エルはパーティーを組む
ギルドに着くと、酒場のテーブルの一つにちょこんと座る少女がいた。
そしてなぜかその向かいにはダグラスさんがドカッと座り、大量の飯を掻き込んでいて、時折向かいの少女に食べ物をスプーンに載せて食べさせている。
その珍妙な光景に周りはちらちらと視線を向けており、少女の方は恥ずかしさからか、食べ物をもらうとき以外もじもじしながらうつむいていた。
ずっと観察していても仕方ないので、受付のアリシアさんに会釈をしながら、問題のテーブルに向かう。
「あの、ダグラスさん、何してるんですか?」
「ん?まさか待ち人ってエルか?おいおい嬢ちゃん先に言ってくれれば良かっただろうに。心配して損したぜ。」
「なるほど、ここには少々悪い人たちもいますもんね。まったくお人よしなんだから。」
「うるせー。で?何の話なんだ?」
「ダグラスさんには関係ないですが、まー当事者といえば当事者ですし、アドバイスも貰いたいので一緒に話を聞いてもらえると助かります。この子がサポーターとして俺と組みたいって言ってるんですよ。」
「ほーう、いいんじゃないか。嬢ちゃんはドワーフだ。まだ年は若いが優秀なサポーターだぞ。力もあっていざというときは本人も戦えるしな。ドワーフは器用だし、多芸だ。正直その器用さだけでも将来はいろんなパーティーから勧誘されるほどだと思うぜ?」
「・・・おじさんは大人げないから嫌いでしたけど、ご飯もくれたし、いいことを言ったので大好きなのです。」
「おう、おじさんはちびっちゃいのには優しくしなさいって躾されて育ったんだ。だからそこのエルにも優しくしてやってんだ。偉いだろう?」
「そうなのです!?それはとてもいいことです!」
「はぁ、理由を聞かせてくれると思ったのだけど?」
「は!そうでしたのです!」
グダグダになりかけたところでうまく話を元の方向に戻すことができた。
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少女、ターニャは、最近家をでたらしく、冒険者のサポーターとして修業しながら金や知識を蓄えようと決心するも、故郷の村では小さすぎて冒険者すらいなく、仕方ないので大きな町を目指して歩きだしたそうだ。ドワーフという種族で、工芸や鍛冶に秀でていて、ターニャもそういった技術を習得したはいいが、狩りで獲物を捕ることもできず、食べられる植物も限られていた為、行き倒れのような状態になったらしい。幸いにも近くに川があったことで何とか飢えだけは回避することができたが、川の水だけではじり貧なことに変わりはない。
どうしたもんかと思案していた時、馬車の音がしてとっさに草陰に身を隠し様子をうかがうことにした。
現れたのは予想よりも大きな馬車と、それを守る鎧を着た人たちだったそうだ。街道からそれた森の中をなぜと思ったが、この馬車に何とかして乗れば大きな町に着くと思ったターニャは、水辺で休憩する騎士たちの目を盗み、なんと、ありあわせの紐と杭を改造して体を固定する道具をパパっと作り馬車の下に潜り込んでそのまま底に自身を固定した。
そして時折訪れる休憩の度に近場の草や木のみをそそくさと集め、再び底に張り付きこの街までやってきたそうだ。
いやそれにしても、大きな馬車ってパナム様の乗ってきたあれのことだよな?警備甘すぎじゃないか。そんなんだから誘拐事件が起きたんじゃないか。
それとドワーフというには本当に器用なんだな。一瞬にしてあり合わせのもので道具を作ることができるなんて、そりゃ器用さが有名になる訳だ。
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「それで。」
「はい?」
「なんで一晩考えるって言ったのにひと眠りしておきたらお前が俺に跨ってるんだ。」
