すると同時に、マルクスとデキウスが同時に空高く滞空し始めた。
二人が天井ギリギリの高さにまで登った、その時。
「――はじめ!」
『顕現せよ。―【風の獣よ、嵐を呑め】!』
王の号令。ルシエの詠唱は、ほぼ同時に完了した。
―灼けるような熱気の中、暴風渦巻く決闘の火蓋が、切って落とされた。
-3-
「―――往くぞッ!!」
「一思いに―斬り捨ててくれる!!」
マルクスとデキウスが、武器を構えたまま高速で二人へ向かって突進を仕掛ける。
ドラグーンの飛行速度と、武器の重量、体重、そして重力を全て乗せた突撃。単純ながらも、その威力は計り知れない。
「【両・短槍】――【旋嵐軌槍】!』
ルシエは二人が突っ込んでくると同時に飛び上がり、武器を二本のジャベリンに変形し竜巻の力を巻きつけ、そのまま向かってくる二人に向かって投げつけた。
風の推進力を得た槍は、そのまま突撃してくる二人へ向かって突き進んでゆく。
「ぬうッ!」
「かっ!」
ギャイン!ギャィィイイン!!
マルクスとデキウスは、飛んでくる槍を己の得物で弾き飛ばす。
竜人二人の体勢は崩れないが、一時的に防御を行ったことで突進の勢いは殺されている。
ルシエは弾き飛ばされた日本のジャベリンを追いかけて飛び、空中で二つ取り戻すとそのままマルクスに向かって急降下から斬り下ろす。
マルクスはそれを即座に馬上槍で受け流す。
「【刀】!―やぁぁぁぁあああああっ!!」
「むぅんッ!」
ガッ…キィィイイイン!!
突進の勢いを殺し切れず、着地時に微妙に体勢を崩したルシエに大剣を振り上げ、デキウスが迫る。
「しゃあああッ!」
とそこに割って入るように飛び出したのはモニカ。
だぼだぼの袖を、何故か重いものを振り回すように振りかぶっている。
「【鎖つき棘鉄球】!」
「なっ―ぶほぅっ!?」
ボゴォォオオン…!
今まさにルシエに斬りかからんとするデキウスのみぞおちに、巨大な棘付き鉄球がつきささる。
よく見るとモニカの袖から太い鎖が伸びており、鉄球に繋がっている。
奇襲を食らったデキウスは、割と情けない声を出しながら派手に地面に叩き落とされた。
ルシエはデキウスの隙を逃すまいとすぐさま構えて飛び込もうとするが
「させるかッ!」
「―くッ!」
ガキィィイイイン!
マルクスが立ちはだかり、ルシエの攻撃を阻む。
両者互いに飛び退き、距離をとる。モニカも合わせて距離をとった。
いつの間にか、袖から伸びていたモーニングスターはその姿を消している。
「あの金髪の娘、鈍器使い…いや、暗器使いか。」
(流石、鋭いですねえ。でも、それだけではないんですよね。)
オクタヴィアヌス王の慧眼に、ユリアンは内心で賛辞を贈った。
一時の沈黙。お互いは、お互いを見据えて対峙していた。
バニーゲン側は、一人は無傷、一人は鎧越しに強烈な衝撃を食らっている。
体勢を立て直してはいるが、相応に効いていることは疑いようがない。
対してウィンデリア側は双方無傷だが、少し息が上がり気味である。
原因は言うまでもなく暑さであった。
ドラグーンはオーガと同じく強靭な体力を有し、耐火性をもつ。
それは耐熱性も持つと同義であり、熱気盛んなこの場では明らかに有利である。
しばしの後、両者互いに二人とも、相手へ向かって飛び入った。
相手の得物はどちらもこちらより長く大きく、こちらの得物が届くより前に相手の得物の間合いに入ってしまう。
単純な正面の打ち合いでは、明らかに分が悪い。
ルシエが相手方の得物の間合いに入る半歩手前、ルシエは突如として上へと飛び上がった。
一瞬、マルクスとデキウスは移動したルシエに気を取られる。
その瞬間、両者へ向けられていたモニカの袖の中が光った。
「【両・杭撃機】!」
「「なっ―!?」」
数歩先にいたモニカの両袖から発射されたのは、直径10cmはあろうかという巨大な杭。
直前までルシエに気を取られていた二人は咄嗟に防御するが、防ぎきることはかなわず体勢を崩す。更にそこへ
「はぁぁああーーーっ!!」
「うぐあっ!」
「んがっはっ…!だが!」
上へ飛び上がったルシエが、そのまま二人の背後に飛び回り、背面を強襲した。
ドラグーンは背中に翼がある関係上、背面の防御が脆くなりやすい。
暴風の加護により風の刃の追撃もあわさり、二人に強烈なダメージが与えられる。
が、竜人達もタダでやられてはいなかった。
デキウスはルシエの奇襲を防げないと気づくや否や、防御を捨てて眼前にいるモニカへ向けて大剣を振り下ろした。
杭撃機の間合いは、彼ら二人の武器の間合いでもあったのだ。
「女、貴様なら!」
「くっ…!」
紙一重で襲い来る大剣を躱すモニカ。だが、そこに動きを合わせてきたマルクスの馬上槍が襲う。
「捉えたぞ!!」
ズガンッ!!
