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エルは掴む、果ての世界  作者: 必殺脇汗太郎
二章 勇者と悪魔編
49/50

エルは・・・

一瞬の出来事に、俺とアリアさんは動揺することもできず、ただ茫然と死体に歩み寄る男を見ることしかできない。


無造作に、まるで道端の石を蹴るかのように、足でうつ伏せだった女の死体を仰向けに変えた男は無感情に言葉を連ねる。


「サイレントキラー様が何もしないで立ち去ろうとするんでつい手が出ちまった。たく、本来の予定にはなかったんだぜ?ただまぁ、もう少しもがき苦しんでほしかったが、それは良しとしよう。」


「・・・あなたは、立場があったのでは?」


「もちろん、だが今この状況を見て、俺が犯人だという者もいないだろう?それに嬢ちゃんも実の母が殺されたっていうのに、何も言わないじゃねぇか。」


アリアさんの顔を覗けば、そこには自身の内にある感情に整理がつかず、未だに唖然とその光景を眺めることしかできていなかった。


「なぜ、殺したんです?」


「おっと、それを話す前に、まずは処理をしなきゃな?」


そういってテルミラスは自身の武器を死体に向け、引き金を引いた。

鋭い破裂音とほぼ同時に死体が跳ねたかと思うと、途端に火の手が上がり死体を包んだ。


「さすがに弾痕まで残しちまうと俺だとわかっちまうからな。それで、あーなんだ、なんでだったか?」


「・・・母様。」


「ほー、悲しむ余地がまだあったてのか。嬢ちゃんの話、使用人からたんまり聞いたぜ。鞭打ちなんて日常茶飯事。井戸に放り込まれて放置されたり、挙句の果てには父親とその仲間たちに回されそうになったんだってな?全部全部、母様の躾だから許されるのか?ああ?」


「・・・それでも、肉親に変わりない・・・じゃない。」


「ははははは、面白いことを抜かさないでくれ。親に対して子が無条件の愛を注ぐはずないだろう。それを得るのは!親として真っ当な愛情を注いだものだけだ!決してこんなごみくずのような人間が得ていいものじゃない!」


テルミラスが突如として激昂し、死すらも予感させるほどの覇気を叩きつけてきた。

俺はそれに抗うように、精神を集中させ、一歩踏み込む。


その時、一切知覚することもできずに、俺の足元に一つの銃弾が突き刺さった。


「おいおい、俺の話を聞きたいんじゃないのかよ。いいぜ聞かせてやる。俺はなぁ、とある孤児院のために冒険者になった。周囲の人間に漏らすことなく、繋がりをばらさずに稼いだ金を孤児院に分けていた。」


そこで言葉を区切り、鋭い視線を未だ燃える死体に向け、テルミラスは言葉を続けた。


「その孤児院のシスターに、俺は惚れちまった。渡した金はすべて孤児院の維持費と、卒業していった子たちへの支援へと回す。自身はくたびれた法衣を着続け、必死に毎日を生きていた。そうさ、そのシスターはその孤児院出身で、俺と幼馴染だった!俺が生まれ育った場所を必死で守ってくれていたそのシスターは、あろうことか、てめーのくそ親父の目に留まっちまった!そしてここで野垂れ死んでいるくそ婆は、孤児院をあの手この手を使って潰し!シスターをくそ親父に渡したのさ!俺が、ダンジョンに長期間潜っている間にな!」


怒りが限界に達したのか。もはやしゃべる言葉にすら覇気が乗り、そしてその覇気は怒りの色が色濃く出ていた。


「帰ってきたとき、唖然としたよ。孤児院が潰れちまってたんだからな。必死にシスターや子供たちの行方を捜した。そしたらすぐに居場所はわかったよ。ここだ。全員、ここに集められていた。てめーの母親は、一括で手に入る奴隷が欲しかったんだ。普通に買うよりも、裏で手を回す方が安上がりだったんだろうな。取り返そうにも、全員死んでたよ、奴隷の消費が早すぎるんだ、そりゃ安価な方を選ぶよな!だから俺は力を得る為に各地を回った死に物狂いで。全ては復讐のために!そうしてようやく最強の地位を手に入れたとき、すでにここの連中は腐りきってた。それはもう、復讐せずともそのうち沈んでいくことが解るくらいにな。」


「それならどうして。」


「決まってる。俺の手で沈めたかったんだ。だから俺が裏で話を通した。お前の縁談を。そして、直前になってからこいつらの裏での罪を白日の下にさらし、没落させ、王都から逃げたところを襲い、あらん限りの恥辱を味わせてから殺すつもりだった。」


そこでテルミラスは俺に視線を向け、鼻で笑った。


「そこでお前が出てきたってわけだ。驚いたよ、こうもあっさりと向こうから俺を呼んでくるなんてな。お前を泳がせることで、権威を失っていく様は本当に面白かった。本人たちは気づいていなかったが、もうすでにこの家に味方はいない。お仲間の貴族たちも口約束だけで協力なんてする気もなかったようだし、俺一人を追加したところで失った権威は取り戻せない。知ってるか?このくそ婆は自分で使う分の薬すらもう買えないほどに金がなかったんだ。それなのにいつまでも見栄を張り、強欲に上を目指し続けるからこうなる。そして最後の最後に娘の裏切り。いやー、ここまでの絶望なんてないだろうな。だから俺が殺してやった!さいっっっっこうだ。ああ、ああああああ、ミラ。俺はやったよ。ようやくお前の墓を作ってやれる。お前との思い出をそこに埋めて、一緒に暮らしていこう。」