そう、一通り話をして、どうしてサポーターになりたいかの話ももちろん聞いた後、やっぱりすぐには決断できないからと、もう一晩待ってもらうことにしていたのだ。それなのになぜこいつは俺の上にいるのだろうか。それも俺が起きたときなんかぐっすり眠っていて、わざわざ起こしたくらいなんだぞ。
「何度も言ったじゃないですか。私はエルさんの戦う姿に憧れたです。まだあのおじさんよりも弱いけど、あの立ち向かう雄姿はドワーフ魂に響いたです。だからエルさんのサポーターになってゆくゆくはお嫁さんになるです。」
「あー、あのな。質問には適切な答えがあるんだ。そして質問の意味が理解できなければ相手に聞き返してもいいんだぞ?訳の分からないことでうやむやにするのはダメなんだ。それで、なんで俺の上に跨ってんだ?」
「簡単です。ドワーフは宿くらいの鍵であればちょちょいと開けることができます。それに女将さんにエルの部屋はどこか聞いたら簡単に教えてくれたです。だからちょちょいと開けて、一晩考えた答えを聞こうと夜から上に乗ってまっていたらいつの間にか寝てしまったです、反省しますです!!」
「すまん、常識を教えてくれる教会のシスターあたりにまずは弟子入りした方がいい。君はさすがに頭がおかしい。」
「な!そんなことないです!村の人たちは私が作るものはどれも一級品とほめてくれたです。たまになにに使うかわからないと言われることもあったけど、頭はおかしくないです!!」
「そうか、それで?いつになったら降りるんだ?」
「まったくーエルさんの答えを聞きたいから待ってるんですよー?エルさんこそ頭おかしくなっちゃったんじゃないです?」
「・・・」
『ガバ!ドン!!』
「いてーです!なにするんですか!」
朝っぱらから頭のおかしい会話に付き合うのがだるくなったので、とりあえず強引に起き上がり朝飯を食べに下に向かうことにした。朝の素振りをしたいところだが、致し方ない。予想でしかないがきっと集中できない気がする。主にターニャが絡んでくるから。
そして女将さんにどうして部屋を教えたという苦情交じりの眼差しを送るととても腹の立つ顔でこちらを見てきた。まったく腹立たしいが朝食を人質に取られているうちは文句を言うことはできない。
程なくしてから二人分の飯がテーブルに運ばれてきた。
向かいには当たり前のように座る幼女。しかしその幼女は朝食に手を付けようとせずじーっとこちらを見つめている。
「はぁ、わかったよ。とりあえず一週間一緒に依頼を受けて、それから本当にパーティーを組むか考えよう。サポーターという立場よりは、ターニャも強くなりたいみたいだし、同じ冒険者としての経験を積んだ方がいいんだろうし、暫定パーティーメンバーとしてでいいならターニャの要望を聞き入れるよ。」
「はい!それでいいです!ちなみに冒険者登録は済ませてあるです。あとはギルドでパーティー審査するだけです!」
「・・・なんでそこまで用意周到なのに行き倒れになるんだよ。はぁ、とりあえず飯食べてくれ。どうせ俺のお金で払うだから料理がもったいない。」
「!!!いいのです!?なら頂くとするです!」
そう言うと、ものすごい勢いで料理を口に運び、やがて真ん丸に頬を膨らませ、そのまま一気に飲み込んだ。喉を詰まらせることなく同じことを三回ほど繰り返すと出された料理は底を尽き、ターニャは満足そうな顔を浮かべ、俺が食べ終わるまで寝るですと言って座ったまま寝始めた。
「出会いから今までの短い間でもこの子のこういった感じに慣れ始めている自分が怖い。」
「良い子そうじゃないか、坊やもサポーターとして雇うことにしたんだろう?」
「サポーターじゃなくパーティーメンバーとして一時的に契約した感じですよ。さすがにサポーターとして雇って何か問題を起こされて、責任を押し付けられても困りますし。」