「くぅっ……あぁっ!!んぅ、あぅ……!」
何とか躱そうとするも間に合わず。咄嗟に飛び退くことで直撃は避けられたが、馬上槍の衝撃をもろに食らい、吹き飛ばされてしまう。
戦闘用の白衣であり、その頑丈さは並みの衣服の比ではないにせよ、防御は薄く衝撃は打ち消しきれない。
突かれたモニカの右肩が、たちまち赤色に染まっていく。
「モニカさん!」
「―ッ!このおっ!」
ユリアンが思わず悲鳴を上げる。ルシエはマルクスに斬りかかるが、それを予見していたマルクスはすぐさま体勢を変え、ルシエの攻撃を止め切った。更に
「!?しまっ―!」
「遅いッ!!」
バッ…キィィイイン…!
その隙を逃がすまいと、デキウスが背後からルシエを薙ぎ払った。
寸前で気づきはしたものの回避が間に合わず、モニカとは別の方向へ弾き飛ばされてしまう。
「ぐっ…!ったぁ…!!」
「ルシエさん…!」
「ルシエ、さん…!」
こちらは鎧と暴風の加護がある分モニカよりもダメージはマシであるが、ほぼ直撃に近く強烈な衝撃がルシエを襲っていた。
モニカも先ほどの衝撃で右肩がほぼ砕けてしまっている。室内の熱気のせいで、体力も加速度的に減っていく。
白魔術師であるモニカは、既に自分の傷の治療を開始してはいるものの、完治させるには時間が足りない。
一方竜人達も手痛いダメージを負っている。
ドラグーンはオーガと違い再生能力はもたないため、傷はそのまま蓄積されていく。
防御の薄い背後を直接斬られたことにより飛行能力にも一時的に支障がでてしまっている。
少なくとも、最初のような高高度突撃はもうできまい。
それでもルシエ達は動けてあと二~三撃の状況であり、危機的状況に変わりはない。
その状況で、竜人達は武器を構え、モニカへ向かって突進していく。
(やっぱり…こっちに、きますよね…。)
モニカは治療を中断し、意識を集中し始める。ほどなくして、モニカが黒い光で輝いていく。
「黒魔法か!間に合わんぞ!」
「今更、無駄なあがきを!」
『…大地の子よ、集え。汝を穿つ暴威を、その結束を以て防ぎきれ。』
『―【砂塵障壁】…!』
ザザザザザザ…ズバァ…ガキンッ!!
