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3.推しの尊い姿は動画で永久保存したい

「えっと……先ほどは助けてくださってありがとうございました」


随分遅くなってしまいましたが改めて助けてもらったお礼を言えば


「僕の方こそ……」


そう言ってウィルがまた気恥ずかし気に目線を彷徨わせました。


「…………」


はい。

会話、即行で終了してしまいました。

しかし、こんなコミュ障(不器用)な所も推し(ウィル)の子どもの頃らしくて大好きです。


「ウィリアム様は何の本を読まれていたのですか?」


そうこちらから再度話を振れば、


「あぁ、これは……」


とウィルが手に持っていた本の表紙を見せてくれます。

本は初級の魔導書でした。


「ウィリアム様は魔法に興味がおありなんですね」


そう私が言えば


「適性があるかどうかは分からないけれどね」


そう言ってウィルはまた恥ずかし気に下を向きます。



適性???

ありますとも!

何て言ったって、ウィル(あなた)は最終的には最強魔術師と言われるようになるんですよ!!!


……残念ながら魔力を暴走させた私と相打ちになる形で亡くなってしまいますが。



あ。

やばい。

最期のシーン思い出しただけで涙が……



そう思った時、閃きの神が降臨されました。


「そうだ!! ウィリアム様! 明日から本格的に魔術を習いましょう!! そうすれば、独学で最強と言われた貴方以上に強くなれるかもしれません!!!」



ウィルが訳が分からないという顔をします。

私は少し思案した末、思い切って私が転生者であること、そしてウィルの死を防ぎたいと思っている事等を話してみました。



ウィルがどこまで私の話を信じてくれたのかは分かりません。

でもウィルは、


「君も一緒なら……」


と、そもそも私が魔力暴走をおこさないよう私も一緒に魔術を習う事を条件に、最終的に私の提案を受け入れてくれました。



何もせず壁になりたかったのですけどね?

まぁでもこうなった以上、ウィルを守る為の魔法障壁の一枚になれるくらいには頑張りたいと思います!



「私も頑張るけど……。もしもの時は相打ちではなく、絶対に! 確実に! 完膚なきまでに! 確実にオーバーキルで!! 消し炭も残らないよう私の事倒してね?!!! 約束よ?」


リリーメイのキャラデザはそれなりの美少女なのですが、オタク特有の早口とウィルの生存確率が爆上がりするのが嬉し過ぎるあまりグフグフ笑う姿が絶妙に気持ち悪かったのかでしょうか?

それを聞いたウィルは笑顔を見せてくれるでもなく、また困ったように目を逸らし曖昧に頷いたのでした。



それからは私の護衛という名目で、有名な魔術師を講師に呼び城に上がる時には共に連れて行くようになりました。


初めて魔法を習う推し(ウィル)の目は、キラキラ輝いていてそれは可愛らしく、魔術講師(先生)に作っていただいた動画を撮影出来る魔術具で舐めるように撮影させてもらいました。


「ちょっと……リリー……撮らないでよ。恥ずかしいじゃないか……」


そう言って真っ赤になりながら両腕で自身の顔を覆うように隠す推しの姿の映像を夜寝る前に見て鼻血を吹き、一体何枚のシーツをダメにしてしまったかはもう覚えていません。



そんなことをしているうちに、楽しい子ども時代の三年間はあっという間に過ぎていったのでした。







覚悟は出来ていた筈だったんですけどね。


妹のローザも同じ学園に通うようになった、私とウィルが十四歳の冬の事です。

ある日突然ウィルとリリーメイ()が決別するイベントがシナリオ通り始まってしまいました。


「リリーはローザの事を誤解している。君にいったい僕たちの何が分かる!? 知ったような口を利かないでくれ!!」


売り言葉に買い言葉だって事くらい、よく分かっています。

でもウィルが小説と全く同じように、ヒロインである妹のローザを庇い私を突き放す言葉を言うのを聞いた時は、やはりどうしようもなく胸が痛かったです。




人目を避ける為学園の温室の中、一人泣いていた時でした。


「誰だ?」


不意にかけられた声に驚いて振り向けば、温室の入り口にゼイムスが立っていました。


婚約者に対して『誰だ?』とはお言葉ですが、あの喧嘩以降お互いに徹底して嫌い合って顔を合わせないようにしていたので、まぁ仕方ありません。

私も前世の知識が無ければ、彼が誰か分からなかったでしょう。


彼の横をすり抜け逃げようとした時でした。

ゼイムスにいきなり手を取られました。

そしてそのまま顎に手をかけて泣き顔を上げさせられます。


「この燃える様な赤毛にエメラルドの瞳……リリーメイか?」


名乗らずその場を離れたかったのですが、特徴的な容姿故、すぐに正体に気づかれてしまいました。

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