「ふん、坊やは素直じゃないねぇ。ちょっと抜けてそうだから心配なんだろう?嫌々引き受けた事にしておかないといけないなんて坊やは恥ずかしがり屋でもあるんだねぇ。こんな小さい子に荷物を大量に持たせるのは酷だもねぇ?あー、健気なこと!」
「違いますよ。まったくいつもと違ってやけに饒舌ですね。女将さんは早く仕事に戻ってください。」
「つれない子だねぇ。まったく、あんたもさっさと食べて仕事にいきなね!」
「はいはい、言われなくてもそうするつもりですよぉー。」
女将さんとのやり取りを終えて朝食も間食したところでターニャを起こそうとしたらまったく起きる気配がなく、揺すっても効果がないため、仕方ないからそのまま背負ってギルドに向かうことにした。
くそ、初日からこんな苦労をさせられるなんて先行きが不安になるよ。
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「ふーん、その子がエル君のパーティーにねー。変な人に騙されるよりはましだけど、ちょっと頼りないわねー。」
「まー、ドワーフなんで腕は確か、だと思いますよ、たぶん。」
「その言い方だっとまったく安心できないのだけれど?」
「あら、丁度いいじゃない。私も加われば安心できると思わないかしら、ね?アリシアちゃん。」
ふと後ろから声が聞こえた。その声の主を確かめるより先にアリシアさんが口を開く。
「あらあら、誰かと思えば男好きで有名なエルサじゃない。あなたが加わると余計不安ね、特にエル君の夜が。」
「あら、あなたよりは断然うまいと思うのだけれど?それとも腕を上げたの?どこぞの冒険者ひっかけて練習でもしたのかしら?」
『スー、バン』
アリシアさんが無言で机の引き出しを引いて強く閉めた。なんの意味もない開閉によって机に多大なダメージが入る。
「エル君、忠告しとくわね、この女はこの年になるまでいろんな男をひっかけては長続きしない、男遊びが好きな女なのよ。悪いことは言わないわ、パーティーを組めばあなたの貞操があぶないわよ?」
『ドン』
突然、エルサさんが何の意味もなくカウンターの下の板に向かって細身の剣を強かに打ち付けた。何の罪もないカウンターに多大なダメージが入る。
「へー、私は別に男をひっかけてるつもりはないわよー?ただパーティーを組んで良さげな男がいれば仲良くなるだけ。長続きしないのは皆お馬鹿で勝手なことばっかり言うから続かないだけなのよ?私よりあなたの方が危ないんじゃない?その年になるまでまともに男の子の肌に触れたことがあるのかしら?」
「なにを!!ちょっとあん・・・」
「あのもう疲れたんでかえっていいですか?」
「私も疲れたです。さっさと依頼を受けてここを離れたいです。」
「「ダメに決まってるでしょ(う)!」」
「「あ、はい。」」
「・・・はぁ、落ち着きましょうエルサ、この決着はいずれ。」
「ええ、そうしましょうかアリシア。」
突如として始まった女の争いがようやく終わりを迎えた。
この二人、年齢も近そうだし、おんなじ悩みを抱えた者同士、罵りあいながら実は仲がいいんじゃないだろうか。どういった関係かは容易に想像がつく会話の内容だった。
「はぁ、ため息しか出ないけど、確かにエルサの冒険者としての実績は確かなものだわ。一応Eランクでエル君とも釣り合ってるし。」
「え、君Eランクなの?それなら話は早いじゃなーい。パーティーとしてよろしくね!」
「俺の意見はもう関係ないんですね・・・。」
「エル大丈夫なのです?勝手な人たちは疲れるですね。」
「うん、おまえが言うな、ほんとに。」
こうして、急遽エルサさんが同じパーティーを組むことになり、三人で依頼をこなすこととなってしまった。先行きがもっと不安になる。
