表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪役令嬢は壁になりたい  作者: tea


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

35/43

イライアスとシュゼット⑮ side シュゼット

「え?! 違うんですか??」


驚きのあまり、また淑女らしからずポカンと口を開ければ。


「はい、全然違います。僕の周りの女性はユニークな方が多いので、突飛な発想には慣れていたつもりでしたが……。貴女の発想はそんな僕でもビックリし過ぎた余り心臓が止まるかと思ったくらい違います。一体、何をどうやって育ったら、そんな容姿をしているにも関わらずそんな答え(脳筋な回答)に行きつくんです???」


リュシアン様もまた酷く驚かれたようで。

まるで宇宙の神髄を目の当たりにしてしまった猫のように、二人で目を丸くし思わず見つめ合ってしまった、その時でした。


「殿下」


脇に控えていたリュシアン様の護衛騎士が何かを警戒するように、低く短い声を発しました。


何だろうと思い、騎士の目線の先を追えば。

その視線の先にいらしたのは、さっきまでのピリリとした雰囲気から一変、妙に楽し気に、しかしどこか暗く微笑むイライアス様でした。


「シュゼット、花火はどうだった? いろんな色があって綺麗だっただろう」


「……はい、とっても」


イライアス様が何を考えていらっしゃるのか全く読めない為、短く無難そうな言葉を返せば


「喉が渇いただろう。おいで、向こうに冷たい飲み物を用意してるんだ」


イライアス様が私に向け、その綺麗な手を伸べられました。

イライアス様が私に触れようとされたその時です。


「だーかーら、僕を無視するなと言っているだろう!」


リュシアン様が伸ばされたイライアス様の手をペン! と叩き落とされました。


「あぁリュシアン、いたのか」


「そうか、お前の目は節穴なんだな! そうとも知らず、度々突如存在を知らしめ驚かせてしまって悪かったな!!」


フン! と鼻を鳴らされたリュシアンをご覧になって。

イライアス様が楽しそうに声を立てて笑われました。





「……それで。自分の力の使い方は分かったか? それとも、僕の前に跪き許しを乞う事にしたのか?」


リュシアン様のそんな言葉に、イライアス様はまたニコッと綺麗に微笑んで見せると


「僕はさ。口先では『世界で一番大事にしたい』とか言っておきながら、『親友』と呼んだ男から婚約者を寝取ってやろうと心の奥底で思っていた自分の歪みに歪んだ本性を認めたくなくて、ずっと魅了の魔法がコントロール出来ないんだと必死に自分に言い聞かせて来たんだけど……」


初めてお会いした時の様に青く澄んでいたロイヤルブルーの瞳の奥を、またドロッと仄暗く光らせました。


その次の瞬間でした。

リュシアン様の護衛騎士達が突然一斉に抜刀し、あろうことかその剣先をリュシアン様に向けました。


「でも、さっきみたいに大事に思ってた女の子を横から掻っ攫われるくらいなら……もう醜く歪み切った本性を隠すのを止め全てを傀儡にして、ボクに逆らう者は友人でも恋人でもボクの支配下に置いておいた方がずっといいって。ようやく納得する事が出来たよ」


そうおっしゃったイライアス様が浮かべられたのは、ゾッとする程に綺麗な黒い黒い笑みでした。



ネザリアは小国です。

四方八方を強国に囲まれ、いつ新たな領土を欲する周辺諸国に攻め込まれても不思議ではないと言われ続けています。

故に、将来王となられるイライアス様がこのような禁じ手に近い力を持っていらっしゃる事はこの国に残された唯一の希望なのだと、この国の貴族である私も頭では理解出来るのですが……。


『あぁ、リュシアンと同じ位に君の事が大好きだよ、シュゼット。だから君もずっとボクの事を嫌いなままでいてね?』


強大な隣国の王配であり魅了の効かないリュシアン様を、脅威(ストッパー)でなくす事を自ら選ばれてしまったイライアス様は。

自分が誤った道に進もうとした時止めてくれる安堵感を、信頼を、一体誰に見出す事が出来るのでしょう。


哀しく嗤うイライアス様を酷く可哀そうに思った、その時でした。



「少しは甘ったれが治ったのはいいが……。イライアス、まさかそれで僕に勝ったつもりか?」


リュシアン様がそんな全く思いがけない事をおっしゃいました。


しかし、いかにリュシアン様が剣の名手だったとして、複数の護衛騎士相手では手も足も出ないのでは?!


「何度も教えてやっただろう。僕は負けるような戦いはしないと! まさか力の使い方を僕に教えてもらえただけで、僕に勝てるようになったとは思っていないよな?!」


リュシアン様がそうおっしゃった次の瞬間でした。

イライアス様の命令を無視して騎士達は一斉に剣を下ろすと、今度はイライアス様に向かい剣を構え直しました。


「何だ?! 勝手な事をするな!! リュシアンを包囲しろ!」


イライアス様が焦ったように護衛騎士に指示を出されましたが……。

その言葉に従う者は一人としてありませんでした。


そんな動揺を隠せないイライアス様をご覧になって、今度こそリュシアン様が酷く胸が空いたとばかりに満面の笑みを浮かべられます。



「何で……何で僕のいう事を聞かない?? ……まさか、魅了が解除されたのか?!! でもそんな事一体誰が??」


イライアス様が、心底焦ったように。

でも、それでいてどこか酷く嬉しそうに、そんな声を出されたその時でした。


「やぁ、イライアス元気だったか? なんだ、少し会わない間に、また背が伸びたか??」


一人の男性が突如、私たちの前に姿を現しました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