幕間1
幕間1
さぁさぁそこのお兄さんお嬢さん、寄ってらっしゃい。
今宵の演目は、かの帝都騒乱の知られざる真相。
大志を抱いた少年の、見るも涙、語るも涙の大活劇。
まもなく開幕〜開幕〜。
陳腐な呼び込みと大袈裟な音楽に包まれた会場は観客の熱を孕み、真冬だと言うのにコートを脱ぎたくなるほどの熱気だ。
しばらくすると、開幕を知らせるベルが鳴り響いた。いよいよ幕が上がる。
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暗転から照らし出されたステージに立つのは一人の少女。
女と呼ぶにはまだ少し早いその少女は、まるでステージの光を束ねたような美しい白髪と純白のドレスをまとい、儚げで浮世離れした印象が強い。
大道具の石造り柵と<雲もないのに霞んだ月>に照らされた街の夜景から察するに、舞台は塔の踊り場のようだ。
一拍置いて、一人の少年が塔の出入口から現れた。少年は夜を映したような黒髪、齢は15,6といったところだろうか。
「やっと、やっと会えた」
血にまみれたシャツを隠すように黒い外套を羽織った少年はそう呟き、少女をじっと見つめている。
「やっぱり、来てしまったの?」
鈴の音が響いたような少女の美声は会場の空気を一変させる。初めてその声を耳にしたわけではない私ですら、思わず聞き惚れてしまうほどだ。
「来ないで。それ以上近づいたら、わたし飛び降りる」
一瞬の静寂の後、少女が歌を紡ぎ始める。<旧文明>ではコロラトゥーラ・ソプラノ(最上の色彩)とも称されたその歌声は、
その名に相応しく、高音域を転がるように彩り、聴くもの全てを魅了する。
拒絶、懺悔、邂逅の喜び、秘めたる想い、そして未来への恐怖…転調する音楽に合わせ、少女の歌声によって、鮮明なイメージが脳裏に形作られてゆく。
そしてーーー