竜人の刃がモニカに届く、ほんの一刻前。突如としてモニカの周囲から砂の壁がせり上がり、竜人の刃を防ぐ。
壁は厚く硬く、二人の力をもってしてもすぐに貫くことはできない。
「―砂の壁か!小癪な真似を!」
「すぐに打ち破って…いかん!」
砂の防護壁を打ち砕こうとした二人は、背後からの気配に気づく。
そこには武器を二振りの刀に変え、己らに斬りかからんとしているルシエの姿があった。
「やあああああっ!!…ちっ!」
「ふんッ!」
「甘いわッ!」
渾身の力で振るわれたルシエの攻撃は、しかし竜人達に間一髪で防がれてしまった。
だがこの時竜人達は―モニカに背後を見せてしまった。
「よう、やく、お背中を―見せて、ください、ましたね。」
「「何…!?」」
「!…あれは…!」
砂の壁は崩れていた。その中から、モニカが竜人達の背中に袖を押し付けている。
否、袖を押し付けているのではない。
袖から何か、金属製のものが伸び、竜人達の背中を突き刺している。
「…鍼、だと…!?」
オクタヴィアヌス王は驚愕した。モニカがマルクス、デキウスに突き刺しているのは"鍼"である。
治療に使うものにしては少々大きいが、それは本来「武器」と呼ぶべき代物ではない。
勿論竜人二人も驚いたが、彼らはさらに驚くことになる。
「か…体が…!女、貴様、何をした…!?」
「な、何故だ…、何故俺の体が、動かん…!?」
体を動かそうにも、いう事をきかない。
かろうじて首が動く程度で、手足は固まったかのようにびくともしない。
モニカは静かに口を開く。
「…失礼ながら、背骨に通っている、四肢に命令を伝達する神経を、一時的にブロックさせて、いただきました。たぶん、十分くらいは、動けません。」
(あの一瞬で、しかも右肩の治療は終わっていないのに、ここまで正確無比な鍼打ちを…。流石はモニカさんです。)
ユリアンは少し安堵したように、内心でモニカの成果を褒め称えた。
(彼女は確かにルシエさんと並ぶ、多重変形の魔機を使いこなす暗器使いです。でも彼女の真髄は、音も立てずに、たった一本の鍼で相手の息の根を止めてしまう―)
(…一課きっての"暗殺者"。そして―)
「何…!」
「くッ…クソッ…!」
もがく竜人達の眼前で、荒れ狂う風が更に勢いを増していた。
そのただなかには、体を青く輝かせ、二振りの刀に風の刃を凝縮させていくルシエの姿があった。
『地を抜き、山を抜き、海を抜き。世界を駆け、万象を翔ける風よ。我が命に応え、刃となりてここに集え。』
『地を駆ける汝に、貫けぬものはなし。山を翔ける汝に、穿てぬものはなし。海を渡る汝に、祓えぬものはなし。汝は万象を薙ぎ払う王の風。』
―熱気あふれる玉座の間に、涼風が吹いていた。
それはルシエが呼び寄せた、邪龍の熱気をも吹き飛ばす、風の帝王の、裁きの剣。
モニカとユリアンは、静かに宣言する。
「「―チェックメイト、です。」」
『―【風 帝 斬】!』
―暴風とも、涼風ともとれる、刀を覆う風の刃。
裁きの剣が、周囲の熱気ごと、竜人二人を薙ぎ払った。
-4-
「―止めよ!」
風の剣によって、竜人二人が倒されたと同時に、オクタヴィアヌス王が号令した。
勝利は誰が見るにしても明らかであった。
「勝者は風の国の者だ!よって、ここに雪の国との争いを辞め、哭く海の海峡から手を引くものとする。海峡の全兵に、海峡で暮らす者共に伝えよ。」
竜人の王、オクタヴィアヌスは高らかに宣言した。
「―戦争は終わりである!!」
側近や近衛兵は、すぐさま頭をたれ、各所へ伝えるために慌ただしく散っていった。
同時に一課一行の表情に光がともる。―任務は、成功したのだ。
―その後。回復を終えた一行は、いまだ玉座の間にあった。
「見事であった、誉めてつかわす。マルクスとデキウスがああもやられるとは、余も予想しておらなんだわ。」
近衛二人を倒されたオクタヴィアヌス王は、しかし実に充実した表情をしていた。
倒された二人はモニカの白魔法で、元通りに回復し王の傍に仕えている。
「面目次第もございません。」
「かくなる上は、いかなる処罰も喜んでお受けする所存。」
「善い。貴様らはよくやった。それよりもあの女二人が強かっただけの事よ。」