「・・・もう、壊れていたのか。アリアさん、行きましょう。もう俺達では何もできない。」


「・・・ええ。母様、哀れなものね、娘にも心から悲しんでもらえない、そんな人生に意味なんてあったのかしら。・・・いこう、エル。」


流れ出ている涙をそっと拭って、俺達はその場を去った。


後ろから泣き叫ぶような笑い声が耳に、いつまでも、残り続けていた。


____________________________________________________________


「行ってきます。」


「・・・・・・・・・・・・・」


一夜明け、情報収集をするべく宿の一室からするりと外へ出る。

極度の疲労からか、なんの感情も伺えない寝顔を晒してアリアさんは寝入っている。


小さく声を変えて扉を閉め、昨日の騒動がどういった形で処理されたのか確認しに行く。


やはりというか、外は昨日の事件の話で持ち切りなようだ。

至る所で事件の話をし、時折騎士や軍属の制服を着たものが聞き込みなどを行っていた。

しばらく歩いていると、貴族街の一歩手前で野次馬どもが目に入る。


「ちっ、さすがに貴族街に入るわけにはいかないか。・・・なあ、ここで何かあったのか?」


近くに居た男にそう尋ねると、呆れた顔で男が事情を話し始める。


「あんた、なんも知らないのかい?巷で噂のサイレントキラー様がついにやってくれたのさ。悪徳貴族どももこれでしばらくはおとなしくなるだろう。まさか一族郎党皆殺しとは、恐れ入るねぇ。使用人は全員無事だってところもさすがとしか言えないなぁ。」


「皆殺し?」


「ああ、ウェステリア家の夫婦に、館に泊まっていた親戚もぜーんぶ殺されたみたいだぜ。どういう風に殺されたかまではわからないが、きっと相当な恨みがあったんだろう。きっと殺し方も惨いんで情報が出せないんだな。」


「そ、そうですか。ありがとうございます。」


「いやー、良いってことよ。あんたもあんまり悪さするとサイレントキラーにやられちまうぜ、ってな冗談だよ。それじゃ―な。」


そういって野次馬の男は去っていった。


それにしても、テルミラス。あの後いろいろやったみたいだな。はでに動き回っても全部俺のせいにしているあたり、もともとそういう計画だったのだろう。


なんにせよ、これで今回のことは一件落着。かなり後味の悪いことになったが、俺にとってはアリアさんの方が大事だ。


さっさと帰ってアリアさんのケアをしなければ。


____________________________________________________________


宿の部屋に戻ると、既にアリアさんは身支度を済ませ、ベットに腰かけぼーっとしていた。


「おはようございます。気分は、良くはないですよね。」


「おはよう。そう、だな。正直悲しいという感情が湧かない自分に戸惑っている。」


「そうですか。いつか、感情に整理がつくことを願ってます。」


「ありがとう。それで、この後、私はどうすれば?」


「まずはとある拠点に戻って、それから俺の仲間と合流、それからウィスタンシアに帰るって流れですかね。」


アリアさんが頷き、俺は下へご飯を取りに行くことにした。


宿の食堂にて、食事の用意が出来るまでの間、何気なく宿の入り口の方に目を向けたとき。

突如として勢いよく扉が開き、二つの影が室内に入ってきた。


「いた!エル君!」


「エルさん!」


入ってきたのはエルサさんとターニャだった。

二人は俺を見つけるなり、勢いよく飛びつき、俺を含めながらテーブルやら椅子やらをすべて巻き込んで地面に倒れた。


「いてて、二人とも、重いんだが。」


「「うるさい、心配したんだから!」」


「す、すみません。」


ひとしきり罵倒された後、周囲の目線に気づき頬を赤く染めた二人は、散らかした分を綺麗に掃除してからテーブルに着いた。


「改めて、迷惑かけてすまない。ちょっと色々あって手紙という形にしたんだ。」


「それはいいのよ。エル君のことだから何か考えがあってのことだろうし。それよりも死んでいなくてよかったわ。多少、容姿は変わってるみたいだけど。」


「それに関しては追々説明してくよ。それよりも、そのー、一人仲間が増えたんだ。」


「へ?」


説明するよりも実際に見せたほうが早いと思い、部屋に二人を連れて行った。


そのあとは、語るまでもない。女のために帰ってこなかったのか、このスケベ野郎!と罵られたとだけ言っておこう。


なんにせよ、これでようやく仲間と合流できたわけだ。

これから、俺はどうすればいいのだろうか。


そんなことを考えながら、いまだ続く仲間たちの喧噪に再度巻き込まれていくのであった。
































『君は男を仲間にする気はないのかい?』


うるせー、なんかこうなったんじゃい。

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