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高校生である私が請け負うには重すぎる  作者: 吾田文弱
序章 その男 影と裏あり
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7. 依頼

「この場所に移動したとはいえ、長居は出来ないのだ。さあ、早く依頼内容を言え」


 先程から言っている、『依頼』とは? 

 あと仕事に支障が出るとか何とか。


 それが彼の格好と依頼とやらに関係があるのかしら?


「依頼って何なの? 言っておくけれど、うちの高校はアルバイトは禁止されてるからね」


「アルバイト? おいおいアンタ、仕事とアルバイトの違いが分かってないのか?」


 本当の意味での仕事だったらもっとタチが悪い!

 彼の傲慢な態度には少々業腹だけれど、ここはぐっと堪えて彼を更に問い質す。


「質問に答えて。依頼って何?」


「依頼は依頼だ。アンタあの貼り紙見たのだろう?」


「ええ。確か希望や悩みを解消するとか何とか……」


「そうだ。欲しい物が目の前にあるのに手に入れられない。大きな悩みや問題があるのに一人では解決できそうもない。そんな事がある時はこの私が可能な限り力添えをして、解消してあげようという訳なのだ」


 あら、胡散臭い格好に似合わず随分と人の為になるようなことをしているのね。

 私は少しだけ、彼のことを見直した。


 でも、依頼って……、どうしよう。


 私は彼に忠告をするために電話をしたのであって、今は特に欲しい物や悩んでいることもない。


 彼に促されるままにこのような状況になっているのだ。今更、大した用なんてなかったなんて言える雰囲気でもない——どうする?


 でも、いくら仕事と言い張っていても彼はまだ私と同じ高校生。

 それほど大きな希望を叶えてくれるとは思えない。

 不本意だけれど、適当に誤魔化そう。


「ええっと、そうね。私オシャレとか流行に疎くて、アクセサリーだとかファッションだとか、どういうものを選んでいいか分からなくて……」


「まあ、アンタ見た目が地味だからな。見れば分かる」


 一々毒づいてくるけれど、特に気にせず私は続けた。


「だから、あなたのセンスにお任せするから、私に似合いそうなアクセサリーが欲しいです」


「アクセサリーね……、それでいいのか?」


 手帳を取り出しスラスラと書き留めながらそう訊く山田くん。さながら会見中の記者のようだ。


「ええ、よろしくお願いするね。山田くん」


「ま、今回の仕事は楽勝だろう。気長に待っていろ」


「はあ」


 私は気のない返事をした。どうせそこら辺にあるアクセサリーショップで買ってきて、誰も手に取らなかった売れ残りのような物を私に渡すんだ。

 大した期待なんてしていない。


 それから彼は私の携帯番号を訊いてからその場を足早に去っていった。


 気が付けば周りはもう陽が落ちて薄暗くなっていた。いつもならとっくに帰宅して今日習った授業の予習をしているところだけれど、彼のせいでその時間を割いてしまった。


 家に着いても勉強が身に入らなかった。私はどうしても彼のことが気になってしまっていたからだ。


 何を訊いても受け流されてしまい有耶無耶(うやむや)にされてしまった。

 そこまで頑なに自分の事を話したがらない理由は?


 いったい彼は何が目的?


 私はそんな答えが見つからない問題を模索しながら、ずっと目を開けて、ぼんやりと天井を見つめていた。


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