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場所は変わって南の森、正門からまっすぐ森に入り薬草の採集と目撃情報のあった熊もどきの発見、できれば討伐が今回の依頼内容だった。
内容自体は簡単だが、俺が索敵能力の高い魔力感知を使ういつもの流れが今回は使えない。なぜならいまいる二人はまだ完璧に信頼できない。だから手の内をばらす訳にはいかない。
「ランドベアか、あいつは耐久力がすさまじくて倒すのが厄介な相手なのよね。もっと南の森の奥深くに生態系を築いてるみたいだけどたまにこっちまで降りてくるのよ、そのたびに依頼が出されるんだけど、数が少ないうえにこの森でしょ?なかなか見つからないっていうわけであんまり人気な依頼じゃないのよね。」
「?とりあえず、熊の匂いを追えばいいです?」
「え、ドワーフは嗅覚も優れてるのか?」
「違いますです。わたしが作った五感強化術式を組み込んだこのマスクをつけることで匂いだけなら追
うことができるです。どうでしょう、すごくないです?」
うん、それはすごいんだけどね、なんで形がモグラの鼻みたいなのかな。
エルサさんも若干その造形について触れていいのか迷ってるよ。けっこうずけずけ物を言うエルサさんが迷っちゃってるよ。
「ん?みなさんどうしたです。このマスクは通気性はあんまり良くないですから吸い込むだけならいいですけど息が籠るです。苦しくなるのでさっさと追うですよ。」
マイペースなターニャにさすがのエルサさんもたじたじに。この子はある意味もう一種の強さを備えてるのではないだろうか。
「見つけたです。でも数が多いです。かなり強烈な匂いがしてるです。」
「わかった、お互いの強さを知らないし、まずは俺が前衛に後衛として二人が支援をしてほしい。」
「いいの?数多いんでしょ?相手はランドベアなのよ。」
俺は手短に数匹を同時に相手どった経験を話した。
エルサさんはそれでもまだ不安そうだったが、ターニャはあっけらかんとして、
「エルさんが一人ですね、大丈夫ですよーエルサさん、エルさんはとっても強いです。」
「うーん、一応前のパーティーでの小競り合いで実力はみてるけど、仕方ないわね。いいわ、いきましょう。」
全員の意見がなんとか一致したところで目標まで進む。
ランドベアはなんと五匹もいた。全員が周囲を警戒していてこれ以上は迂闊に近づけない。
「遠距離攻撃がないのは痛いな。考えていなかった。せめて弓でもあれば・・・」
「ありますです。」
驚いて振り返るとターニャは背中に背負っていた、自身とほぼ同じ大きさの袋から折りたたまれた何かを取り出すと、素早く弦を取り付け勢いよく折りたたまれていたものを開いた。関節部分をひねるとかちりと嵌る音がして立派な弓が出来上がった。
「ターニャ、もしかしてそういった携帯用の武器とか結構持ったりしてるのか?傷薬とかは持っているって聞いていたけど、武器は全部自作だったりするのか?」
「ターニャは立派なドワーフです。しかもとても革新的なドワーフなのでこういった発明はおちゃのこさいさいなのですよ?」
「「・・・・」」
俺とエルサさんは驚きのあまり言葉が出ない。お馬鹿な子が実は天才だったら何と言っていいかわからない敗北感が込み上げるのは仕方ないことだと思いたい。
「今、矢を作りますです。お待ちを!」
呆けていたせいでターニャの行動に対して対応が遅れる。
『ドワーフの神よ、力を』
魔力を発生させ、地面に手をついて詠唱とは違う言葉を放つ。
今問題なのは、魔力を発生させたことだ。一斉にランドベアがこちらに顔を向け、先頭の一体が一歩を踏み出したのをきっかけにすべてのランドベアが走り出してきた。
「ふたりとも後ろに下がれ!一気に決める!」
「あわわ、もしかして私のせいです?と、とりあえず矢を!」
「反省は後だ、使わせてもらう。」
素早く矢を番える。弾数は五本。彼我の距離はまだ十分にある。