言ってオクタヴィアヌス王ははっはっは、と笑った。
何よりも強き者を尊ぶ彼は、命を賭して戦った彼らに実に満足している。
「して、風の国の者よ。うぬらはこの後どうするのだ?このまま風の国に帰るのか?」
「は。雪の国への報告は電話でもできます故、報告が終わり次第、そのつもりでおります。」
「そうか。―子犬…ユリアンと言ったか。それではまだ一手足りないのではないか?」
「は…?」
指摘され、ユリアンは顔を上げる。オクタヴィアヌス王はユリアンの不足をなじるではなく、自分と舌鋒を交わした好敵手を見る目で笑っていた。
「証が足りぬと言うのだ。今の状況では、傍目から見ればお互い手を引いたにすぎぬ。それぞれの国の民にも、戦争が終わったという明確な証が残らぬ。」
「王のおっしゃる通りにございます。しかし、我々にはその証を用意する手立てがございません。」
ユリアンの言葉に、オクタヴィアヌス王はニッと笑った。
「わかっておる。故、うぬら風の国の者に命ずる。一週間の後、雪の国、山の国、風の国の元首を、大陸橋ユリウスの間に集めるよう伝えよ。余が直々に赴き、それら三国との友好を結ぶこととする。」
「は。……は!?」
ひとまず頷いたユリアンは、次の瞬間事の大きさと意外さに驚いた。ルシエとモニカも同様に驚いた。
ついでに残っていた側近や近衛兵も驚いていた。その様子を見て、オクタヴィアヌス王は愉快そうに笑う。
「聞こえなかったか?余が、この炎の国が、うぬらの国と手を結んでやろうと言うのだぞ?」
一大事だった。確かに、バニーゲンは他国ととりわけ敵対的な国ではない。
ただ他国との交流に消極的なだけであり、マンテリア以外とは消極的な友好関係ではあった。
だが、その消極的友好国とひと悶着あったとはいえ、解消と同時に正式に友好関係を結ぶとは。
「…とんでもないことになったわね…。」
「歴史が、動いて、しまいましたぁ…。」
「…突然の事で、理解が及んでいない私の不徳をお許しください。ですが、その命は確かに承りました。一言一句、違わぬことなく三国にお伝えいたしましょう。」
一課一行の、ユリアンの答えに、オクタヴィアヌス王は満足したように頷いた。
「ならば善い。さあ、決まったとなれば疾く伝えよ。意外と時間はないのだぞ?」
「ははっ、おっしゃる通りにございます。では、私達はこれで失礼いたします。」
礼をし、一課一行は王宮を後にした。
―玉座の間から彼らが去った、その後。マルクスが口を開いた。
「よろしかったのですか?いかに強き者であったとはいえ、山の国以外の国とも手を結ぶとは、前例がございませぬ。」
「善い。前例がなければ作れば善いだけの事よ。目下、かの国らには我が国と事を構えるつもりはないようであるしな。」
オクタヴィアヌス王は彼らが去っていった出口を見やる。
「それに、砂の国と泉の国への備えも怠れぬ。万一それらの国と事を構える事になった時、背後が敵ではないとわかっているのは大きいぞ?」
「それは、確かに。そこまでお考えでおられましたか。」
「特に風の国は砂の国と隣り合っている。何かがあった時、あの国と結んでおくのは悪い手ではあるまい。それに―」
オクタヴィアヌス王は立ち上がりつつ、覇気と怒気を込めた瞳で彼方を見つめる。
「―余を謀った魔神めの国に、報復をせねばならんしな。」
一週間後。カルナック大陸橋のユリウスの広間で行われた四国合わさっての和平友好条約の調印式は、一大ニュースとなって世界を駆け巡った。
バニーゲンとスノンベール、他国に対して閉鎖的な国であった二国が、この調印式を経て部分的にではあるが門戸を開き、以前よりも少し、交流が活発になった。
今はまだ目立った効果はないが、十年先、百年先の後、この出来事は歴史を大きく動かした転換点として語られるに違いない。
―戦争とは、仕掛ける側と仕掛けられた側がいて成立するものである。
通常、それはどちらかが勝ち、どちらかが負けることによって終息するものである。
だが。もしもその戦争の裏で利益を甘受する者があり、その目論見を潰す事が叶ったなら。
それはどちらが勝つよりも尊い、最上の勝利ではないだろうか。
第六話は4月20日投稿予定です。