『身体よ、あらん限りの力を与える、我の想像の元に従え』
魔体を素早く発動し、魔力を視力に振る。魔聴視により俺の視覚が強化され、動きの先読みがより正確になる。
続けざまに連射、先頭とその後ろにいる個体には当たらなかったが、他三体は正確に目を射ることができた。三体は怯み立ち止まり、こちらに走り続ける二体と距離が離れる。
「よし、ターニャなんでもいい。後ろの三体に遠距離攻撃を、エルサさんは隙を突いて攻撃してくれ。」
「「はい!」」
剣を鞘から抜き正面に構え、迎え撃つ。先頭の一体が体を大きく持ち上げのしかかろうとする。
がら空きの胴体を切りつけ俺は脇を抜ける。
躱した先にはもう一体のランドべア。俺が視界に入るなり噛みつこうとするが、片手で頭を押さえて前宙。背中に乗り、振り向く動作で体の捻りを利用し、渾身の斬撃を放つ。
『ザシュッ』
鋭い音をたてて頭を断ち切る。
先頭にいた、おそらくボス個体だろう一回り大きな個体が俺を追って振り向くが、その隙を見逃さずにエルサさんが背中を切りつけ、すぐさま退く。
ボス個体が煩わしそうにエルサさんの方を振りむくが、今度は俺が背中を切りつける。
たまらず、手で後ろを振り払う。その手を全身に力を込めて受け止める。
これに対してボスよりもエルサさんのほうが目を見開くが、構わず全身を回転させて腕を捻る。
『GURYUOOOOO!!!!!』
バキッという音と共に腕があらぬ方向に折れたボスはたまらずうめき声を漏らす。
そうこうしているうちに後ろから三体が迫ってくる。
そして、このタイミングでターニャがとんでもない行動に出てしまった。
「私遠距離攻撃できないです!だから足止めするです。」
「ちょ、おまえ、まて!」
こちらの制止など一切聞かずに、ターニャが走る。
『スキル発動・トリプルフィジカル・フィジカルブースト・ドワーフの血統』
なぞの言葉を発し、直後、赤いオーラを纏いだす。二度色が濃くなり、今ではかなり濃い赤色となった。そして今度ぴょんと飛ぶと空中で詠唱らしきものを始めた。
『ドワーフの神よ、大地の恩恵を我が獲物に』
詠唱が終わり着地すると同時、手にもった長い棒を半ばまで地面に突き刺した。
「ふんっ!!!」
その棒を強引に振りぬいたかと思うと地面に埋まっていた部分は巨大な鋼鉄の斧に変わっていた。周りの土塊がランドベアたちに飛来し、少なくないダメージを与え足を止めた。
そしてその斧を軽々と振るい、一番近くにいたランドベアの胴体を掻っ捌く。
「こい、です!」
あまりの驚きについ呆けそうになるが、痛みから復活したボスがこちらに血走った眼を向けて無事なほうの手を振るってきた。
「ふん!!!」
態勢が崩れたが、とっさに剣で凶悪な爪を防ぎ、後退する。
「私だって!」
『我が命じる、魔力を代価に、炎を顕現し、落雷のごとく振りそそげ』
急激な魔力の高まりにとっさに気を取られたボスは、直後、詠唱が終わると同時、轟音を響かせて降り注いだ炎の落雷にその身を貫かれる。
プスプスとこげた音をてているボスはよろけつつも咆哮を上げ、キレのない動きでエルサの方に一歩を踏み出す。
「いかせな・・・」
「「エル避けて!」」
ふたりの必死な声が同時に響き、無理やり足を止める。直後あと一歩のところにいたボスは、その巨体より3倍は大きい、漆黒の鳥に体を鷲掴みにされた。
『KYURORORORO!!』
猛々しい鳴き声を響かせた巨鳥は、まるで抵抗を感じていないかのようにボスの胴体を引き裂いた。
あまりの衝撃に手を止めてしまった俺を、気にする素振りもなく、巨鳥は悠然と飛び去っていくのだった。
唐突さに驚きが湧きあがり、後からあまりの威容に恐怖心が遅れてやってくる。
だがその感情の推移は一瞬の間に別の感情に置き換わった。
「は?」
なに人の獲物掻っ攫っとんじゃい、われ。




